皆さんこんにちは! O.S.P開発チームの“麻生 雅之”です。
さて、既にご存知の方も居られると思いますが、O.S.P初となるタイラバ「コト玉」が2024年初夏にリリースとなります! ルアーニュースRで開発に纏わる記事を紹介させていただけることを光栄に思っています。O.S.Pから初めてタイラバを出すということですから、それはもう、ネタは盛り沢山な訳で…。
①音を発生させるヘッド「コト玉」。
②ネクタイを簡単&スピーディーに交換できる「O.S.Pマルチユニット」。
③アクションロスを無くす設計の「アシストフック&ネクタイ」。
上記のように3つの魅力に分類される「コト玉」。今回は①について深掘り、次回は②③を紹介する形で、2回に分けてジックリ開発経緯や秘話、コンセプト、特徴などをお届けさせていただきたいと思います!
コト玉【O.S.P】
ウエイト:45g/60g/80g/100g
付属品:フィネスWカーリー、O.S.Pマルチユニット
①音を発生させるヘッド「コト玉」
では、早速本題へ移らせていただきます。
「O.S.P TEAM OCEAN」の「なぶらフィッシング」代表“岡元健二”船長は、千葉県旧江戸川を拠点に、東京湾でタイラバメインのガイド船として日々活動。そんな中、船長から“音の鳴るヘッドを具現化したい!”とお話をいただいたことが事の始まりでした。
岡元 健二(Kenji Okamoto) プロフィール
O.S.Pでは珍しく2人開発体制で臨みました。基本的に開発は1人で孤独と戦いながら進めますが、今回は検証のための母数が必要ということもありまして。
では、試作初期モデルから完成に至るまでを、時系列的に解説させていただきますね。
①初期モデル時代(実釣ではまだ使えない段階)
音を出すためにどうするか? ラトル?
ヘッドでラトルは響かなさそう。響く大音量という観点であれば、ジョイントの音が良いのでは? まずは試作しよう!と、初期モデルをいくつか試作すると、コトコトと音が出せたのです。こんな感じで、ジョイントで進めていこうと骨組みができました。
次のステップとしては、ジョイントで如何に音を出すか?です。ヘッドを揺らすことで、ジョイント部分が衝突して音が出るので、ヘッドを揺らす方向で試作に取りかかりました。リップの様な抵抗体を付与したり、潮に対して面を大きくしたり、ジョイントが動きやすいように大幅にクリアランスをとったりなど…色々試しました。
仮説~検証、仮説~検証を繰り返しながら、気休め程度ですが、水深2mの会社プールでスイムチェックしてみて、あー! 音が鳴っている! あれ、音が鳴っていない? とか、そんな地道な作業を繰り返しながら試作品を増やしていきました。
音を鳴らすためのキーになる部分がいくつか見えてきて、実釣で使えそうなプロトが形に。音が超鳴るサンプルが出来た時は開発チームも盛り上がりましたよ。
もう。嬉しくて。これで完成だ~って ! ただ、そんな甘くはありませんでしたが…。
②初期モデル時代(使える段階)
で、初期モデルを試すために“岡元健二”船長の「なぶらフィッシング」さんにお邪魔させていただき、実釣テストを行います。
開発チームはドヤ顔で「良い音鳴りますよ~」といった具合に。音が出やすいサンプルでいくつものプロトを準備して、勇んでタイラバをスタートするんです。乗り合い船なので、周囲の方々はバーチカルやドテラなど…良い感じで釣っています。
あれ? 我々はマダイが釣れていないよね…たまーには釣れますが、青物は沢山釣れるんですけど、本命のマダイ来ず。という一連の流れを何回か繰り返して悟りました「コレ多分マダイ逃げているわ」。
結論、音がいくら鳴ったとしても、ヘッドを動かしすぎるとダメ。バイトも少ないし喰うまでに至らない。青物は良く釣れるんですけどねw。
③中期モデル時代
他メーカーさんの安定して釣れているタイラバヘッドも同時に分析しています。“岡元健二”船長にも色々助言をいただいて、あのヘッドはダメ、あのヘッドはわりかし良い、あのヘッドはこういう時に良いと言った具合に。東京湾に限ってのことですが、情報をまとめると傾向が見えてきました。
当初から“岡元健二”船長に言われていたこと、アピール力の点で“ヘッド強ならネクタイ弱”、“ヘッド弱ならネクタイ強”という組み合わせが良いと。初期モデル時代は、音を出すためにヘッドを揺らしたくて結果的にヘッド超強になっていたという。
強弱って釣り場で基準が変わりますが、東京湾の基準はこれくらい?ということを理解してきた辺りから、デザインも進化。中期モデル時代の形状へシフトしていく流れに。
あ、マダイ釣れる。やっぱり釣れる、そういうことか! って実釣テストでの結果が出始めてきて、音が鳴るという軸をぶらさず、バランスの良いヘッドを着地地点に、細部にかけて突き詰めることに。
④後期モデル時代
後期モデルに関しては、実釣の使いやすさと釣果を重要視した仮説~検証のテストを繰り返し、ブラッシュUPさせていくことに。
乗り合い船でのテストなので、釣果の差がシッカリと出るんですよね。「なぶらフィッシング」さんに通っているタイラバマスターさんたちを相手に、テスト品でこっそり勝手に陰で勝負するんですw。何回か竿頭にもなって、デコることがなくなって。
明らかにテスト品が釣れるようになっているなと、実感できたのがこのタイミングです。他社さんのTGヘッドを使っているタイラバマスターさん達が居る中で。タングステンか鉛か? という議論は話がさらに長くなるので割愛しますが、鉛の良さって釣果の差が出やすい、緩い潮の時に発揮されると思っています。
初期モデルはヘッドを揺らして音を出す狙いだったのが、中~後期モデルはタイラバの基本アクションであるタッチ&ゴーをしていく過程で、アクションの変化のタイミングで音を出すということが、結果的に釣果へ繋がっていきました。
フォール時にコトコトするけど、着底して巻いている時はヘッドが暴れず、あまり動かさないようにしているので、巻いている時はコトコトしないです。リールハンドルを15回転程巻いて、クラッチを切ってフォールさせると、その時にコトコトと。あとはマダイが啄んだ時にヘッドの制動がブレてコトコトと。あくまでもイメージの世界ですが、甲殻類が逃げるような音とかあると思うんですよ。
啄んだ時って勝負所で、マダイに如何に追い食いさせるかっていうのがキモで、そういう点でコトコト音がマダイを狂わせて、より深いバイトの影響を与えていると思っています。いい塩梅になってきたタイミングで、“岡元健二”船長にもなんとか合格印をもらい、仕上がったデザイン。それが「コト玉」になります。
次回へ続く…。