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「桐/キリ」のエギを作り続けて50年。老舗“林釣漁具製作所”に訊く「桐」という素材の優位性

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エギング&イカメタル入門

高知県に本社を構える餌木製作の老舗“林釣漁具製作所”。代表作である「餌木猿」をはじめ、古くから伝わる桐/キリ餌木製作には50年以上の歴史がある。

現存する古い製品カタログでもイカルアーは巻頭近くで多くの割合を占め、昔からイカ釣りが人気であったことが窺い知れる。また各地の漁師の需要に合わせて、形状や模様、多種多様なイカルアー(エギ)が開発されてきたことがお分かりになるかと。

プラスチックや発泡ボディの製品もあったが、昔から漁師にはやはり「桐」ボディじゃないとダメと言われていたとか。現在も国産の材料と高知の職人による手作りにこだわったエギ餌木猿を製造・販売しており、今年の7月には実に15年ぶりとなる新型のエギ飛猿をリリースしたばかり。

なぜ「桐」なのか

日本という国には、杉やヒノキ、他さまざまな木々がある。何よりそれ以前からルアーに採用されているバルサという素材もある。その中で、なぜ「桐」が選ばれ、そして釣れるのか。

①:浮力と強度

桐ボディにこだわる理由のまず第一に、“浮力”“強度”がある。

様々な木材の中でも比較的“比重が軽い(浮力が高い)”のが桐であり、餌木の動きとして非常に重要な沈降のバランスを取りやすく、シャクった時の動きのキレを演出しやすい。また、餌木のボディとしてある程度の加工のしやすさと、そして釣りにおける実用強度も桐は兼ね備えている。

②:天然素材であること

次に“天然素材であること”。そして、その“不均一性”

流木などを思い浮かべてほしい。もともと自然の物なのだから木が水と相性が良いのは必然、潮なじみの良さで流れに同調しやすく、放っておいても流れに乗って勝手に動く…といった天然素材ならではのナチュラルな演出が可能だ。

そして木は切った箇所によってそれぞれ節の詰まり具合が違う。すなわち重さや浮力も一個一個違うという訳だ。これが原因でバランスを取るのがとんでもなく難しいのだが…その不均一さがイレギュラーな跳ね上がりやダートをオートマチックに演出してくれることで、イカにスイッチを入れることができる。

ビギナーの方が使用していて「知らないうちに乗っていた」…なんてことも多く、パッケージに書いてある「3回しゃくって落とすだけ」というキャッチコピーもどこか信ぴょう性がある(笑)

また桐が詰まったボディならではの“水押し波動”というのもその特徴のひとつで、夜のシャローエリアやサーフなどでは巻くだけで釣れることも有名。

もうひとつは烏賊が餌木を抱いた時の「違和感のなさ」。桐材の持つ独特の柔らかさに、烏賊はしっかりと抱きついたまま放さない。釣り上げられた後もそのまま餌と勘違いしてずっとかじっているなんてことも…。

③:「工芸品」であるという優越感

あとは、何とも言えない使い手に優越感をもたらしてくれる、桐の餌木という趣き(笑)

餌木は日本で産まれた擬似餌であり、林の餌木は昔ながらの製法、釘目玉や鳥毛、手描きのマツバ模様など職人のこだわりが詰まっており、どこか温もりのある餌木なのである。

だから「桐」は釣れる

デメリットは、やはりコスト面。材料や光熱費等の高騰もあり、昨年大幅に値上げせざるを得ない状況に。それでも実際はバランスの調整にかかる技術や時間といった職人さんの手間賃が大きいのが正直なところ。

ひとつひとつに個性があるのが桐餌木だけに、その人その人に相性抜群の餌木も存在し、餌木猿フリークたちからは“当たり餌木”として重宝される。

職人技から生み出されるその餌木は、一つ一つが魂のこもった“道具”として、釣りという趣味の世界をより奥深いものへと導いてくれます。

釣れるから桐エギを使う。あるいは釣りという趣きある遊びだからこそ、あえて桐エギを使ったエギングに興じる。それもまた面白いのではないだろうか。

関連動画

出典:YouTubeチャンネル「林釣漁具製作所」

林釣漁具製作所

高知県高知市に拠点を置く創立1946年の老舗漁具メーカー。漁の実績に裏付けされた長年のノウハウを駆使し、ライトゲーム中心の「Tict」、エギングでは「餌木猿」、ソルトゲームの楽しさを追求する「HAYASHI」の3つのブランドを構える。各ジャンルでこだわりの詰まった製品をプロデュースしている。