今江克隆のルアーニュースクラブR「ソリッドティップとチューブラー、どちらが正解??フィネス系スピニングロッド選びの本質」の巻 第1083回
さて、2022年一発目のルアーニュークラブRは、とても残念な記事で始まってしまったが、それは逆に新たな歴史の始まりでもあると思う。
今までプロ生活38年、スポンサーが変わることがほぼなかっただけに、ある意味、スポンサーシップという面では馴れ合いになって初々しい刺激がなくなっていたことは否めない。
38年間もトーナメントアングラーを続けていると、一番大変なのが参戦する意義、すなわちトーナメントへのモチベーションの維持が一番難しくなる。
そういった意味で、今江的にはもう一度初心に戻って新進サポートメーカーの期待に応えるという大きな目標ができたことは、大きなモチベーションになっている。
今年は初めてスポンサーを獲得した頃の気持ちに戻って、2022年を全力で走り抜けたいと思う。
スピニングロッド選びの迷い
さて、実は自分の中でこの5年ほど深い霧の中でさまよっているような状態だったある迷いがあった。
だが、ようやくその深い霧の中に入るような迷いが昨年は吹っ切れた1年だった。
その迷いとは「ソリッドティップとチューブラー」どちらが本当に正解なのかというスピニングロッドの迷いである。
振り返ってみればこの5年、自分のスピニング技術は自分でも気付かぬうちに大きくブレていたように思う。
その最大の理由が「ソリッドティップトーナメント最強説」にあったように思う。
最初にいっておくが、今週の自分の見解は、ソリッドティップの有効性を否定するものでは決してない。
そうではなく、ロッドとは自分の釣り、自分のスタイルにマッチしたものを迷いなく使うことこそが結果的に「釣果、成績に性能差以上に大きく影響」するという事実を、やっと身をもって確信するのに至ったということだ。
今回、ナゼこんな記事を書くのに至ったかというと、もしかして今のソリッドティップスピ二ングに心のどこかで違和感のようなものを感じながらも、「皆がよいっていうから、フィネススピニングはソリッドティップでなければならない」、「フィネスにはソリッドティップでなければならない」と思っているアングラーが、少なからずいるかもしれないと思ったからである。
ソリッドティップの流行
今のフィネス全盛のトーナメント界では、10年ほど前からソリッドティップ絶対有利論が実力派若手アングラーを中心に広まり、フィネスを得意としていない自分にとって、その流行は無視できないものになっていった。
確かにソリッドティップロッドは、超がつくほどフィネスなルアーを扱うスピニングロッドにおいて、従来のチューブラーロッドに比べその繊細さ、ティップ部分の曲がりの柔軟性から間違いなく「喰わせる」釣りには最高のスピニングロッド技術だ。
論理的な面から考えても理に適ったソリッドティップを自分が拒絶する理由はなく、実績を残すフィネスアングラーの言葉からもソリッドティップのスピニング開発へと傾倒していったことは間違いだったとは思わない。
論理的に解説すればするほど、ソリッドティップは、確かにフィネススピニングには最高の性能だと納得するしかない特性を持っているのだ。
だが、その抗えない「刷り込み」が時としてアングラーの釣りの本質に大きな足かせを与えてしまっている時がある。
この時代、「チューブラースピニングの方がソリッドティップスピニングより使いやすいし釣れる」と声を大にして公に主張できるアングラーは、なかなかいないだろう。
かくいう自分ですら、トーナメントで苦しめば苦しむほど、より最先端の、技術的には極め付きのソリッドティップスピニングを投入してきたのだから……。
溺れるものはワラをも掴む、これがトーナメンター心理というものなのだろう。
トーナメントがフィネス全盛になればなるほど、もはや人生賭けた試合本番にチューブラーロッドだけで挑むなど、爆死覚悟でもしなければできることではない。
衝撃の事実!
だが、ここで衝撃的事実を明かそう。
実は2021年、自分がトーナメント全戦で使ったスピニングロッドはほぼ90%以上、「チューブラー」のスピニングロッドだけだったという事実だ
自分でも衝撃なのだが、TOP50桧原湖戦ですらマクリ返した2日目、決勝は全て大昔に作っていた2ピースで7フィート7インチのオールチューブラーのスピニングである。
この桧原湖戦初日を除けば、全てがチューブラーのプロトスピニングだったのである。
その結果、2021年はそれまであれほどノーフィッシュに苦しめられた2019年までとは異なり、全日程においてTOP50戦では一度もノーフィッシュがないのである。