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【新ジャンル】“怪魚ロッド”「DearMonster」(ディアモンスター)を怪魚ハンター小塚拓矢が徹底解剖

寄稿:小塚拓矢
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怪魚ハンター・小塚拓矢さんが代表を務める、マルチピースロッド専門メーカー「モンスターキス」。

ブランド設立から今年で10年目、いつの頃からか“怪魚ロッド”と呼ばれ、新ジャンルを拓いた“元祖・怪魚ロッド”「DearMonster」(ディアモンスター)について、小塚さん本人から改めて紹介していただきます!

小塚 拓矢(Takuya Kozuka) プロフィール

世界56か国を釣り歩いてきた“怪魚ハンター”、釣り冒険家。マルチピースロッド専門メーカー、株式会社モンスターキス代表。TV『情熱大陸』や『アナザースカイ』『クレイジージャーニー』に出演し、釣り業界の枠を超えて活躍中。

 

“怪魚ロッド”「DearMonster」(ディアモンスター)とは?
INDEX

 

そもそも“怪魚ロッド”とは?

本文TEXT=小塚拓矢

「DearMonster」(ディアモンスター)のブランドヒストリーは、わたくし小塚の方から以前コチラの記事で紹介させてもらいました。

そして今回は展開するロッドそのもの、“怪魚ロッド”とは何か?! について、掘り下げていこうと思います。

そもそも、“怪魚”とは何か? 決まった定義はありませんが、私なりに数値化するならば「1m・10kg以上」に成長する巨大魚(主に淡水魚)だと考えています。
日本で例を挙げれば、イトウやアカメ、ビワコオオナマズが代表的で、大型のライギョやスズキなどもそれにあたるでしょう。

渓流ロッドクラスのパワー感・レングス(5フィート)のテストモデル「MX-5S」でキャッチしたビワコオオナマズ 120cm。メガバス・グリフォンで小型魚(イワトコナマズ)を狙っている際にヒットした

憧れの巨大魚たちに挑むための“怪魚ロッド”として必要なのは「①携行性」「②耐久性」「③拡張性」、という3つの性能を高次元で満たすロッド

そんな憧れの巨大魚たちに挑むための“怪魚ロッド”とは……56か国を釣り歩いてきた経験から言えるのは「①携行性」「②耐久性」「③拡張性」、以上3つの性能を高次元で満たすロッドです。
コンパクトにまとまる収納性、持ち運びやすさといった携行性は、遠征には最重要とも言える性能です。

そして、使う前から壊れていては話になりません。
まず移動時の壊れにくさが求められ、その上で旅先では想定外の魚種や大物のヒットも増えますから、実釣時の耐久性ももちろん重要です。加えて、慣れないフィールドでは、想定外の事態や状況変化に対応しなければならない。

ただし、持っていける荷物の量は限られる。「もう少しグリップエンドが長かったら」「もう少しブランクが短ければ」、そんなストレスがその場で解決できる拡張性があれば、釣りの幅が広がるのは間違いありません。

「最小限の荷物で、最大限のパフォーマンスを発揮してくれるロッドが欲しい!」
そんなワガママを叶えるべく作ったロッドが、「DearMonster」(ディアモンスター)です。

“怪魚ロッド”に求められる性能「携行性」について

全モデル50cm以下仕舞寸法の「携行性」

“怪魚ロッド”に求められる3つの性能、「①携行性」「②耐久性」「③拡張性」について、1つずつお話ししていきます。
1つ目の「携行性」について。「DearMonster」(ディアモンスター)は、現行の13モデルすべて、50cm以下の仕舞寸法に揃えています。これは、国内外の多くの航空会社が採用している「機内持ち込み荷物は長辺60cmまで」という基準を満たすもの。

ケースに入れた状態でも60cm以下に収納するため、ロッド自体はゆとりを持って50cm以下の仕舞寸に統一しました。
バックパック(リュック)なら、30リットル(一般に日帰り登山サイズ)以上から収まるので、両手が空いた状態で旅が可能に。カメラを手に屋台街を食べ歩いたり、リュックを背負ったまま釣りをしたり、一度その自由を体験すれば、もう長尺ロッドケース(いわゆるバズーカー)には戻れません。

「MX-8+」は仕舞寸は50cm。グリップを2分割するディアモンスターを代表する構造で、ロンググリップが必要な長尺ロッドでも、コンパクトに持ち運びが可能

MX-8+の詳細はこちら

現在発売中の「MX-8+」はシリーズ最長の8フィート半レングスのベイトロッド。国内の離島遠征ではGTも実績アリ(ユーザー様からの投稿写真)

 

“怪魚ロッド”に求められる性能「耐久性」について

強過ぎて、過ぎる事はない「耐久性」

“怪魚ロッド”に求められる3性能、「①携行性」「②耐久性」「③拡張性」。2つ目の「耐久性」について。

「DearMonster」(ディアモンスター)は、すべてのモデルで、すべてのブランクの継ぎ部で「並継ぎ」構造を採用しています。
ロッドの継ぎ方には「並継ぎ」、「逆並継ぎ」、「印籠継ぎ」と3つあるりますが、1ピース(継ぎ目無し)同等の耐久性を実現しようとすれば「並継ぎ」構造になります。“怪魚”とは1m  10kg以上に成長する巨大魚、という考えを念頭に、初期モデルは全て60度破壊強度検査で10kgリフトを達成。
最強モデルは25kgリフトを目指し開発したものの、実測値で20kgリフトを突破した段階で、それ以上は計測機器が壊れるため測定不能でした。

近年は多様なニーズを受け、ブランクス自体はライトなモデルもラインナップされましたが、一貫した「耐久性」へのこだわりは、ガイドセッティングがわかりやすいです。

「MV-75」も10kgリフト検査をクリア。でありながら仕舞寸は50cmで、自重195gと軽量。全並継ぎ構造によるビッグテーパー(ハイテーパー)により、2m級のピラルクーにも対応する強靭なバットと、小型フロッグを繊細に操作できるティップを併せ持つ

ガイドは、必ずブランク端に配置され、継いだ際に接合部が必ずガイドの陰に隠れるよう設計。これは視覚的安心感をもたらすとともに、どうしても弱くなる継ぎ部において、目に見えないブランク内部の補強に加え、目に見える外部からもガイドスレッドで巻いて2重に補強しています。
加えて、ガイドはすべてのモデルで、すべてのガイドに、上下2足で固定の「ダブルフット」ガイドを採用。
バスロッドやシーバスロッドで一般的な、1本足の「シングルフット」ガイドでは、収納・移動時にガイドが曲がってしまうことが多く、経験からの必然的な選択になっています。

そんな「ダブルフット」ガイドを、これまた耐久性重視の「ダブルラッピング」製法で仕上げています(1モデルのみ例外)。
「ダブルラッピング」製法とはオフショア系の大物竿に採用されることが多いガイドの装着方法で、まずはブランクにスレッドを下巻きし、その上からガイドを巻きつけます。手間もコストもかかりますが、ブランク(カーボン)とガイド(金属)が直接接触することを防ぐため、長時間のパワーファイトや、長期的な視点でみたブランクの耐久性をアシストしてくれます。

「MV-75」はNHKの「怪魚ハンターが行く!」シリーズに出演する、“元祖”怪魚ハンター・武石憲貴とのコラボモデル

武石憲貴(→blog)の個人ブランド「VALI TUDO」の頭文字に由来した「V」シリーズは、グリップ分割構造は非採用でキャスタビリティを優先

 

このように「耐久性」に関しては、考えうる限りの配慮をしています。一方でそれは、「操作性」と相反する部分が出てきます。耐久性にこだわるあまり、硬すぎたり、重すぎたり、使いにくい竿になっては意味がありません。
一例を挙げれば、ブランク表面をコーティングした方が理論上ではわずかに耐久性が上がりますが、重くなり、操作性は損なわれます。このような場合、わずかな耐久性の向上よりも操作性を優先することがあります。

そのあたりのバランス感覚は、開発着手以降に、私個人だけでも48か国でテスト、テスター(10回以上の海外遠征経験が基準)含めれば50か国以上で投げ込まれた、実績・経験値を信頼いただければと思います。

数値化できる訪問国数以外でも、単独行による冒険的なスタイルから、テレビ撮影等のグループ釣行まで、様々なスタイルで実釣し、手痛い失敗を含め全ての経験が、製品としてフィードバックされています。

「硬い」ではなく「強い」。「MV-75」の推奨ルアー重量は15~90gと幅広い。メガバスと共同開発したBATRA-X(バトラクス)等、15g前後の小型フロッグに始まり、4オンスクラスのマグナムベイトまで投げられる

“怪魚ロッド”に求められる性能「拡張性」について

統一径がもたらした「拡張性」

“怪魚ロッド”に求められる3性能、「①携行性」「②耐久性」「③拡張性」。重要3性能の最後の1つ「拡張性」に関して。

この拡張性の“発明”こそ「DearMonster」(ディアモンスター)の真骨頂で、“怪魚ロッド”としてのアイデンティティであり、おそらく世界イチ合理的なオリジナル構造だと自負しています。

「DearMonster」(ディアモンスター)は全モデルで、グリップ挿入部のブランク径が統一されています(振り出しモデルを除く)。
つまり、全てのモデルのブランクが、全てのモデルのグリップに互換挿入可能です。どのモデルでもいい、2モデル選べば、ブランクとグリップの組み合わせで4通り(2×2)の使い方ができます。
3モデル選ぶなら9通り(3×3)です。もちろん、バランスが変わってきたり、スピニングロッドとベイトロッドでリールシートが異なりますから、実用的な組み合わせは約半数(製品よりクリップ側が重厚長大化する組み合わせ)になります。

このような「拡張性」は、荷物量が限られる遠征において、極めて重要な価値を持っています。

現行ライナップ全11モデル全部でもこのボリューム感。総重量2.1kgの荷物で理論上968種類のロッドを組み上げることが可能。リールシートセクションの上下入れ替えまで含めれば、1000 本以上のロッドを遠征先に持ち込めることになる

 

2021年現在、現行モデルは11機種ラインナップしていますが、うち8機種(武石憲貴コラボ3機種以外)で、グリップがリールシート部とグリップエンド部に2分割可能です。それにより更に組み合わせが多様化します。

グリップ分割可能な8モデルから2モデル選ぶなら、8通り(2×2×2)。3モデル選ぶなら27通り(3×3×3)の組み合わせが可能となり、8モデルすべてであれば512通り(8×8×8)の組み合わせが可能です。

グリップが分割しない3機種を加えた現行ラインナップ全11機種では、968通り(11×11×8)のロッドを作ることが可能になります。
結果、ユーザーの体格や、フィールドの状況、使用ルアーに応じ、細かな最適化が可能です。

そしてこの「拡張性」は、今後新モデルが追加される度に、指数関数的に、無限大に広がっていくのです。

ブランド設立10周年、この夏、10年来のユーザー様から嬉しい報告。9年通って手にした初アカメ135cm。シリーズ最新作「MV-75」のブランクに、2012年発売・生産終了の最初期モデル「MX-71」のリールシート部を装着。そこに「MX-∞」のグリップエンド部を組み合わせた、“2個イチ”ならぬ“3個イチ”のセッテイングにて

 

怪魚“専用”ロッドでなく、究極のバーサタイルロッドとして

10年前、「世界の怪魚のために」と作りはじめた「DearMonster」(ディアモンスター)ですが、どれだけ遠くに行こうと、対象魚が大きかろうと、遠征先で使い手がいきなりパワーアップするわけではありません。

56か国を釣り歩いての現時点での実感として、身近な釣りで使えない竿が
いきなり遠征先で使いこなせるわけがないと、日本での日常使いを念頭に作っています。

いつの頃からか“怪魚ロッド”と呼ばれるようになり、そのイメージが先行して「もっと硬い竿だと思っていた」「想像以上に軽い」等々……スペックを理解の上で手にしてくださった方ですら、そのような感想を多くいただきます。

「想像以上に硬い(重い)」は、まだ言われたことがありません。「硬い」ではなく「強い」ロッド。そして「〇〇専用ロッド」ではなく、「怪魚ロッ
ド」としか言えない竿……魚種や釣法の枠を飛び越えた、究極的なバーサタイルロッドなのです。

まだまだ専用タックルが確立されていない釣り、黎明期のゲームを一手に引き受ける懐の深いロッドとして、近年は海外を目指す方だけでなく、情報感度の高いアングラーが国内用途に選んでくださる機会も増えています。

11月再生産予定の「MX-7S」は、ディアモンスターシリーズのバーサタイル性能を象徴するモデル。他モデルと互換無しでも、1本で2本分の役目をこなす

 

トランスフォーム構造を持つ「DearMonster」

標準ダウンロック仕様(上)と、逆付けアップロック仕様(下)。リールシートセクションを上下入れ替えることで、リールフット位置を基準にティップとバットまで、それぞれ6cmレングスが変わリ、使用感はもはや別の竿。オプションによるパーツの足し引き無し、1本の中で完結し、デザイン的にも無理なく2モードで使えるこのようなトランスフォーム構造は、「DearMonster」の以外の竿に例を見ない。

 

サワラキャスティングなど、専用竿が無い(少ない)ニッチな釣りにズバりとハマる

2人とも「MX-7S」の標準ダウンロック仕様にて。5~70g以上まで投げられる懐の深いブランク性能は、近年注目が集まり始めたサワラキャスティングなど、専用竿が無い(少ない)ニッチな釣りにズバりとハマる。

「MX-7S」の逆付けアップロック仕様にて。標準ダウンロック仕様と比較し、グリップエンドが長くなり、一方ティップ先端までが短くなることで、バーチカルな操作(ジギング)への適性が強まった。この日、サワラ相手にキャスティングからジギングまで「MX-7S」1本で対応

 

キャストからランディングまで。PE2号でワンテン+1を50m投げ、2~3kg1m程度までなら30秒でぶっこ抜く

 

 

「ロッドのiPhoneを作る!」挑戦は続く

「DearMonster」(ディアモンスター)は、後に“怪魚ロッド”と呼ばれる新しい概念(ジャンル)を作りましたが、ブランドとしての出発は打算的なものではなく、ごくシンプルな衝動からでした。

「無いから作る。良いものを作れば売れるだろ!」と怖いもの知らず の若者(当時26歳の私)がブログで手売りをはじめ、その後の展開は……簡単に言えば運が良かっただけです。

起業当初は悪戦苦闘しましたが、翌年にドキュメンタリー番組「情熱大陸」が放送されて以降、風向きが変わりました。

2013年、転機となった「情熱大陸」で釣ったピライーバ。以後、地上波番組で2m級の大物を次々釣獲。様々な偶然が重なって、「マルチピースロッド=弱い、廉価品」という“常識”をひっくり返した

その後、LCC(ローコストキャリア)やSNSの隆盛といった時代の追い風も受け、マルチピース専門を謳うブランドやメーカーが次々と誕生。やがて1&ハーフまでのラインナップだった既存ブランドや大手メーカーからも、マルチピースロッド(4ピース以上)が続々とリリースされ……近年の全魚種的な“マルチピースロッドブーム”は、皆さんご存知の通りかと思います。

 

さらなる「携行性」を追求したハイエンドモデル「MZ-7」

ハイエンドモデル「MZ-7」。さらなる「携行性」を追求し、仕舞寸法は39.5cm。10kgリフトを実現しながら、6フィート6インチで重量135gの軽さを実現。シリーズ内唯一のシングルラッピングモデルで感度・操作性に特化。

「コンパクト&タフネス、そして多機能性……ロッドのiPhoneを作る!」

“怪魚ロッド”なんて言葉もまだ無い頃、2012年に生まれた「DearMonster」は、知る人ぞ知るエポックロッドとして、今後もシーンに少なからぬ影響を与えていくでしょう。

昨年2020年には、仕舞寸法を更に40cm以下まで短くした「MZ-7」(仕舞寸39.5cm)がリリース。
ガイドをブランク端に配置する10年来のこだわりは、必然的に「段差レングス」となり、結果として操作性のブレイクスルー(飛躍的発展)に繋がりました。「マルチピースロッド=弱い、安い」は完全に過去の常識となり、感度や操作性は1ピースロッドに肉薄、その上で「マルチピースだからこそ」
の世界を拓きつつあると思います。

2019年、「MZ-7」のテストで、モンゴルにてキャッチしたタイメン

昨今の“マルチピースロッドブーム”の源流、近年では“元祖・怪魚ロッド”と呼んでいただくようになった「DearMonster」(ディアモンスター)。シーンを語る上で、この“怪なるロッド”に辿り着いていただけると嬉しいです。

関連動画 MONSTER KISS社 DearMonsterロッド紹介と説明

出典:YouTubeチャンネル「でんでんまる釣りチャンネル2nd」

モンスターキス プロフィール

怪魚ハンター・小塚拓矢が代表を務める、マルチピースロッド専門メーカー。黎明期より怪魚(遠征釣行)シーンを牽引し、2012年から展開する“怪魚ロッド”「Dear Monster」は、以後のマルチピースロッドブームに少なからぬ影響を与えている。2020年には新ブランド「HUNTERS」を設立。海外からの更新など、リアルタイム情報は、下記アドレスをチェック!
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