【ロッド設計のプロだからわかる】2万円代のロッドいわゆる”中級価格帯”でお得なのはどのロッド!?
こんにちは!トモ清水です。
釣り業界として横浜で開催された釣りフェスティバル2024を皮切りに2024年が開幕しました。各メーカー、これまでいろいろテストし、努力して作ってきたものを、実際にお客様に触れていただける機会。このあとフィッシングショーOSAKA2024、そして各地方のフィッシングショーが各地で開催されます。
今年のピュア・フィッシング・ジャパンのブースは、本気を感じさせられる、過去一ではないかと感じる完成度。新製品も盛りだくさんで、さらなる展開が期待せずにはいられません。
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そんな中でも、初心者から上級者のアングラーまで納得できる、非常にコスパが高いロッドと、その理由を今回はご紹介したいと思います。
2万円代ロッド、いわゆる中級価格帯でお得なのはどのロッド!?
まずは、こちらアブガルシアのソルトロッドのヒエラルキーとなります。
トップハイエンドのエラディケーターに始まり、コスパが高いクロスフィールドなど、価格帯に合わせて各シリーズが展開されています。そして、上から2番目のソルティーステージが10年という長い歳月で定番アイテムとして販売し続けてきたシリーズが、満を持して2021年にフルモデルチェンジされました。
さらに、今年はクロスフィールドが同じく10年という歳月を経てフルモデルチェンジされます。
この中で個人的に注目なのが、ハイエンド機のエラディケーターシリーズのみに搭載されてきた「TAF製法」のブランクスが搭載されているソルティーステージ・プロトタイプの存在。
このTAF製法は100%国産のカーボンプリプレグを採用しており、従来製法の4倍のコストをかけて、強度、軽量化を実現しています。
この性能で、2万円台というのはコストを熟知している開発視点で見ても破格の値段。やはりグローバルに展開しているピュア・フィッシンググループだからこそ出来る価格です。
コスパが高い理由をさらにみていきたいと思います。
ロッド(釣竿)の心臓部はブランクス
まず釣竿って?という点から、ちょっと見ていきましょう。
釣竿は、ブランクスと呼ばれる素管やガイド部品、リールシート部品、EVAやコルク素材のグリップ部品などで構成されています。
ではその中でも、ロッド性能の良し悪しを左右する設計要素とは何か?
わたくしトモ清水的ロッド設計者から見た、ランキングをつけて見ていきましょう。
1位 ブランクス
2位 ガイドのマテリアル
3位 リールシートの種類
4位 ガイドの数、位置
5位 塗装方法
ブランクスが変わればロッドが大きく変わる、または劇変する、ロッドを構成する中では重要な要素がブランクス。
「ロッドの性能は8割、ブランクスで決まる」
といっても過言ではないでしょう。
他の要素がちっぽけに感じるくらい、そのくらいロッドにとってブランクスが命。
トモ清水的ロッド設計は、ブランクスを最大限に活かすための、ガイドセッティングであったり、リールシートの選択なり、他の要素はあくまで、ブランクスの性能を引き出すためのであり、ブランクス中心とした設計、開発を行っています。
分かり易く言うと、違う例の車に例えると、車の心臓部はエンジン、このエンジンの性能でその車の走る性能は決まります。
ボディー形状、タイヤの大きさ、種類、デザインや色などの他の要素は、やはり釣竿と同じくエンジン性能を活かすための要素として発達してきました。
「芸能人は歯が命」ならぬ「釣竿はブランクスが命」なのであります(笑)。
ちょっと大袈裟かもしれませんが、分かり易くたとえると新しくなったソルティーステージ・プロトタイプは、「300馬力のスポーツカー用エンジンを乗せた、お買い求め易い大衆向けの乗用車」と言えるかもしれませんね。
アブガルシア公式「ソルティーステージ・プロトタイプ」の詳細ページはコチラ
ロッド設計における素材の組み合わせパターンは何万通り
では、ブランクスという素管という塊を分解すると、以下のような素材や工程、設計要素などに分類されていきます。
弾性率、樹脂含有率、目付、PAN系、Pitch系、FAW、カーボン、グラス素材、Conposite、Tack、Ply、積層パターン、スパイン、ラッピングピッチ、Tow-prepreg、modulus、多プライ、バイアスカット、樹脂タイプ、直交材、縦材、横材、引張強度、圧縮強度、テーパー、多段テーパー、MD(マンドレル)、センターレス加工、脱芯、印籠継、並継、逆並継、ソリッドティップ、チューブラーティップ、焼成炉温度最適化理論、etc
適当に羅列しましたが、まだまだブランクスを作る要素は沢山あります。
設計者はこの何万通りという組み合わせの中からベストな選択をしなければならないのですが、強度においては、素材、横材、圧縮強度の3つの要素に私は注目し、TAF製法という独自の技術で、他の釣竿にはない軽さと強度を実現しています。
従来の製法では圧縮強度を高めるために横材にグラス素材を使用しています。TAF製法では、そのグラス素材ではなく、横材にもカーボン素材を使い、軽さ、強度共にグラスよりも優れるカーボン100%にこだわっています。ただティップの細い径の横材にカーボン素材を使うには非常に高度な生産技術が求められます。
さらにただカーボンを横材に使えば良いという訳ではなく、カーボンの弾性率、目付、プライ数など、最適な設計が求められます。
ロッドビルダーとロッド設計開発者との違い
世の中にはロッドビルダーと呼ばれる、名のごとくロッドを自分で作っている方は多くいます。しかしその実態は、ロッドのブランクス(素管)を外部から手に入れて、ガイド部品やグリップ部品も調達し、それらをアッセンブリ(組み立て)して完成させるケースがほとんど。グリップ素材のEVAやコルクなど、自分の好きな形状に削ってカスタムしたり、ガイドのサイズや数を自分なりに選び、カスタムし、好きな色で塗装することは、簡単で誰もがチャレンジ出来ます。
しかしブランクスに関しては、自分でパターン設計し、巻いて焼成し作ることはほぼ不可能で、完成した出来合いのものを入手するほかありません。
よってロッドビルダーとロッド設計者もしくは開発者の決定的な違いは、ロッドの心臓部であるブランクスを自ら作れるかどうか否か、といった点になります。
またロッド開発のプロかアマチュアか、という点で見た場合も、マンドレル設計、パターン設計、テーパー設計、部品設計などの設計における実務経験があるかどうかで判断出来ます。
ロッド(釣竿の性能、うんちく)について、あたかも知ったかのように上手く饒舌に語っている方も居ますが、これはトークや文章が上手いだけであって、開発のプロから見ればアマチュアの領域を超えません。
ロッド設計、開発者はロッドビルダーとも言えますが、何万通りというパターン設計まで出来るか、出来ないかが、一つの境界線となるわけです。実際に設計まで出来るロッド開発者は国内では非常に限られている特殊な仕事とも言えます。
TAF製法とは?ロッドの心臓部ブランクスの秘密
上記の通り、ブランクスはロッドの心臓部。
そのブランクスは大きく分けてメインパターンと調子補助という、主にこの2つから構成され、設計していきます。とくに重要なのが、中心となるメインパターンと呼ばれる材料構成。
従来のブランクスでは、ティップの細い部分に巻かれるメインパターンには、カーボン繊維とグラス繊維を合わせたものがほとんど。例えばカーボン含有率95%、グラス含有率5%、といった具合に。もちろん、それだけで基本的な性能と強度は充分満たしているのですが、さらに軽く、強くするためには、ブランクスの圧縮強度いわゆる「つぶれ方向の強度UP」のため、従来のグラス繊維構成から、強いカーボン繊維構成に変換する事が不可欠でした。
しかしティップの細い部分には、カーボン繊維の強い反発力が仇となり、マンドレルと呼ばれる鉄芯にシートが巻き付けづらく、量産性に向いていないという課題も。不良率が上がるというリスクも。その難題を独自の発想と高い技術でクリアしていき、カーボン含有率も100%まで引き上げ、大幅に高い強度の獲得と同時に、余分な贅肉も落とすことにも成功、高強度かつ超軽量という相反する要素の両立を実現させたのが、最新のカーボン技術TAF製法。
100%フルカーボンのCPCブランクス、極薄カーボン多プライ構造「DPH」と呼ばれる新技術を取り入れています。さらにOCPDと呼ばれる最適化されたプリプレグのカッティングパターン、NSテーパーと呼ばれるマンドレルテーパーの最適化などを図り、ブランクス技術を一新しています。
詳しくはこちらをチェックして頂ければと思います。
アブガルシア公式「TAF製法」の詳細ページはコチラ
最後に…
“釣り人だからこそ出来ること”というテーマの内容の部分で、前回の連載記事で訂正があります。
全国、釣り行脚していると、残念ながら一部の心無い人達によって、貴重な釣り場がまた一つ減っていっており、子供達、未来のために残さなければならないことが失われつつあります。
と書きましたが、申し訳ございません、私も勉強不足でした。一部の心無い人達だけでなく、釣り人全員に原因があると、再確認しなければなりませんでした。まだまだ意識が足りておりませんでした。
今からご紹介する、動画を見て、それをハッっと気づかされました。
私の尊敬する考察系アジングアングラーの大村さん、釣り人の未来を考える上でとても重要な動画になっています。是非とも動画を見てください。宜しくお願い致します。
出典:YouTubeチャンネル「アジング専門チャンネル釣り日和大村卓也」
このかけがえのない釣りをいつまでも、私達、未来の子供達が楽しめるように、いま一度、一人ひとりが考えるきっかけになれば幸いです。
トモ清水でした!
See you next time!