スト系が効かなくなった理由
それでは、前回連載記事の核心部分について話そう。
TOP50遠賀川戦で「スト系(ミドスト、ホバスト、ボトスト)で、」の釣りが完全に一時停止状態になった「ある理由」、それは最高水温16度強、安定14度、そこに開幕前日に大潮を迎えたという事実、すなわち一部エリアに一気に「バスが差し切った」ことが、その理由だ。
差し切ったというのは、限りなくネスト、もしくはそれに近い状態に入ってしまったということである。
繁殖本能が捕食本能を凌駕
こうなると、バスはおよそすぐに通り過ぎる無害な弱者はあえて無視し、危害や邪魔な動きをするモノを徹底的に排除する性格に一気に切り替わる。
1年で最も繁殖本能が捕食本能をはるかに凌駕する4日間が始まったのだ。
スト系の釣りは、まさに「通り過ぎる無警戒無害な弱者」であり、このタイミングにおいては最も危害を加えられにくい=最も反応しない対象となり、自分はその事実に「思い込み」から気が付けなかったのだ。
その思い込みとは、昨年同時期はネストの気配はまだないと思っていたこと、4月1日はネストになるにはまだ早いと思い込んでいたことだ。
目視でネストを確認できるのはゴールデンウイーク前後であり、まして流れのある川においてはまだまだ早いという思い込み、オフリミット前までスト系の釣りで釣れていた自信が、全ての判断を狂わせてしまった。
甘い思い出と常識からの思い込み
考えてみれば、水温が安定14度、最高16度なら、ラージマウスバスのネストがあっても何ら不思議ではない。
いや、むしろ大型個体はピークになる水温だ。
過去、野村ダム(愛媛県)でのTOP50開幕戦では、水温が安定12度でネストが多数確認され、旧吉野川(徳島県)では3月末の開幕戦でも最下流テトラ帯での見えないネスト戦で上位続出になった。
なのに、ナゼそれに気付けなかったのか?
それが昨年の甘い思い出、そして何より「最も流れのある最上流部での産卵は最も遅い」という常識の思い込みからだ。
だが、遠賀川最上流部は巨大な堰があり、最も水質がよく、フラットなハードボトムに点在する大岩や土管などが多く、さらには「どの方向からの風に最もプロテクトされたエリア」なのだ。
海に近く、北風でも南風でも大荒れになり、すぐに濁る中下流より、閉鎖的で圧倒的に風に強く、さらに堰で流れがコントロールされた堰下フラットが最初の刺し場になることなど、普通に考えたらすぐ分かることなのだが……。
「状態」を理解した選手のみが「釣り方」も分かる
この事実は、優勝した藤田京弥選手をはじめ、上位選手が表彰台で語ったインタビューを聞けば、直接的な表現こそしていないが分かる人にはすぐにピンとくる内容である。
状態を理解しているプロだけが「釣り方」も明確に分かる。
フラットで土管や単独岩、旧堰跡などの人口沈みモノが多く、この事実を分かっていてライブスコープでのサイバーサイトが完璧にできれば、濁りで見つけられているとは気が付いていないバスに対して、その威力は計り知れない。
差し切ったと考えれば、2日目以降、上流域でビッグウェイトを出したプロの多くが、同じエリアに固執し、軒並みゼロに近いスコアで順位を落としていった理由も納得がいくだろう。
二番手の釣り方
この最上流で起きていた「祭り状態」をまったく知らず、初日に中流域でノーフィッシュに終わった自分は、今さら上流船団に加わることもできず、同じ中流部で釣り方を180度変えてみることで反応をみることにした。
そして、唯一残された二手目だった「ジレンマ60スティープ」での一尾のプリメスの「釣れ方」が、今回のマクりの鍵になった。
「ジレンマ60スティープ」は、潜行深度約2mで、比較的巻き抵抗が大きいのと、飛距離をだし、深度調整をロッドの上下で微調整するために長めで硬めのロッドが必要だった。
だが、ちょうどよいスピニングロッドがなく、ほぼ7フィートだがPEパワーフィネス用の「グランドスピンコブラ」を練習時から使っていた。
2日目、幸いもやっと喰ってきたブリブリのメスは中流の2mほどのハードボトムフラットを通した折、中層で何か当たっていたような違和感を感じ、すぐに同じコースを再度トレースした瞬間、明確なバイトはなくヌッ~と重くなるようなバイトで喰ってきた。
この時、特徴的だったのは、バイトがボトムを一瞬だけカスった直後に起こったこと、そして危機一髪のリアフック一本掛かりだったことだ。
そのメスのブリブリさに、「なんかネスト直前っぽいな……」、「もしかしてオスはボトムべったりで、メスはその付近に浮いているのか?」と、直感的に気付けたことが今回の全てだったと思う。
「これは喰うというより、排除行動かも……」と判断し、とっさに一番柔らかいグラスロッドに、よりクランクベイトに近い動きをする同じ潜行水深2mの「ワスプ58カットファスト」をセットしたロッドにチェンジ。
威嚇で絡みつくなら、フックが大きくクランク的なアピール力がある「ワスプ58カットファスト」の方がよいかも?と試合ではじめて直感で投入することにした。
一番留意したことは、同じコースを何度も通すことと、底に当てすぎないこと。
すなわち、潜行深度のベストマッチングに神経を使った。
理由は、メスは不自然なモノに強い警戒心をもつが、シレーッとやってきて、一瞬だけ触っていくような「癇(かん)に障る」動きに発作的に反応する習性がある。
ボトムをゴリゴリ舐めるとオス、一瞬触る程度で浮かせればメス、これは過去の遠賀川戦での「CCプレデター」、「スレッジ6&7」、土師ダム(山口県)戦での「IK180」のライザークランキング、早明浦湖(高知県)戦での「キッカーイーター」など、スポーニング期特有の巻きモノ経験から体得していた感覚だ。
ハイプレッシャー下での巻きシャッドのキモは?