今江克隆のルアーニュースクラブR「河野プロ、BMCトーナメント最終戦で優勝&AOY獲得!新しいバストーナメントのカタチ〜BMCトーナメント第5戦をLIVE解説〜」の巻 第1210回
2024年、TOP50に次ぐ注目度と知名度を得たトーナメントは、霞ヶ浦BMCトーナメントと言っても過言ではないだろう。
霞ヶ浦水系、利根川水系ローカル団体だが、TOP50にも劣らぬ高額賞金と、読売放送、RTV(読売放送の関連会社)と、ハイクオリティなライブ動画配信プラットフォームを確立。
リアルタイム視聴2,000人以上の視聴者と、一夜で2.5~3万回以上のアーカイブ再生を記録した実績は、これからのトーナメント観戦のあり方を示す、貴重なモデルケースとなったと言える。
人気プロが一同に会するわけでもないローカルトーナメントながら、これは実にBasser AllStar classicにも匹敵する観戦者数、視聴者数であり、魅せ方、解説、ショーアップが揃えば日本のプロトーナメントへの一般アングラーの関心は、今も極めて高いものであることを証明したと思う。
BMCトーナメント第5戦
そしてこの三連休、BMCアングラーオブザイヤーを決定する最終戦(第5戦)が開催され、イマカツの河野(正彦)プロが、まさかのシーズン2勝目を記録し、最終戦優勝とBMC・AOYのダブルタイトルを獲得した。
これによって河野プロは、なんと賞金400万円を手にし、BMC開幕戦優勝賞金、TOP50&JBシリーズ入賞賞金、スポンサー契約金、そしてプロデュースルアーのロイヤリティを合わせると、実に800万円を超える収入を、25歳の若さで手にしたことになる。
昨年までは唯一人アルミボート12フィート15馬力で参戦するTOP50最貧最弱装備のプロだったが、今年度は高額獲得賞金の他に千数百万円ものフル装備レンジャーボートをB.P.S、バスボートジャパンから共同サポートされており、まさに「日本のトーナメントドリームは今も健在」であることも、同時に証明することになった。
河野正彦プロがBasser AllStar classicの参戦権を獲得
今年は、イマカツNewエースとしての期待からレンジャーボートの操船や、ビッグレイクでの経験を積ませるためにTOP50の合間にハードスケジュールで霞ヶ浦BMCに参加させたが、BMC開幕戦を地元ロコもビックリの「ハドルファットフライ2.8インチ」のホバストで優勝、Basser AllStar classicのワイルドカードでもハードルアー一本で3位入賞し、頭角を着々と現し始めた。
ワイルドカードでは無念のAllStar classic出場権を逃してしまったが、まさかのBMCアングラーオブザイヤー獲得で2025年Basser AllStar classicの参戦権を獲得してしまった。
これで来年は、イマカツから三原(直之)プロ、河野プロ、そして自分が、Basser AllStar classicで競い合うこととなり、老後が一段と楽しみになった。
BMC最終戦のライブで解説
今回のBMC最終戦も、第3戦に続いて読売放送、RTVの完璧なライブ配信体制のもと、自分もスペシャル解説者として、Basserの谷川記者とともに、朝の5時すぎから夕方4時までBMC最終戦の解説をしてきた。
配信中は各種モニターから一瞬たりとも目を離さない、まさに選手の一挙一動をガン見状態での解説は、なかなか体力的には疲れるが、第3戦に続き、最終戦はまさに「トーナメントは誰も予想できない神が作りしドラマ」と言うに相応しい、とても見応えとバスアングラーなら必見の価値があるものだった。
最終戦は、ランキング上位4人にライブカメラが同船することになったが、全選手の釣果はコアングラーの検量のもと、デジタルウェイインでウェイトと写真が本部に送信され、すぐさまライブ配信画面にピックアップされる。
そして同時に単日ウェイトと年間ウェイトも表示されるため、抜きつ抜かれつの結果が次々と表示され、カメラ同船者以外の動向もリアルタイムで分かるため、解説スタジオにも自然と熱が伝わる。
その中で、不本意ながら解説者としての中立の立場を幾度も忘れさせたのが、初日の河野プロだった。
「ダルド」でキーパーを取った後に、「ポッパーマウス」でビッグフィッシュを2発仕留め、なんと霞ヶ浦ではMAX級ウェイトと言える3尾3,700g越え。
年間ランキングは2,800gも離された8位で迎えた最終戦だったが、まさかの単日首位、同時に年間1位を独走し始めた時には「まさか」があるのか?と心中穏やかではなかった。
花室川上流勝負となったライブ配信第3戦では、フライトの早かった江尻(悠真)プロに最上流エリアを完璧にブロックされ、次々とヒットさせる江尻プロを後ろから指を咥えて見ている負け展開になった。
だが、メンタル勝負に敗れ本湖を彷徨った末に手にしたビッグフィッシュが「ポッパーマウス」であったことが、今回の花室川メンタル勝負にも負けなかった「ポッパーマウス」・ビッグフィッシュ2連撃に繋がったのだと思う。
江尻プロの凄まじい追撃!
だが、第三戦の勝者・江尻プロの追撃も凄まじく、ライブ配信から一瞬でも目を離していたら気が付かなかったと思うが、実は初日終盤に河野プロがビッグウェイトを揃えた直後、江尻プロもビッグフィッシュを仕留め、わずか十数グラムで一時年間AOY争いで首位に出たのである。
内心、ダメか…と思った直後、河野プロが「ダルド100」で640gを690gと僅差の入れ替え、再び年間AOYランキングを10g差でトップに返り咲いたのである。
この「ダルド100」での1尾のキーパー入れ替えが、後に値千金、河野にとって奇跡の1尾となるとは、まだ想像はできなかった。
だが、この時、自分は2日目の天候が朝9時頃から風速10mを超える爆風大荒れの予報であることを、スタジオ解説で触れていた。
恐らく選手もプロゆえにこのことは事前に調べて知っていた可能性は高い。
霞ヶ浦水系では、朝から風速が8mを超えてさらに強まる予報の場合、ほぼ確実にJB/NBC、TOP50でも危険回避のため中止となる。
それだけに、この「ダルド100」の690gが、もしかするとトーナメントの女神が河野プロに微笑んだ運命の1尾となるかもしれない…と、内心では少し予感していた。
だがJBとは違い、霞ヶ浦のローカル団体であるBMCの場合、中止基準はBMC運営幹部の判断となるため、朝の数時間のみのサドンデス戦もありうるのでは…とスタジオで解説していた。
運命の2日目
果たして運命の2日目は、朝の4時半過ぎ、唐突に自分が読売放送へ向かう高速道路の上で掛かってきた現地、読売放送スタッフからの電話で早々に中止を知ることになった。
高額な放送経費をかけている読売放送、RTVスタッフの気持ちを考えると何とも複雑な気持ちではあったが、事故が起こってしまっては全てが水の泡に終わる。
スタジオ到着後の放送内容改変の慌ただしさと、せめて3時間は番組を持たせなければという現場スタッフの努力は、大変なものだったことをここに記しておこう。
だが、中止が早々に決まってなお、朝5時前から800人以上のライブ視聴者が減ることなく最後まで見てくれたことが、ライブ放送スタッフも溜飲が下がった想いだっただろう。
トーナメントの女神
こうして、河野プロは年間総重量でわずか10gという紙一重で江尻プロをかわし、最終戦優勝と年間優勝のダブルタイトル、そしてAll Star classicの参加権をも獲得した。
2,800gも大差をつけられた8位からまさかの7人抜きでのAOY獲得。
2日目の幸運もあったが、全ては初日に上位全員が失速する中、3,730gという今の琵琶湖でなら3尾9kg越えに匹敵するビッグウェイトを出した河野プロの大逆転に、誰も文句を言うことはできないだろう。
トーナメントの女神は気まぐれだ。そして若いイケメン好きでもある。
もし第3戦でまさかの帰着時間間違いの1kgマイナス(TOP50は2日目帰着は15時、BMCは14時半)さえなければ、TOP50歴代最強プロの一人、小森(嗣彦)プロが、余裕の1kg以上の差をつけてAOY獲得、300万円を手にしていただろう。
50歳になった小森プロの悔しさは想像に余りあるが、この悔しさが、まだまだ彼の強さを維持させてくれるはずだ。
そして第3戦で河野プロを振り江尻プロに微笑んだ花室川の女神は、最後の最後に悩んだ末、イケメン勝負?で今回は河野プロを選んだ。
小森プロ人生初の帰着遅れ、水の差の年間10g差勝利、逆らえない悪天候、過去自分も幾度も感じたことがあるが、トーナメントの女神に愛される男は、必ずいつの時代も存在する。
それが自然を相手にしたバストーナメントというスポーツの「モッテ生まれた運命」なのかもしれない。
Fortune favors the bold.