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今江克隆のルアーニュースクラブR「ロッドのもう1つの心臓!『グリップ』の最新事情」の巻 第1173回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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さて今週は、ちょっと珍しい、バスロッドのもう一つの心臓「グリップ」のお話です。

実は今江的に「テムジン」、「カレイド」をプロデュースして以来、ずっと悩んでいるのがグリップのこと。

その理由は、ブランクス、ガイド選択とセッティングは、自分の希望通りほぼオーダーメイド、ブランクスに至っては特注マンドレルから自分の感性に合わせて組み上げていけるのだが、グリップだけは「富士工業(Fuji)」のグリップを終始一貫して採用している。

採用しているというか、他に選択肢が全くないのが現実で、もしグリップまでオリジナルで金型を起こしてデザインしたら、間違いなくそっちの方がブランクスより高くなってしまって、13万円ぐらいの竿になってしまうから(笑)

ただ、それ以上にグリップに関しては、富士工業の世界的シェアが凄すぎ、ほぼ独占企業状態で、それ以上のモノを一から作るのはコスト的にもダイワのような世界的釣具メーカーでないと無理なわけです。

まして何種類ものデザインとなると、さすがのダイワ様も富士工業には勝てません。

富士工業の「ECS」と「TCS」

そこで、エバーグリーンとしては、機種別にベストと思うモノを選択して採用しているのですが、日本のバスロッド界で圧倒的支持を今まで受けてきたのが、ミドルクラスの「ECS」、ヘビークラスの「TCS」ってシート。

自分のロッドも、現在はこの2種が圧倒的採用率で、日本人には最もフィットする形状だと思ってます。

日本で最も人気のある「ECS」ブランクタッチグリップ。完全なストレートだが最も違和感なく、ML~MHクラスロッドでは日本人の平均的な手に最もフィットするグリップだと思う

でも、ベイトロッドの「スパインレス構造」と並んで、ベイトグリップに関しては、昔から研究してしてたのが「センターオフセット構造」。

昔のガングリップって、ブランクスのセンターよりリールシートの受け部分が下に位置する、まさに名の通り「オフセットグリップ」が多かった。

これはサムバー式クラッチがなく丸形が主流だったオールド時代には必須の機能的構造だったのだ。

しかし、サムバー式の登場、ロープロ形状の普及でいつの間にか真っすぐな「ストレートグリップ」が主流になってしまった。

このオフセットグリップの最大のよい点は、クラッチを切った時にクラッチごと親指の腹と手の平の腹でグリップを掌で小さく包み込むように握れること。

昔からことあるごとにいってるが、親指の腹がグリップの背から大きく浮いてしまうと手首の回転が使えなくなるのだ。同じ長さで直径15cmの丸太を握ってグルグル回すのと、細い棒を握ってグルグル回すのと、どちらがスナップ効かせて回せるかって感覚だ。

丸太と棒が仮に同じ重さだとしても、「手首」より「肘」を起点にして回そうとしてしまうはずだ。

この原理を上手く解決したのが、ダイワのセンターオフセット式のグリップ。

かなり昔だが、これが世に出て特許取得された際には「やられた」感MAXで、ガックシきた思い出がある。

それぐらいダイワのオフセット方式は、わずかな差ではあるが、効果は間違いなくある。

特にガングリップ時代同様の「ワンフィンガー」グリッピングで投げる時には、明確に手首のスナップが使いやすい。

正直、それ以来、グリップに関しては勝ち目ナシ感があったのだが、近年、今江的にはグリップに関する考え方が少し違ってきた。

それは「ワンフィンガー」なら…ということだ。

「スティーズ」のセンターオフセット形状。ロッドの中心線よりグリップ上端が上にオフセットされている。パッと見ではなかなか分からない程度だが、この工夫はワンフィンガーキャストでは特に効果がある

ワンフィンガー?ツーフィンガー?

すなわち、果たしてワンフィンガーでどれくらいのアングラーが終日握りこんでいるか…だ。

少なくとも自分の場合、M~MHクラスまでの軽量ベイトロッドの場合でも、ツーフィンガーで握っている時間が最も長い。

MH~Hクラスならスリーフィンガーになる。

ここ一番でのスキッピングなどで意識的にワンフィンガーにすることはあるが、その後のアワセにおいてワンフィンガーは確実に手首への負担が大きすぎるがゆえ、ガッツリとリールごと握りこめるツーフィンガー、もしくはスリーフィンガーに無意識に握り替えてしまう。

特にピッチングを高頻度で多用する時は、手首の効きもそこそこ、フッキングの握りの安定感もよいツーフィンガーに自然となっている。

試合の場合、最短でも5日間は連続で釣りをするため、ワンフィンガーではキャスト時、フッキング時の支点の関係から手首への負担が大きすぎ、結果的に「腱鞘炎」になるリスクが非常に高い。

ツーフィンガーは手首のスナップがそこそこ効くうえ、フッキング&ファイト時のホールド安定感もよい。おそらく長時間の釣りでは多くのアングラーが自然とこの持ち方が主流になっていると思う

ショー等でのデモキャストなら基本はワンフィンガーだが、実戦ではツー、もしくはスリーフィンガーを使うことが大半ではないかと、自分は思うようになった(歳とって手首が弱くなったというのも否定できないが笑)。

アップデートが難しい…

話は変わるが、「カレイド」では本当に長らくベイトフィネス系、軽量撃ちゆすり系M~MHクラスのロッドの新機種を出していない。

その理由の一つに、グリップに関するアップデートの難しさがあった。

ダイワの真似はできないわけで、そこをクリアできるグリップができないかと、3年ほど前から富士工業公認マイスターでもある青木哲氏に相談をしていた。

正直、違った方法でのオフセット化は難しいと思っていたが、さすがの鬼才・青木哲氏は、富士工業にある提案をして、それを今年、実現させてきた。

それが「技徳グリップ」と呼ばれる、富士工業のグリップの中でも別格に位置づけになるオリジナルグリップだ。

「技徳」は、ガイドやリールシート等を展開する富士工業の「Fuji」のブランドとは別に、こだわりのロッドコンポーネントを提案する別ブランドとして世界40カ国に商標登録している。

そのネーミングの由来は、富士工業の社訓の1つである「技徳兼備(ぎとくけんび)」に由来するそうで、「技徳兼備」とは「技術」と「モラル」の両方を兼ね備えることだそうだ。

「技徳グリップ」の詳細

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