ビンターン80Sを開発者に直撃! vol.2
写真はスミスのバス用リップレスジャークベイト「ビンターン80S」だ。
少し前に、こんな記事を配信した。
〝今〟のバスシーンで本当に必要な要素を考慮し、それを微に入り細を穿つコダワリで表現。2025年3月発売予定となっているNEWルアーだが、その開発者はスミス・池島竜一さん。
前回も好評を得た記事であったが、引き続き池島さんにそのコンセプトなどを詳しく聞いてみました。
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現代版リップレスジャークベイト
編集部(以下、編):糸絡みの解消以外の部分で、何か開発で苦労した点はありますか?
池島竜一さん(以下、池):そもそも市場にはほぼ現存しないジャンルなので過去にあった製品しか比較対象がありません。過去の製品と同等レベルのものを作ることはたやすいですが、折角作るのならそれらを超えるものでなくては意味がない。令和の時代に出るものが昭和の時代と同レベルというんじゃ話にならないですからね。
ただ、自分自身でもどこまで性能を上げられるのかというのが当初わからなかったんです。だから合格点のボーダーラインをどう設定しようかという点で悩んでいました。
ゆっくりと誘うためのスローシンキング設定
編:ビンターンはスローシンキング設定になっていますね。
池:海外製のグライドベイトはシンキングが主流ですし往年のバスクルーダーもシンキングだったのですが、ビンターンはスローシンキングにしたいと思っていました。なるべくゆっくりターンさせて誘えるようにしたかったからです。かといってサスペンドにすると水面直下でしか誘えなくなる。リップ付きのプラグと違って自力で潜行していくことが出来ないルアーなので、スローに誘える範疇で沈めていけるのが一番使いやすいと思っています。深いレンジを狙うことも出来ないわけではありませんが、水面から1m程度までの浅いレンジを探ることを想定しています。
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ビンターンは前傾姿勢でスローに沈む。着底時にはテールを上にしてボトムで立ち上がる
リップレスならではのスライドダート
編:一般的にジャークベイトというとリップがあるものをイメージします。リップレスであることのメリットは何でしょうか?
池:リップのあるジャークベイトはどうしてもダートにブレーキが掛かりますが、リップレスならスーッと伸びていくようなスライドダートアクションが出せるんです。
ただ、ダート幅が広いという点に対しては賛否両論があると思います。実のところ、ダート幅が広いとバスのミスバイトを誘発してしまう事もあるんです。それを理由に、ダート幅が狭いジャークベイトを好むアングラーもいます。
そこをあえてダート幅の広さを求めたのは、ダート幅が広いものはアングラー側が加減をすることによってダート幅を抑えることも出来るんですね。技量でダート幅を調整出来るという事です。でも逆にルアー自体のダート幅が狭かったら、それを広くダートさせることは出来ません。
バスの付き場が絞れないという場合はワイドダートで広く探って、ここにはいるだろうというスポットではショートダートで誘って喰わす、ビンターンはそのどちらも出来るんです。
トゥイッチした瞬間に横方向に飛ぶ、即応性
編:動画(文末参照)を見るとかなり機敏に左右にダートしていますね。
池:この動きが出せる3/8ozクラスのリップレスプラグはまずないと思います。それまで自分が試してきた製品はどれもロッドワークに対する即応性、つまりトゥイッチをかけた瞬間に横っ飛びするという性能が今一つでした。
ほとんどのリップレスジャークベイトは、トゥイッチをかけた瞬間から横方向に飛ぶというより、まずは前方方向に直進するんです。それが徐々に横方向に逸れていく感じなんですね。でもこれだと移動距離もそれなりに大きくなってしまう。ここぞ!という場所で誘いを掛けづらいもどかしさがあったんです。
でも、リップのような水を受ける部分が無いのだからそれが当たり前なんですよね。おまけにトゥイッチした際の引き心地がスカスカなんですよ。これだと水中にあるルアーの動きもイメージしにくい。この辺りを上手く改善して、もっと使いやすいものにしたいなとは思っていました。
頭部の平面がミソ
編:それを解決する方法というのはあったんですか?
池:これはスミスのプロダクトとして開発を進めてからの過程で生まれたものなのですが、頭部先端にちょっとした平面があるんですね。ここがトゥイッチした瞬間に水を掴んで瞬時に左右にダートすることを実現するのと同時に、一瞬だけ「グッ」という引き心地を感じられるんです。
この平面、実はトゥイッチした瞬間にだけ水を掴むんです。ビンターンは前傾姿勢でフォールすることは先に述べました。ここからラインを引くとビンターンが少し頭を上げるんです。すると平面が水の抵抗を受ける角度になるんですよ。直進方向に進まずクイックに横方向を向くのはそのためなんです。
そして横方向にダートする間にビンターンはまた前傾姿勢に戻っていく。すると平面が水を受け流す角度になるんですね。だからビンターンのダートはブレーキが掛かりにくくスライド幅が伸びるんです。
編:すごい良くできてますね
池:デザイナー天才でしょ?(笑)でもこのバランスを見出すのは本当に大変でした。
平面を大きくすると水の抵抗を受け過ぎてダートしづらくなってしまう。角度に関しても同様で、前傾姿勢とのバランスが極めて微妙なものでした。
でも、頭部の平面だけではなくてボディーの曲面、ラインアイの位置や深さ、ウェイトバランスといった全てに理由があります。デザイン上での企業秘密もあります。そのうちどれか1つが欠けてもビンターンは完成しませんでした。
効果的な使用法について
編:何か使い方のコツみたいなものはありますか?
池:まずは糸絡みを減らすためにフロロカーボン10~14lb.を使って下さい。それが前提条件になります。トゥイッチ系の操作について言葉で伝えるのは難しいのですが、自分はペンシルベイトをスローに動かすようなイメージでビンターンを使っています。
トゥイッチをかける際の手首のスナップや強弱、糸フケの出し方によってビンターンのダートアクションは変化します。個人差もあると思うので、こればかりは実際に色々と動かしてもらって自分なりのリズムを掴んでもらうしかありません。
一点注意する点があるとすれば、バスに喰わせるタイミングを作るという意味でポーズを織り交ぜるのが良いです。特にワイドダートで誘う際にはたまにバスが喰い損ねることがあるんです。食べようとした瞬間に目の前のルアーがフッと消えて、バスがキョロキョロしていることがありますよ。ビンターンはポーズ時のヒットも多いんです。ティンセルテールがポーズ時にフワーッとなびいている動きもいいんでしょうね。
1月に開催された釣りフェス2025においても多くの注目を集めていたビンターン。
その詳細なスペックは近日中にルアーニュースRでもお届けできるだろう。
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