今江克隆のルアーニュースクラブR「最終決戦!TOP50弥栄湖〜ストロングスタイルの挑戦〜」の巻 第1074回
コロナ禍によって昨年全戦中止となり、60名に増名されたTOP50シリーズ。今期は、かつてない過密スケジュールの中、全5戦を消化。
緊急事態宣言延期で11月開催となっていたTOP50最終戦・弥栄湖(山口県)をもって今シーズンが無事に閉幕した。
幸か不幸か、昨年1年の開催中止によって、全てをリセットし心技体共に万全の準備で挑めた2021年シリーズ、最終戦で5位入賞し、実に8シーズンぶりにTOP3に復帰することができた。
年間ランキングは、AOYにこそ届かなかったが、2021年は最低でもTOP5復帰を果たすべく、絶対に予選落ちしないことを最低目標に、ここまで遠賀川8位、霞ヶ浦6位、桧原湖11位、七色ダム23位と、霞ヶ浦戦を除いて確実に上位ポイントを稼ぐガマンの釣りを自らに敢えて強いてきた戦いだった。
そして、AOYへの望みをわずかに残し年間4位で迎えた最終戦、ここでも宣言した通り、この最終戦だけはどのような結果になろうとも、全力で自分本来の往年のストロングスタイルを最後まで押し通す覚悟で挑んだ戦いだった。
それはスタイルの変化、世代交代が著しい今のTOP50で、今後自分が自分らしくトーナメントを続けることができるか否かを問うための最後の賭けでもあった。
最終決戦の舞台、秋の弥栄湖の特徴は?
今回7日間の練習日程を組んだが、ミッドフォール(秋真っ只中)の弥栄湖は、初日から想像以上に厳しい状況にあることがすぐに理解できた。
ミッドフォールの弥栄湖の特徴として、ディープに生息する200g前後の小型キーパーと、シャローに残る2kg前後のビッグフィッシュの二極化が極めて明確で、その中間の500〜900gのナイスキーパーと呼ばれる個体が極めて少ない湖である。
その原因は、自分の直感では「鵜(ウ)」の多さに起因している気がしており、生息圏が浅く鵜に狙われやすいナイスキーパーが激減。
鵜が喰い切れない大型バスがシャローに数少ないが居残り、小型のバスは鵜の潜水限界水深の10m以上まで難を逃れるために生息圏を広げたのではないかと思う。
特に弥栄湖の小型バスは、今試合でも橋桁水深26mのボトムで複数匹釣れている事実も確認されており、リミットメイクを果たした多くの選手が水深15m以上を狙っていたことでも、その尋常ではない「深海生息」が証明されている。
今試合で多くのTOPプロが水深15m以上で釣りながら、バスの目玉や胃袋が飛び出さず、エア抜きで生存させられる事実に驚いており、弥栄湖の小型バスはスモールマウス同様の「縦回遊」を行う特殊な個体ではないか……とすらウワサされていた。
練習前半ではローカル情報もあって、水深15m前後を中心に釣り込んでいったが、何とか釣れるものの、ディープではキーパーの平均が200g前後。
試合時間全てをつぎ込んでようやく5尾1,500g釣れれば上位ウェイト、1日5尾1,200gでも予選突破ではないか……とウワサされるほどの厳しさだった。
シャローの状況は??
一方、シャローはその予想以上の厳しさに多くのプロが早々にシャロー攻めを断念するほどで、7日間の練習で1尾もキロアップが釣れないプロも多くいたようである。
小瀬川BW(バックウォーター)付近には超天才の2kg級が数匹は確認できたが、誰もが見えるこのバス達を試合中に仕留めることは「運」以外まず無理ではないかと思えた。
しかし、もし2kgアップを1尾でも仕留められれば1尾で予選通過も夢ではなく、キロアップ1本でもキーパー5尾相当、2本獲れれば確実上位という、まさに一本のキッカーが強烈無双に効いてくることは誰の目にも明確だった。
しかし、そのキッカーを獲るためには試合時間全てをつぎ込んでも1尾が果てしなく遠く、しかもそれを3日間連続達成することは奇跡にすら思えた。
もし、ゼロで終われば200gのキーパー1尾にすら負けて予選落ち終了……それはまさに超ハイリスクなゼロワン勝負であることもまた明確な事実だった。
ローウェイトのデスゲーム化
事実、試合後の結果を見ると初日カットラインの30位が1,200g、2日目にいたっては驚愕の514gで30位、2日間合計の予選通過ウェイトは実に1,928g、予選通過に必要なウェイトは1日あたり僅か964gだったのである。
これは2021年シリーズ5戦中、ダントツの最低予選通過ウェイトである。
この状況は、自分が上位ウェイトを読み間違えてキーパー獲りに専念してしまった七色ダム戦と似て見えるが、今回に限っては「まずキーパー5本1,300g、全てはそれから……」という最低ラインのクリアすら難易度が七色ダムよりはるかに高い事実は、誰の目にも明確だったと思う。
キーパー獲りに専念すべきか……ノーフィッシュを覚悟して勝負に出るべきか……