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【2024年プロト展示の答え合わせ】ベールを脱ぐ、スミスのバス用リップレスジャークベイト「ビンターン」

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2024年ショーで公開されたプロトモデルの正体は?

△釣りフェス・FショーOSAKAで展示されていたビンターン。「開発テスト中」の文字に気になった方も多かったはずだ

2024年の釣りフェスティバル及びフィッシングショーOSAKAのスミスブース内で展示をされていた各種プロトモデルの中に、バス用のリップレスジャークベイトがあったのを覚えている方もいることだろう。

ビンターンと名付けられたこのプラグは当初2024年の5月に発売される予定だったそうだが、工場の生産スケジュールの関係で年内の発売が見送られることになった。しかし遂にその発売が2025年春に決まったようだ。既にカラーラインナップも決定しており、12月初旬に行われたショップイベントでは一足先にお披露目となっていた。

遂にベールを脱ぐバス用リップレスジャークベイト『ビンターン』

ここでは、このプラグの開発者であるスミスの池島さんに詳細な説明をしていただいた。

池島竜一(IKE-P) プロフィール

スミス企画開発課勤務。50代半ばに差し掛かりつつも釣欲が衰えを見せないバスアングラー。フィールドの保全活動にも積極的に取り組んでいる。

編集部(以下、編):ビンターンはどんな泳ぎをするんですか?

池島(以下、池):まず、ビンターンはスローシンキングプラグです。トゥイッチやジャークを加えることで、水面下で左右にスライドダートアクションを起こします。

編:ただ巻きで使うルアーではないと?

池:はい、ただ巻きでも微かにウォッブリングしながら泳いでくるのですが結果的にそうなったというだけで、あくまでトゥイッチして使う事だけを徹底的に追求してきました。

編:ビッグベイトには左右にターンするものも多いですよね。

池:逆にビッグベイトだからこそあの動きって出せるんです。特に、左右にスライドダートする動きって小さいプラグで出すことは通常出来ません。

台車に重いものを載せて、ある程度までスピードを出したとします。それを急に止めることって難しいですよね、どうしても制動距離が伸びてしまう。自重のあるビッグベイトが左右に広くスライドダートするのはそれと同じ理屈なんです。自重の足りないものはスライドする前に制動力が勝って止まってしまう。その場で左右にショートスライドする事しか出来ないんです。国内外問わず評価の高いビッグベイトやグライドベイトが色々ありますけど、それの小型サイズのものはどれも動きが別物になってしまっていました。期待して散々買って試したんですが、どれも自分が求めていたものではありませんでした。

△バスに使いやすいサイズでスライドダートをするものはないかと試したルアーの数々。シーバス用のルアーも含まれている

ビッグベイトの釣りも随分と普及しましたが、単純にあのサイズ感が災いして喰わないバスというのは沢山います。あの動きはそのままに、もっとサイズを抑えたルアーが欲しいと思っている人は大勢いるはず。

それに僕らの世代はね、ルアーのキャスティングというのはポイントに向けて正確に、そして着水音を抑えることの重要性をだいぶ叩き込まれてきたんです。ピューッ、ポチャンが理想なんですよ。ビッグベイトだとどうしてもエイヤーッ、ドボーンになっちゃうでしょ?ビッグベイトだから釣れる魚がいるのも確かだけれど、サイズ感を下げないと釣れない魚が多いのも事実なんです。

編:ビンターンは小型ながらも左右にスライドダートさせられるということですね。

池:ビンターンは11.8gなので3/8ozクラスになりますが、左右に伸びていくようなスライドダートを実現させています。言葉にするより動画を見てもらうのが一番早いですね。

ビンターンが生まれた背景とは

編:設計自体に秘密があるんですか?

池:小型で且つ水平姿勢でこの動きを出すことは出来ません。ビンターンは頭下がりで沈んでいくフロントヘビーバランスになっています。エギに通じる部分があるかもしれないですね。バスルアーとしても別に新しい設計ではなくて昔から存在したものでした。釣り歴の長い50代以上のアングラーだったら”お祓いメソッド”という操作法を聞いたことがあるんじゃないかと思います。石垣さん(記者)は年代が自分より若いからきっと知らないかな。

編:バスクルーダー…でしたっけ?

池:そうそう。バスクルーダーは自分ももう5~6個しか持ってない(笑)。独自の釣り方まで生み出したというのにそれを継承するルアーがもうどこにもないんです。あちこちのメーカーから似たようなものが出ては消えを繰り返していて、結果として残っているものがない。自分としても40年も前のルアーを探し集めるのももう限界だし、しょうがないから自分でバルサを削って作っていたんですよ。

△池島さんが個人的に作っていたリップレスプラグの数々。膨大な数だ

△バルサで作ったサンプルでも代用品としては充分な釣果が得られていたという。シーバスもよく釣れたそうだ

編:それがビンターンのベースになっているんですね。

池:まさか製品として出すことになるとは思っていなかったんですけどね。当然の事ながら、性能面ではだいぶ進化させていますよ。

リップレスジャークベイトの泣き所

編:でもどうしてリップレスジャークベイトって市場に残らないんでしょうか?

池:それはこのタイプのルアーには致命的な欠点があるからなんです。とにかく糸絡みが激しい。酷いものだとキャストするたびに糸絡みするから数キャストしただけで嫌になっちゃう。

編:そんなに絡むものですか?

池:糸絡みが起こる原因なんですが、トゥイッチした直後にラインの弛み残りがありますよね。次のトゥイッチでルアー自体がその弛み残りに干渉してしまう。左右にキレッキレのダートをさせようとすればするほどその現象が顕著になってしまうからルアー操作が上手い人ほど糸絡みを起こしてしまうことになるんです。かといってあまり左右にルアーを飛ばさないように手加減して操作するとなると、折角のルアーの性能を抑えながら使うというジレンマがあるんです。

これがペンシルベイトだとラインは水面でフックは水面下というように明確にレンジが違うから滅多に絡まないんです。リップ付きのミノーは多少なりとも潜行していく方向に進んでいくからこれもラインの弛みとはそこまで干渉しない。

でもリップレスジャークベイトはラインの弛みとルアーのレンジがほぼ同一なのでどうしても干渉が避けられないんです。特に、腹を翻すように動くルアーは絡みやすい傾向が強くなります。

編:何か解決策はないものなんでしょうか?

池:物理的に解決しようとするならアシストワイヤーを装着するのが最善でした。実はビンターンでもアシストワイヤーをパッケージに同封することも考えたんです。でもスマートじゃないなと。ダブルフックの装着も試したんですが、結果があまり変わらなかった。

△物理的な解決策としてアシストワイヤーは効果が大きかった。しかしスマートかどうかというと…

編:ビンターンは糸絡みに対しての改善はされているのでしょうか。

池:テールフックの位置が最後部ではなく下部に付いているのは糸絡み対策の結果です。あとは泳ぎの質。腹を翻すようにダートするのではなく、真っ直ぐ左右にダートするようにしています。それでだいぶ改善は出来ているんですけれど完璧という訳ではないです。

でもある日、シンプルな解決策を見付けてしまったんです。それまではずっとナイロンラインでテストをしていたのですがたまたまフロロカーボンラインを巻いたリールで使う機会があったんです。そうしたら糸絡みが極端に減った。比重の違いでしょうね。だからそれ以降はフロロカーボンラインの使用を前提にしてルアーのバランス調整を施していきました。だからビンターンはフロロカーボン10~14lb.の使用を推奨としています。


池島さんのお話は、いつも面白い。その博識ぶりには驚かされるばかりだが、実際のフィールドで体感したことをフィードバックする。

どうやらビンターンは、そんな池島さんの拘りが半端なく詰まった製品のようだ。

次回もその開発話を詳細にお届けする予定だ。

SMITH(スミス) プロフィール

1970年創業。日本のルアーフィッシング創成期からそのノウハウや楽しみ方を提案し続けている。バス、ナマズ、ライギョ、トラウト、ソルトと展開するジャンルも多岐に渡る。展開するタックルはスミスオリジナルのロッドやルアーに加え、プラドコやゲーリーヤマモトといった海外製品の輸入販売も行っている。
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