今江克隆のルアーニュースクラブR「ライブとリアルの狭間〜TOP50第2戦弥栄ダム・レポート〜」の巻 第1197回
千載一遇のチャンス
今回、最終日決勝、豪雨でサイトフィッシングが不可能だったので、自分は朝一にカジヤンこと梶原(智寛)プロと25mほどの距離で、初日と同じベンドのアウトサイドのフラットに並んだ。
そして、開始まもなく、自分の目の前の岸ギリギリで3尾のデカいバスの激しいボイルが起こった。
まさに千載一遇のチャンスだった。
だが、自分は焦ってしまいキャストを50cm、バスの後方にショートさせてしまい、バスの後ろ側に「ハドルスイマー2.4インチ」は着水した。
3尾のバスは、そこから真横のカジヤンの目の前に逃げるように泳いでいき、再びボイル。
カジヤンは、その3尾中2尾を自分の目の前で、まさに瞬殺で仕留めてしまった。
この時点でもう自分は、カジヤンに壊されてしまっていたのだろう。
その落ち着き払った所作と的確なキャスト、喰わせ方、瞬殺ランディングの全てを直近で目の当たりにできたことが、最悪の中での唯一の収穫だったかもしれない。
カジヤンに脱帽…
そして、さらに梶原プロは、雨が上がり気温が上がりだした昼前、自分とコバ(小林知寛プロ)が2日間、ずっと仕留め損ねていた「ギルネスト逆立ちバス」まで、自分の目の前で仕留めてしまった。
その方法は、あまりに衝撃的すぎて、カジヤンの観察力と洞察力に脱帽せざるを得なかった。
もはやバスフィッシングは、長年の経験など邪魔でしかなく、その場その場での観察力と対応力の柔軟性こそが最も重要だということを思い知らされてしまった。
なぜ、ギルネストの上でバスがユラユラと逆立ちするのか、「バスがギルを喰う」という常識だけに囚われている釣り人は、その理由に気が付けないだろう。
水中は、肉眼で見えているようで実は見えていない事実がまだまだある。
55cmを超える産卵で疲れたアフターの個体が、そこで実は何を喰っているのか、もう一度しっかり検証する必要があると思わされる見事な釣りだった。
昨年の最終戦遠賀川での逆転TOP50・AOYを決めた、まさかの「ステルススイマー」にも度肝を抜かれたが、梶原プロはやはり只者ではなかった。
圧巻!山岡計文プロ
そして、もう一人、そのカジヤンをしのぎ、ほぼ完全優勝を果たしたリザーバーのLVL(リビングレジェンド)、山岡計文プロの釣りは圧巻だった。
最もプレッシャーが低かった弥栄湖ダムサイト側下流域で初日、なんと「レイジースイマー9インチ」でキッカーを早々に仕留め、自らプロデュースした「PDLスーパーリビングフィッシュ4インチ」(4インチがキモだったそう)の水面放置のサイトフィッシングで、連日3尾3〜4kgオーバーで安定してまとめ、完全優勝を果たした。
実は、この「スーパーリビングフィッシュ」パターンは、カジヤンが自分の目の前で仕留めたのも同じルアー、同じ方法だった。
思い起こせば、かつて三原(直之)プロが優勝した七色ダム戦で、山岡プロと最後まで競ったパターンが、同じ「スーパーリビングフィッシュ」の放置プレーだった。
河野(正彦)プロが、七色ダム合宿のおりロクマルを仕留めて見せた「レイジースイマー9インチ」の隠れたバスを誘き出すサーチ能力を活かし、プリプラで見えバスが回遊する場所を絞り込んでいたという。
実はこの方法、数年前、自分も弥栄湖でティーザーとして「レイジースイマー9インチ」を使ってバスの付き場を探しだし、「メタルクロー」で表彰台獲得をした時と同じようなアナログ式ライブサイト?である。
だが、山岡プロがリザーバーLVLたる所以は、その「レイジースイマー9インチ」すら、実は完全にボトムに置いて回遊待ちの「放置プレー」で釣っていたというから驚きだ。
放置でもテールはユラユラ動くのでその方が喰わせられると事実を、七色ダム、池原ダムで密かに修得していたのだ。
歯型だらけになっていた「レイジースイマー9インチ」を見れば、どれだけサイドフックのセッティングを家の目の前の七色ダム湖畔で毎日試行錯誤し、煮詰めていたかがよく分かる。
ライブサイトとリアルサイトの狭間
今回の試合、自分の反省点は、プリプラ時からまだ修得過渡期にあるライブサイトとリアルサイトを中途半端に組合せてしまい、双方とも突き詰め方が甘すぎたことにあった。
これは、絶対的に得意とする七色ダム、弥栄ダム戦で、まさかの予選落ちをした河野プロにもいえることだ。
デジタルネイティブの若手世代は、もはやライブサイトは子供の頃から親しんだスマホのように当たり前なものだが、昭和アナログ世代の自分には、特にリザーバーに関しては、実質経験値半年の「ライブ初心者」に過ぎない。
それは経済的に魚探すら買えなかった昨年から、いきなりGARMINを手に入れた河野プロにもいえることだろう。
今のTOP50は、中途半端なライブ(サイト)テクは、自分の釣りのスタイルを一時的に崩してしまうリスクは極めて高い。
だが、同時にライブテクをスマホのブラインドフリック入力並に使いこなさなければ、これからのTOP50でとても生き残れるとは思えない。
今年は、そのライブの壁を実戦で乗り越える過渡期でもあり、ガマンと忍耐の苦しいシーズンになると思う。
だが、七色ダムで5日間もたなかったライブを回す脚力の問題は、この2カ月間、必死にやったトレーニングで確実な筋力向上の手ごたえを得られたことは、今後の大きな収穫だった。
まもなく還暦を迎えるが、最後の課題、ライブサイトも互角に極めるまで、老害プロになるのはまだまだ先の話だ。