今江克隆のルアーニュースクラブR 第942回「スパインレス・ライトアクションロッド誕生」の巻
さて3月入ると実釣も毎週3日は当たり前のように連続してくるが、同時にオフシーズン中に完成した2019年新製品の発売寸前の量産品テストの仕事がわんさと襲ってくる。
テムジン史上、ほぼ初となる「ライト」アクションロッド!
そんな中でも今月最大の目玉は、エバーグリーンからいよいよ7年の開発歳月を経てデビューする「スーパースティード」(GTR-C66LLR スーパースティードGT-R)、テムジン史上ほぼ初といってもよい「ライトアクションロッド」である。
テムジン史上と言うか、実はコンバットスティック史上を見ても、ライトアクションロッドは事実上「シューティングスター」以来、コレと言った機種が存在しない。
その最大の理由は、自分が手がけてきた「テムジン」の歴史は「スパインが起こすネジレ・ブレ」との戦いだったといっても過言ではないからである。
スパインとは?? 「テムジン」と「クロスファイア」の違いは?
スパイン(ロッドブランクス内壁に発生する偏肉よる背骨)は、柔らかい竿、曲がる竿ほどその悪影響が明確に発生する。
投げる際にも、フッキングの際にも、竿が捻れるたびにスムーズなネジレを妨げる。スパインが明確にある竿は、撓(しな)り(特に急激な曲がりや回転運動)の最中に引っ掛かりのような「しこり」が発生し、スムースなリリースタイミングに一瞬のブレを生じさせ、弾道がイメージしたラインに対しスライスしたりフックしたりする。
そのため2投目からは上手な人ならそのブレを頭で修正したタイミングで投げているものだ。
またストロークの短い、アワセシロが十分でない突発的フッキングでは、ティップ周辺から金属の糸なりのような「キキンっ」と言った「しこり」が弾けたネジレ音すらする。
この音が鳴った時はフッキングパワーは大幅にロスされている。
これを解決するために、テムジンでは「ネジレが悪さする前に仕事を完了させる」ことをコンセプトにティップまでビシっと張りの強い竿を一貫してフラッグシップに据えてきたのだ。
上級者ほど、手首やラインの垂らしの調節でキャストは改善できるし、食わせに関しては、ティップが硬い竿でも、上級者はラインスラックを出すことで柔らかい竿並みのテンションフリーな操作が出来るし、それが出来るならよりスラック処理能力の早い硬い竿のメリットは格段に活かせるのである。
ただ、この「テムジン」、そして「カレイド」が目指したコンセプトは、竿がカーボンシートをマンドレルに巻きつける以上避けられなかった各シートエッジの集積しこりである「スパイン」さえ無くならせれば、撓(しな)って柔らかくてブレのない完璧な竿が理論上作れるのである。
そのコンセプトに初めてチャレンジしたのが「クロスファイア・シリーズ」である。
クロスファイアではスパインレス製法確立を目標に、限り無くスパインレスロッドを目指したが、最低300本以上作った竿の、よりスパインの少ないモノを工場で選別し、残りは廃棄するというバブル期ならではの恐るべき生産方法を実施しなければならなかった。
その廃棄分のコストが製品に乗っかってくるのだから、恐ろしい値段になった訳である。