今季の折り返しとなるTOP50第三戦霞ヶ浦戦が閉幕した。
結果は、昨年、ダブルカブトムシ(0-0)に終わったほぼ同時期同場所開催に匹敵するロースコアでの予選落ち。
毎年、誕生月、7月の霞水系戦は鬼門ともいえる惨憺たる結果だった。
昨年秋、Basserオールスター戦で4位入賞し、霞ヶ浦水系攻略のクセを掴んだと思った自信は、文字通り霞(カスミ)のごとく消え去った…。
今週は、その試合報告と、後半戦を迎えるにあたっての、今の気持ちを記しておきたい。

7月生まれの自分にとって、今年も7月の霞ヶ浦戦は、2年連続の鬼門となった
想定以上の好調
今回、霞ヶ浦戦の直前プラクティス2日間は、想定以上の好調だった。
そのキールアーは、実は昨年もウィニングルアーとなったポッパーだった。
梅雨時期のポッパーは、かなり昔、エバーグリーンの蝦原プロがWBSを勝利して以来、梅雨時期のテナガエビを意識した霞ヶ浦鉄板ルアーとして知られるようになった。
そしてその威力は、練習時点では紛れもないものだった。

梅雨時期、霞ヶ浦のトーナメントでは無類の強さを発揮するポッパー。「POP-X」の特注手長カラーは、ハマれば爆発的な威力を発揮する
だが、それはTOP50プロであれば誰もが知るところであり、狙い場所的な知識に劣るアウェイ戦であることから、何か他の手をプリプラから試行錯誤し、探していた。
その筆頭が、プリプラ時点から好調だった河野(正彦)プロが考案、デザインしたエビ型ダブルスイッシャー「ヴィラル」、そして直前プラギリギリに間に合った「ベイビーアベンタ(クローラー)RS」だった。

プリプラ時には河野プロデザインのテナガエビスイッシャー「ヴィラル」がメインになるかと思われた
プリプラでは「ヴィラル」を常陸利根川の鉄杭や霞ヶ浦の杭、表層を引き波を立てて超ゆっくり巻くか、PE0.6号での遠投で表層直下30~50cmほどを通すことで、500g前後のキーパーサイズは、霞ヶ浦本湖で比較的簡単に数釣れていた。

常陸利根川の鉄杭でのエビ型スイッシャー「ヴィラル」がメインルアーになるかと思われた。河野プロもキロアップを連発していたが、本戦での常陸利根のプレッシャーは最強だった

霞ヶ浦の石積みやキジャカ杭周りでのは400~500gが簡単に「ヴィラル」で釣れた。だが、このサイズだけでは勝負にはならない
キッカールアー
そしてキッカールアーとして、「スピンチャター3.5g」に「シェイキーチャター9g」の超極薄燐青銅フラットブレードを移植し、それに「レイジースイマー3.9インチ」をセットした通称「サヨリチャター」を準備していた。
この特殊なブレードの超高速微振動型チャターは、ノーマルの「スピンチャター」が千鳥クランクなら、こちらは高速直進型シャッドをイメージしたもので、その狙いは特に常陸利根川で奏功していた。
ゆえにプリプラ時点では、バスは薄いがサイズがデカい浪逆浦~常陸利根川をメインに考えていた。

「スピンチャター」に幻の?「シェイキーチャター」の超極薄極小ブレードを換装したシャッド系チャター。キッカー狙いには使う予定だったが…
だが、直前プラギリギリについに最終完成型が間に合った「ベイビーアベンタRS」が全ての戦略を変えてしまうことになる…。
ベイビーアベンタRS
今回の最終版「ベイビーアベンタRS」は「アベンタRS」が完成してから、すでに7年近くたってやっと納得の動きが出せた、今江的超自信作だった。
様々な天然木を精査検証し、「アベンタRS」に全く劣らない超デッドスロー能力と、「桐」にも負けない浮力と耐水性、強度、真っすぐ飛ばせる飛行安定性を突き詰めた結果、日本古来の天然木「杉」をベースに完成させたものである。

「アベンタRS」から7年以上の月日をかけて完成したベイビーモンスター「ベイビーアベンタRS」。天然の杉ウッドを採用した「RS」に劣らぬ超デッドスローを実現した極小羽根モノだ
杉は桐に継ぐ軽い比重を持ちながら、古来から木造船や酒樽に使われる耐水性と強度を持ち合わせる日本原産の天然木である。

桐よりも重く、ヒノキより軽い。水に強く硬さも十分な杉を素材とした「ベイビーアベンタRS」。水に纏わりつきながらも、まるで瀕死のセミのような波紋を出すことができる
この「ベイビーアベンタRS」の、他のミニマムサイズ羽根モノでは絶対に真似できないと断言できるスーパーデッドスローアクションが、霞ヶ浦本湖でポッパーを見慣れたバスに強烈に効くことになった。
その威力は目を見張るものがあり、霞本湖のゴロタ石が手前に入ったアシの手前、蛇篭インサイドのレイダウン沖、ブッシュの先端沖側などで、次々とバスが水面を割った。
過度な減水のため、カバー狙いのノーシンカーリグやライトリグ系では釣れても300~400gがほとんどの霞ヶ浦本湖で、小さくてもさすがは羽根モノのデッドスロー水面系の威力で、平均サイズ600~800gが面白いようにプリプラ2日間にわたって各所で釣れ続けた。

直前プラでは、面白いように600~800gのバスが水面を割った。それはあきらかにポッパーを凌ぐ、稀に見る威力だった
そして、遅れていた梅雨入り天気予報は、直前プラ終了時点では試合最終日までガッツリ「曇り/雨」、もしくは「曇り」予想だったため、このルアーで押し切る覚悟を直前プラで固めていた。
だが、無情にも天気予報は試合前日の夜にあっさりと予想を覆し、まさかの3日連続の危険な暑さを伴う「晴天/猛暑」に変わってしまった。

まさかの前日天気予報の大激変。少し曇ってさえくれれば確実にリミットメイクは簡単だったと思う。それほど「ベイビーアベンタRS」のアシ前回遊バスに対する集魚力はずば抜けていた
未知の可能性への挑戦
この時点で、本来ならリスクの高い水面をあきらめ、ノーシンカー、ライトリグ系にシフトするのがクレバーなプロなのだろう。
だが、ここ数年、自分はそれができない…いや、分かっていてもやれない、「純粋なプロアングラー」としては失格とすらいえる無謀さ突っ込んでいってしまう自分に苦しんでいる。
その理由の一つには、「今までにない羽根モノで、この霞ヶ浦で皆が驚くような結果を出したい」という、よくいえばルアーフィッシングの未知の可能性への挑戦、悪くいえばルアーフィッシングはこうあってほしいという我欲、傲慢、もっと悪くいえば、ルアーメーカーCEOとしての商魂ともいえる理想への憧憬である。

「ベイビーアベンタRS」や「ヴィラル」を喰い損ねたバスにフォローで「ダンベルクラブ」のノーシンカー。この合わせ技で上位入賞を期待できたが、好事魔多しを地でいくのが、激変霞ヶ浦の怖さである
可能性の試験会場であり発表会
負け惜しみに過ぎないが、自分にとってトーナメント最高カテゴリーのTOP50は、ルアーというエサから遠く離れた存在の、未知の可能を秘めた新たなルアーの、試験会場であり発表会であってほしい…という気持ちが常にある。
そういう意味ではルアーではないが、ライブソナーという新ジャンルをいち早くトーナメントに導入し、身に付けたプロは同じ意味で高いリスペクトに値するのだ。
だからこそ、新たな可能性が1%でもあると感じたなら、無理を承知でやり切ってしまうことが、自分の今の弱さなのだろう。
だが、その挑戦を辞めてしまった時、果たして40年も繰り返してきた今の日本のトーナメントに、自分はまだ夢を見続けられるのだろうか…自問自答は、今も続いている。

このサイズで「アベンタRS」に匹敵する驚異的な超デッドスローを実現した「ベイビーアベンタRS」。この素晴らしいルアーで霞ヶ浦のポッパーパターンを凌ぐビッグサプライズを起こしたかった
だが、本当はその答えはすでに自分では明確に出ているし、理解もしているのだ。
その答えは、いずれ自然と話す時が来ると思うが、今はまだその時ではないと思う…。

自分はストイックなトーナメントでの姿を通じて、バスアングラーに感動と憧れ、目標を与えられてこそのトーナメントプロだと思っている
初日と2日目
霞ヶ浦戦予選初日、猛烈な暑さの晴天時でもバスを出せる羽根モノの力を信じて「ベイビーアベンタRS」のデッドスローを熱中症になるまでやり切ったが、ノーフィッシュ。
3匹リミットになった今期、大逆転表彰台を狙うには圧倒的なビッグウェイトが必要になった2日目は、一か八かでプリプラで一度も触らなかった霞ヶ浦本湖全域の浚渫でのフットボール&ヘビキャロ一本勝負に賭けた。

2日目は2kgフィッシュを求めて霞ヶ浦全域の浚渫を駆け巡った。だが、TOP50戦で浚渫をハメたプロがいまだ皆無であることが、その難しさを物語っている
だが結果は、ラスト30分で試合中初めて投げた「アンクルシュリンプ2.8インチ」のダウンショットで450gのバスがアッサリ釣れた。
大逆転を狙った浚渫で、結果、絶対定番ともいえるフィネスワームのダウンショットリグでキーパーが釣れた時、今のTOP50で「優勝を狙ってギャンブルした」など、ただの自己肯定の逃げ口上に過ぎないことを情けないほど思い知らされた。

フットボールジグ片手に駆け回った浚渫でのラスト30分、「アンクルシュリンプ」のダウンショットリグを初めて投げると、アッサリとキーパーが釣れてしまった
フィジカル的限界
正直なところ、自分は今、本当のフィジカル的限界を感じている。
ライブソナーを修得するための冬季練習で痛めた脚を開幕戦で完全に壊してしまい、何とかトレーニングと無理な治療を重ね、弥栄湖戦は何とか3日間戦えたが結果は惨敗。
そのまま連戦となった霞ヶ浦の練習では、トレーニングの貯金を使い果たし、再び練習中に脚を痛めた。
本戦ではテーピングとサポーターで何とか持たせたが、もはや満足なパフォーマンスを維持できる状態からは程遠いのが現実だった。
この霞ヶ浦戦開催前日に、自分はついに還暦を迎えた。
60歳という年齢は、50歳代とはレベルが違う肉体的厳しさを感じている。
これまで40年間、特別なトレーニングをすることなく、ナチュラルなフィジカルで、根性と執念だけで最高峰トーナメントの最前線を走り続けてきた。
逆に特別なトレーニングをせず、二足の草鞋を履き続け、41歳で癌を経験しながらも、その時を除いて皆勤で最高峰シリーズに出場し続けられたことが、奇跡的なことだったかもしれない。
だが、今年の開幕戦での出来事は、それがもう明確に不可能であることを自分に思い知らせた。
年齢的にも何かを増やすのではなく、何かを減らさねばならない時に来ているとも感じている。
だが、自分はトーナメントに出る以上、余命を永らえるために不本意な、魅力のない釣りをするつもりはない。
ストイックなトーナメントでの姿を通じて、バスアングラーに感動と憧れ、目標を与えられてこそのトーナメントプロだと思っている。
AOY獲得はもう不可能かもしれない。
だが、絶対にTOP5圏内、そして必ずもう一度優勝を果たし、最高カテゴリー最多優勝、最高齢優勝を必ず更新してからロッドを置きたいと思っている。
そのために今季をまだ諦めることは決してしないが、あと最低3年全力で続けられるタフな身体を、来年3月までに必ず作りあげることを、ここに宣言しておく。
そして奥村和正氏とともに、2025年オールスタークラシックにはタンクトップで出るつもりである。

あと最低3年戦える身体を来期までに作り上げること。それが還暦60歳を迎えた自分に課せられた、最低限にして絶対の条件である