ライフジャケットの重要性や意味を考える。
その1・その2に渡り、ライフジャケットの歴史と安全性への取り組みをお伝えしてきたシリーズも今回が3回目。
ライフジャケットであるからこそ、万が一のときに作動しない、破れてしまった…では、困るわけです。
今回は設立から86年もの間、高い安全性が要求されるライフジャケットを作り続け、その上で築き上げてきたノウハウがたくさんんじゃないか。そんな事を考えつつ「モノづくりに対するこだわり」というテーマでお話を伺いました。
Bluestormのモノづくりに対するこだわり
Bluestormの製品には、1935年から救命胴衣の製造を行っている高階救命器具株式会社のノウハウが詰まっています。
モノづくりの拠点を初めて海外に集約させた1990年から30年の年月を経て、ライフジャケットの役割も大きく変化をしています。
従来までの、船に乗せておくだけのライフジャケットから、機能性やデザイン性を高めた多彩なラインナップのニーズが高まり、そのニーズに応えるべく、安全性はそのままに、快適な着心地や軽快なデザインを展開してきました。
ドライスーツやウェダーなどの、ライフジャケットの枠を超えたモノづくりを活性化させることで、その技術やノウハウをライフジャケットに還元し、より付加価値のある製品の提供を目指しています。
通常のアパレルで求められる平面的な縫製技術とは異なり、ライフジャケットやウェーダーの縫製においては立体的でより繊細・複雑な技術が必要とされます。
中国 南通市にある「南通工場」では、熟練の縫製工の高い技術により、歩行時や足上げの動きを妨げず、スムーズに行える3D立体裁断を採用しています。また、Wi-Fi機能を有し、データを分析できる最新のミシン、防水素材の縫い目を補強するための高周波誘電加熱法を用いた超音波ミシンなど、より高品質で多彩なラインナップに対応できる設備を備えています。
また、南通工場においては、生産する資材・部品を調達するところから在庫管理を行う基幹システムを導入。生産にかかる時間・コストまでを正確に把握することで無駄をなくし、効率化を図っています。また、ERPシステムを活用することでデータを統合・一元管理。
精度の高い情報をまとめて管理し、情報共有の負担軽減にも役立っています。そのような管理体制を敷くことで、工場で働く現地スタッフもより生産性を意識するようになりました。
明るく清潔感のあるフロアは、縫製を行うスタッフが集中して業務に取り組めるよう配慮しています。
暗くて雑然としがちだった縫製工場とは一線を画した南通工場では、安全と品質、そして生産性を上げる改善活動である5Sに、さらに「習慣」をプラスした6Sを徹底し、働く人にとっても快適な環境の提供に努めています。また、管理オフィスも廊下から中が見えるスケルトン仕様に。垣根を取り払い、オープンにしていくことで、より同じ目標に向かって「モノづくり」を進めていける。私たちはそう考えています。
万が一の時に身を預けるライフジャケットには、高い安全性が要求されます。Bluestormのライフジャケットは、国土交通省の定める試験に合格し、型式承認を取得しています。実際に救命を想定した各種試験に合格していることが、Bluestormの高い安全性の証です。
1980年代から、北米・北欧向けをメインとして製品をつくり続けてきたBluestormは、当時の日本の基準よりさらに厳しい北米・北欧の検査基準をクリアし続けていたため、日本において常時着用の法改正に先駆けて導入された新基準にもスムーズに対応することができました。
2013年の型式承認試験の基準の改正においては、製品の信頼性・耐久性などの向上を目的に、完成したライフジャケットの性能だけでなく、材料・部品レベルでの試験の見直しが行われました。
生地やファスナー、バックルなど、強度のかかる部品・材料については、従来まではなかった「材料・部品単位でも強度試験を行うこと」が試験項目に追加。併せて、太陽光に長時間暴露されることを想定した環境試験も行い、著しい製品強度の低下が無いかの確認が必要となりました。
こうした基準の改正に対して、より安全性の高い製品の製造ができる体制を整え、安全性の高い桜マーク取得のライフジャケットの普及活動にも取り組んでいます。
使用する時は、同時に危険が伴っている状況であることがほとんどのライフジャケット。普段見えない”こだわり”の部分が見えてこそ、より安心できる。そう思うのは記者だけでしょうか。
もしもの時に命を守ることはもちろん、目の前の釣りに集中するためにも、本当に安心できるライフジャケットを着用する。せめて1匹、もう1匹、後1匹を追い求めるアングラーにはもっとも重要ではないか、そう思うのです。