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今江克隆のルアーニュースクラブR 第968回「引退を決意して初めて見えた真実〜2019年最終戦閉幕〜」の巻

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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プロとしての矜持

昨季、自分は36年のトーナメント生活で初めてランキング30位となり、TOP50残留資格を失った。

しかし、皮肉にもその前年、TOP50永久シード権資格者が見直され、ただ1人自分だけが過去一度も年間30位以下になっていないこと、JB全タイトル複数回獲得、トップカテゴリー最多勝を評価され、再び正規永久シード権を表彰授与されていた。
*現在TOP50永久シード権を保持するのはTOP50最高齢者シードの泉(和摩)プロと自分の2名のみ。

しかしながら、自分がこの永久シード権を行使するに当たって、試合終了直後から様々な賛否両論が巻き起こり、インスタグラムのコメント欄は炎上、HPのインフォにも「辞めろ」、「ルールを守れ」との批判が多数寄せられた。

実際にはコメントの9割は現役続行を応援してくれる暖かいものだったが、残りの1割は辛辣なもので、引退か、マスターズから這い上がれというものだった。

永久シード権は36年もの現役生活で自分がたった1人、実力と戦績で手にした正規の参戦権利であり、それを堂々と行使することは何らルール違反でもない。

しかし、初めて経験するTOP50参戦権喪失の事実は、実力主義で生きてきた自分のポリシーに反するものであり、9割の応援より、1割の辛辣なる引退勧告が正道に感じてしまう自分がいた。

そして散々悩んだ結果、ある人の「1割の意見に心折れて、9割の現役続行を応援してくれているファン達の期待を裏切る方がよほど酷い裏切りでは?」とのひと言でシード権行使を決意した経緯があった。*結果的に青木大介プロがTOP50エントリーしなかったため、順位繰上げで29位正規選手登録となったが…

そして今シーズン、開幕当初から自分の最低最悪でも絶対にクリアしなければならない絶対条件は、どんなことがあっても正規選手枠である29名に復帰し、堂々とTOP50プロ資格を獲得すること唯一つだった。

いくら永久シード権を持っていても、2年連続30位(29位)落ちは他者の批判とは関係なく、今度は自分のプロとしての矜持が許さないと引退の覚悟を決めていた。

そして1日開催となった最終戦、自分の検量が終わった時、そのスコアは自分にその場でTOP50引退を決意するに足りる致命的ローウェイトだった。

トーナメンプロ・今江克隆として見る最後の風景…

ラストキャストのあと、これがトーナメンプロ・今江克隆として見る最後の風景なのだと、最終帰着者になるまで桧原湖の景色を記憶に刻んでいた。

本来、プロスポーツ選手はどんなに自分が現役を続けたくても、それを決めるのは自分ではなく成績である。

50歳まで現役を続けると宣言していたあのイチローですら例外ではない。

自分はこの時、生まれて初めて「これが最後の試合」と言う気持ちを味わうことになった。

心が潰れるほど辞めたくない気持ちは誰よりも強かったが、同時にどこかで少しホッとした気持ちも感じている自分がそこにはいた。

しかし、トーナメントの女神様は実に意地悪である。

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