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【レオン北米釣り紀行/1996年〜1999年カリフォルニア】Vol3:レイクキャステイクの「怪」前編

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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クローダッド?

「トム、タックルを見せてみろ」

「ホイヨ!スピニング1本にベイト6本だ。どれが良いか?」

「ベイトのラインは何ポンドを巻いている?」

「んと、8と10と12と16、20、25だな」

「よし、じゃあ8と10の二本で行こう!」

「へ?細くないか?」

「うんにゃ、丁度良い」

「でも20ポンドオーバーが居るんだろ?」

「細くないと食わねーよ!」

「ふ、ふぅ~ん??」

「フックはこれを付けな」

「け?こりゃあ環付きチヌ針?」

ボブは何やら小さめのクーラーボックスのような物の中からある物を取り出した。

「ゲ!それはアレじゃあないですか、あ、アレ!」

「YES! ジス イズ ア クローダッド!」

「ほ~、クローダッドさんで!」

「訳して爪親父だな?」

「って、ザリガニじゃねーか!!」

ボブは自分のタックルに環付きチヌ針をラインに結び、ザリガニの頭の尖がった先端にカツンと縫い刺しにして岸目がけて放り込み、ボトムに到達したのを確かめてからラインスラックを取り、ふたたびベイトリールのクラッチを切って船べりにロッドをそっと置いた。そしてさらにもう一本セットし並べて置く。こりゃあまったくコイ釣りの風情ではないか…。

「さあ、トムも同じようにやりなよ」

「食ったらヨ、スルスルってラインが走るからビシッといくんだぞ」

俺はマジに腰が抜けそうになった。ここはカリフォルニア。ロサンゼルス郊外。名湖キャステイク。20ポンドバスの生息する聖地。全米ナンバーワンのスーパーランカーガイド、ボブクルピ。料金3万5千円なり。そして日本から仕込んできたフロリダバス用ルアーその他ン十万円分。

何が悲しゅうてザリガニで釣らなアカンのやあ~~ッ (心の叫びです)

気持ちを無理やり抑えて「活き餌」の理由を尋ねに掛る。ボブ曰く「スーパーランカーを釣りに来たのだろう?」「だったらコレしかないぜ!」「ルアーでやりたきゃあやっても良いが、俺は責任とらねーぞ…」とおっしゃる…。

「でな、なんでロウアーかを説明するとだな」「俺がアッパーで釣ってきたデカイ奴は皆コッチ(ロウアー)にリリースしてるのさ」「上にもまだデカイのはたくさん居るけど、密度で言うとコッチが遥かに上だな!」「おまけによ、ルアーで食わねー奴を餌で釣ってきたのだから、コッチのバスはルアーじゃあ難しいのさ」

しかし面白いものだ。昭和24年生まれで、その時代の中学生程度の英会話ほども喋れない俺が、オール現地英語のガイドとしっかり会話が成立したしほとんど理解が出来る。サンディエゴの警察官との会話と大違いだ。そしてその理由は、俺も彼もルアーアングラーだからなのだ。ロッド・ライン・リグ・フック・ポンド・インチ・カレント・ソーク・ネスト。頭に入っている用語の全てが、ネイティブが使うルアー用語だからだ。そしてその用語に疑問や否定や了解を示すWhat・Why・How・OKを挟めば立派に通用するし釣りに必要なほぼ全てが成立した。

ともあれ、大体筋書きが読めてきた。キャステイクといえば全米から世界からアングラーが訪れる聖地だ。当然プレッシャーは高く、デカイ奴ほどすれているはず。その点においては日本のリザーバーなど比ではないくらいのスレ方だろう。そんな中でスーパーランカーを釣らせるガイドと言うのはこう言う手段に出るわけだ。

さてさて、事の顛末はいったいどうなるのだろうか。トムは餌を使ったのか否か。爪親父でスーパーランカーは釣れたのか否か。ブツ(リグ)がブツなだけに、この先はあんまり書きたくはないのだが…。

女房に夜中に布団から追い出されて、(俺の寝相が悪くてさ…)

またまた俺に眠れない夜が来て、(時々来るんだよ…)

何かしら創作意欲のような物が掻き立てられて、(時々降りるのよ…)

ジジイの四方山話を君ら若い衆に聞かせたくなってきて、(自慢好きだしな…)

ふとPCの電源に手が伸びたときに運が良ければ続きを書き出す、(かも知れない…)

~後編「キャステイク巨魁のゆらめき」へ続く~

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