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ついに明かされるティップランエギング誕生秘話【業界初の専用エギ・専用ロッド登場から15年!】

寄稿:大西正人
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ティップランエギング専用エギ「スクイッドシーカー」が誕生15周年

大西 正人(Masato Onishi) プロフィール

ティップランエギングの伝道師。長年にわたり、バレーヒルで主にティップランエギング、イカメタル 、オモリグ関連の開発業務に従事。ティップランエギング(Tiprun Eging)の名づけ親。兵庫県出身、在住。

こんにちは! バレーヒルの大西正人です。
私自身、長い間、ティップランエギングの製品開発を担当させてもらっているのですが、実は、バレーヒルから業界初のティップランエギング専用エギ「スクイッドシーカー」と専用ロッド「レトログラード」をリリースさせていただいたのが、2009年のこと。
そして今年2024年、ティップランエギング専用エギの「スクイッドシーカー」が誕生15周年を迎えることができました。

バレーヒル公式 ティップランエギングアイム一覧 ページはこちら

ティップランエギングの最大の魅力は、イカがエギに触れた瞬間、ティップ(穂先)にアタリとして変化が表れ、即座にフッキングを入れるという、一連の動作を行う中での、ドキドキ感にあります。
またイカのアタリが分かる? アタリが分かる事で、“自分で掛けた”を体感できる事が、ティップランの釣りが多くのアングラーに受け入れられた理由だと思います。

2010年に撮影されたスクイッドシーカー紹介動画

さて、ティップラン専用エギ「スクイッドシーカー」が誕生して節目の15年目ということで、今回は改めてティップラン専用タックルを開発するに至った経緯などをご紹介させていただきたいと思います。

 

ティップランエギングが生まれた背景と専用タックルの開発

ティップランが生まれる重要エリアとなった三重県・志摩エリア

では、そんなティップランはどのようにして生まれたのか? ですが…!

それは15年以上前の三重県の志摩エリアに端を発します。

志摩エリアではイカダでアオリイカがよく釣れていて
足元から水深20m以上という場所も多かった

当時、志摩エリアでは秋~晩秋にクロダイ(チヌ)などを狙うイカダ周辺でアオリイカが良く釣れていました。
しかし、足元から水深が20m以上という場所も多かったため、ノーマルのエギに糸オモリ等を巻いて重くして狙う必要があり、またそうやっても潮や風の影響でエギをボトムに着底させるのが容易ではない日も多かったのです。

深いイカダ周りを攻めるために糸オモリチューンしたエギが必要だった

より簡単にディープのボトムを取るためにエギにナス型オモリを装着して釣りをしていた人たちがいました!

そんな中、より簡単にエギを重くして早く着底させるためにナス型オモリをスナップに通して釣りをし始めた人たちがいました。

今でこそオプションシンカー等を利用してエギをウエイトUPさせて釣りをする人は多いですが、当時は重たいエギはイカが乗りにくい…。またはエギを触っても直ぐに離すという考え方が常識となっていた時代でした。

ナス型オモリを付けたエギは釣れない!
というのが当時の常識でしたが…実際は入れ乗り状態に!

そんな時代なので、ナス型オモリを付けたエギを試していた人たちは、周囲から、“釣れるはずがない”と小バカにされていたよう。
しかし、実際その釣りを試していた人たちの釣果は、空前の入れ乗りを見せていたのでした…!

もちろん私もそんな釣り、圧倒的な釣果に興奮を覚え、すぐに注目し、試しはじめました!
そして、そんな新しい釣りを行っている最中、注意深く穂先を見ていると、エギの重みで少し曲がっていたティップが“プン”と真っ直ぐに戻ったり、“グィ”と入ったりと、今まで気にしていなかったアタリに気づくようになったのでした。

ナス型オモリを取り付けたチューンエギは、Nリグと呼ばれていました

ティップに出る変化を確認してフッキングを入れるとイカの重みが伝わり特有のジェット噴射が……

こんな釣り、こんなエギングが、現在のティップランエギングの先駆けとなり、この状況に於いては重たいエギ=釣れ難いという図式を覆す結果となったのでした。
この釣りは一般的なエギングのようにフォールでエギを抱かせる釣りではなく、誘った後にエギが止まった状態で抱かせる釣りに変わったのでした。

当時はそのナス型オモリを取り付けたチューンエギは、その釣りを見せてくれた方の名前のイニシャルからNリグと呼んでいました。

その後、より速く沈めるために鉛製のナス型オモリからタングステン素材のオモリを使い始めたものの、エギのアクションを考えると決して良いとは言えるはずもりませんでした。実際、警戒心が強い時は乗せ切れないこともあり、より良い方法も考えるようになったです。

「Nリグ」の次に試したのがダート系のジグヘッドを、エギの頭に取り付けるという方法

そんな流れで、エギのアクションを良くするには? と考えた結果、次に試したのが市販されているダート系のジグヘッドをエギの頭を切り落として取り付けるという手段。
この方法は、見た目も非常に良くなり、より釣れる感が強くなりました。ナス型オモリのように、動かすたびにオモリがブラブラと動かないのでエギの動きを邪魔せずアクション的にも良くなったと感じることができました。
また、先端にジグヘッドを取り付けることでバランス配分が変わりフォールスピードが速くなったと実感することができたのでした。

レンタルボートなどオフショアでジグヘッドエギ⁉を試すと異例の爆釣が!

そんな試行錯誤を続ける中、
イカダ周辺でこれだけ釣れるなら、もしも船で沖に出たら…もっとアタリが多くなるのでは?と考えるようになり、すぐにレンタルボート等を利用しオフショアでの釣りで試すことに! すると結果は爆釣!
沖のイカはエギを見る機会も少く、警戒心も薄いようで、まさに爆釣。

もちろん、魚探等で海底の地形やベイト反応等を見ながらイカが近辺に居ると見立てたポイントにエギを投入するという大前提があり、何処の場所でも良いという事ではありませんでしたが、明らかに経験したことがないぐらいの反応のよさでした!

当時は「ドテラ流し」で攻めることがほとんど! なぜそうなったのか?

さて、当時の船の流し方なのですが “ドテラ流し”と呼ばれる横流しで釣りを行っていました。
この「ドテラ流し」は広くエリアを探るということに於いては長けていましたが、どうしても片弦でしか釣りができない。

ではナゼ「ドテラ流し」の釣りが主流になっていたのか? を考えると…後付けの考察にはなりますが、三重方面はエリアにもよるものの、オフショアジギングは“ドテラ流し”で青物等を狙うエリアが多かったために、自然とティップランの釣りも「ドテラ流し」で釣るのが主流になったのだと思います。
もし、これが船を立てて釣りをするエリアではじまった釣りだったとしたら、今でいうバーティカルティップランが、ティップランの王道のスタイルになっていたのかも知れなません。

さて、少しエギの話に話題を戻すと…

ジグヘッドを取り付けたことでエギの見た目もスマートで、誘い後の安定感が増したからか同じ場所で釣りをしているとNリグの人に比べて明らかにジグヘッド+エギの方にアタリが多くなっていました。
動きの異なる2つのエギが水中にあることで、イカがより興味を示したエギの方に乗ったという事なのだと思います。

ジグヘッドエギを試している頃、製品として開発することに!

西田健一氏に協力を仰いで製品開発がスタート

さて、このジグヘッドをエギに取り付けて釣りをしだした頃、当社の営業担当者に、ある釣具量販店から、この釣りの専用タックルを開発してみたら?と打診があり、その話がキッカケとなり、西田健一氏(現在もバレーヒルのプロアングラーとして活躍中、また遊漁船タートルガイドサービスのキャプテンとしても活動中)さんに協力を仰いで製品開発を進めることに!

ただ、当時のエギは自重が重たいエギでさえ、板状のウエイトが頭付近に取り付けてあるという事が多く、ヘッド部分自体がウエイトになっているというエギは存在していませんでした。
そんな中、西田健一氏からは「エギの形にはこだわらない」というリクエストがあり、当初はエギっぽくなくヘッド部とボディ部の段差をなくしてボディ腹側で水を受ける事でダートの幅を意識した形状のプロトが出来上がりました…!

キールのないエギの試作品
アイの位置も微妙に変えたモノを試作

カンナでラインを拾ったり、エギを止めた時にフラフラする欠点が気になって…

このプロトは動きがキビキビと見た目には釣れそうだったのですが、動き過ぎることが原因なのか? カンナでラインを拾うことが多くなってしまいました。 また、ロッドの動きを止めた後、安定せず少しフラフラしていたのがいけなかったのか? イカが近くまで寄ってくるものの乗り切らないというような現象が時折発生。釣れないわけではなかったのですが、コレが正解ではない! という感じでした。

改良を進めた末に辿りついた形状

そこで、今度は、形状がエギに近くなってしまうのですが、ヘッド下にノーマルエギ同様にキールの役目をするシンカーを付ける事で少しアクションを抑え、誘いの後の安定性と直進性が増すプロトを作ることに!

そんなプロトを試したところ、ジグヘッド+エギや最初のプロトモデルに比べてアタリが格段に増えるようになったのでした。
このモデルこそが、現在の“スクイッドシーカー”誕生へとつながる重要形状となったのでした。

このプロトをベースに、テストを繰り返していったのですが、そのテストの中であることに気がついたのでした。
それは、Nリグやジグヘッド+エギの時とは明らかにカンナへのイカの掛かり方が違っていたこと。

それまでは触腕掛かりこそが最良と思っていたのですが、最終プロトのエギでは漏斗付近にある腕の根元にカンナに掛かる事が多くなっていたのでした。

以前の物はやはり警戒心があったから触腕掛りになっていたことに気づきました。
もちろん今でも触腕掛りになることはけっこうありますが、その時は何かしらの警戒心を持ってエギを触ってきていると考えています。

何かしらの要因で警戒心がある時の掛かり方
ジグヘッド+エギの時はこの掛かり方が多かった

量産品の形状になってからはこの掛かり方が多くなった

こんな試行錯誤を経て、業界初のティップランエギング専用エギであるスクイッドシーカーが誕生したというわけなのです。
ちなみに命名は西田健一氏です。

試行錯誤の軌跡

 

ティップラン専用ロッド「レトログラード」開発秘話

ではティップラン専用ロッド「レトログラード」はどのように誕生したのか? というと…。

実はエギの開発と同時に専用ロッドの開発にも着手していました。

一般的なエギングロッドではエギを動かすには良いがティップが硬くアタリも分かり辛いものが多いと感じていたので、試しにティップが少し硬めのメバルロッドを使用してみました。
するとアタリがより明確に判るようになったのですが、使用するエギが重いので必要以上にティップが曲がってしまい、やはり違うと…。

そんな中、ティップラン専用のロッド開発を進めていったのですが、私がこだわったのはティップに出るアタリの出方。
というのも、イカのアタリは手元で感じるよりもまずティップに表れるから! ティップが柔らか過ぎても硬くし過ぎても駄目で、何度も穂先を作り直しては、実釣テストを繰り返しました。

そんな中、ようやく形となったのが初代レトログラードです。
当社も含め現在はソリッドティップを採用しているロッドが多いのですが、開発当時は神経質なイカが少なく素直なアタリも多く、軽く曲がった穂先がピンと元に戻る明確なアタリを出せる穂先にしたかったのでチューブラートップでのリリースとなりました。

 

当時のロケ動画の映像を見返しても綺麗に穂先に出るアタリは実に楽しい!

今ではロングロッドと言われるが、当時はオプションシンカーがなく、船からエギが離れることが多かったので誘いのストロークやフッキングのストローク等を考えると7フィート8インチ位が必要でした

当時、船のイカ釣りと言えば中オモリエギングが多く、ドテラ流しで単純に乗船人数が半分になる片弦のティップランエギングは受入れられ難かったと思います。そういったこともあり、当初はレンタルボートを利用して釣りをする事が多く、そうなると盛り上がるのは基本的に知り合いや仲間内だけでした。

講習会を開催したり徐々に広がってはいったのですが、 適当に船を流すだけでは釣れないし、「流し釣り」と聞いて10分も15分もエギをずっと引っ張っている方々も中には出てきて…。

やはり重要な基本の釣り方をシッカリ伝えていかないと、最終的に“釣れない釣り”となってしまう…。そこで、協力していただける船宿さんを探し、アタリを取って釣る事でここまでの結果が出るという事を雑誌や動画で多く伝えることに!

【バレーヒル】ティップランの伝道師たちが行く「ティップランエギングin三重県・南鳥羽エリア」

【バレーヒル】トリオ・ザ・ティップランのイカメタルゲームin日本海・前編

すると徐々に船宿さん達も興味を持ちだしてくれ、遊漁メニューに加えていただけるようになっていったのでした。

ティップランエギングはイカを多く釣るための釣り方ではなく、今まで分からなかったイカのアタリが分かるようになったことで結果的に多くのイカを掛ける事が出来るようになっただけなのです。

上記の様な始まりとタックル開発のテストを繰り返した末、2009年に業界で初めての専用ロッドのレトログラードと専用エギであるスクイッドシーカーを合わせてリリース。
釣り方の命名は成り行きで私が担当したがティップ=穂先、 ラン=(走る)アタリがピンと穂先が戻るイメージだったので→ 走るとし、 ティップランと呼ぶことにし、ここにティップランエギングが産声を上げることになったのでした。

以上が、ティップラン専用エギ「スクイッドシーカー」と専用ロッド「レトログラード」が誕生した経緯です。
長々とお話をさせていただきましたが、「そんな経緯があったんだぁ~!」と少しでも多くの方に知っていただけたのであれば、ウレシイ限りです!

バレーヒル(Valleyhill) プロフィール

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