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【レオン北米釣り紀行/1996年〜1999年カリフォルニア】Vol3:レイクキャステイクの「怪」前編

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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一路キャステイクへ!

秘書氏が丹念に何枚もプリントアウトしてくれた現地までのマップを、三日三晩飽きもせずに眺めているうちに当日がやってきた。キャステイクがどこにあるかも知らないままに予約したのだが、思いのほか近くにあり、アパートメントから車で一時間半ほどの道のりだった。

待ち合わせはキャステイクの近くにあるフィッシングショップのパーキングだ。ブラックのシボレータホにブルーのレンジャーボートがボブの目印…。車もボートも行く先も、気が遠くなりそうな憧れの響きだった。

到着すると一目でわかった。それもそのはず、パーキングではなく、店の前の道路にトレーラーを曳いたシボレータホがデ~ンと止めてある。間違えようも無い。店に入ると早朝(7時)のせいか客は二人で、一人はカウンターに肘をついて店主らしき人物と雑談をしていたが、一目で「彼だ」と思えた。

店に入り、「Ah〜」と俺が言いかけるより早く、彼は「Mr Kaku?」と問いかけてきた。

で、俺は昨夜から考えていた台詞を言う。

「ミスターは必要ない。トムと呼んでくれ」

するとボブは「あれ?君は英語が喋れないと聞いたが、話せるじゃあないか?」と言う。

そこで俺は、コレも昨夜考え抜いて用意したせりふだが、「おおよ、昨夜一生懸命辞書を見ながら勉強したのよ」「釣りたい一念でな」とカマしてやったら、コレは見事に効いた。即効の専制パンチだ。

ボブは店主と顔を見合わせて米国人特有の長く豪快な笑いを見せたあと、「ワオ!最高のウイットだぜ!ヨロシクなトム!」と握手を求めてきた。この時点で最初の関門を必死で突破した俺は、平然を装ってはいるものの咽喉はカラカラだった。

ボブは俺の肩を抱くようにカウンターの隅へと案内した。ソコには分厚いファイルのような物が積んであり、ボブはまず一冊を取り上げて「今までに俺が客に釣らせたビッグバスの写真集だ。見てみろ」と差し出す。物凄かった。めくってもめくっても「バケツ口(現地ではこう呼ぶ)」サイズのオンパレード。そしてぶっ壊れるくらいの笑顔、笑顔、笑顔の客達。ボブがさらに次の一冊を差し出し、「俺と親父のレコード、こっちはレコード認定書だ」と言う。

見てみると、ボブの親父は正確な名前(○○○○?・クルピ)も記録を達成した日付も忘れてしまったが、紛れもなくブラックバスのワールドレコード(ウエイト)保持者だった。で、息子のボブはと言うと、「8ポンドテストラインによるワールドレコード」の保持者だった。そして、いつかは親父の世界記録を超えるのが夢だとも語った。

いやあ~、良いのに当たったゾ、コレは。コイツはモノホンだ。正真正銘のマエストロだ。天上天下唯我独尊斉天大聖ボブクルピ様だ。

ココがキャステイク?

ひとしきりの説明の後「レイクのゲートが空く時間」だとの事でタックルをボートに載せ、タホの助手席に滑り込む。ショップからわずか3分ほども走ると湖が見えてきた。湖岸へ続く道路へと入り、水際へ向かって走るとゲートが見えてきた。すでにゲートには数台のトレーラーを曳いた車が並んでいる。

入口のゲートは、有料道路の料金所のようなしつらえで、車に乗ったままでボブは何やらパスのような物を係員に見せてゲートを通過した。まるでテーマパークへ来たような気分だ。

ボートのランチングスペース(スロープ)は馬鹿っぴろく、十数艇がいっせいに横並びで支度を始める。とたんにそれまで鷹揚だったボブの態度が一変し、ヘイ、トム!ハリーハリー!Go!Go!Go!と急かし始める。何が何やら理解が出来ないが、とりあえず指図されるままにランチングの手伝いを必死で行い、ボートへ飛び乗る。

そうか!ポイント取りが激しいのだなヤッパリ。しかし周りのボートは結構チャチだぞ…。んで、ボブのボートは…おお〜船外機がデカイ!200馬力近いなこりゃあ!すっ飛ぶぞこりゃあ!うほほほ♪本物バスボートでカっ飛びドライビングだあ~!と内心はしゃいでいたら、ボブはすぐにエレキを下ろしてフットペダルを踏み始める。

は、はれ?と怪訝な顔をしていたらボブが振り返って「心配するな!俺のエレキは特注だ!見てろ、あいつを抜いてやる!」と言う。い、いや、何でエンジンは使わないのか?と問うと、「このレイクはエンジン禁止だしょうがない」と言う。

え?ココはキャステイクだろう?写真で見たが、ロケットボート(レーサー)のようなのもすっとんで走ってたぞ!とさらに問いかける。

「あ~、そりゃあアッパーレイクのほうだ。ココはロウアーレイクだからな」とボブ…。

キャステイクは二つの湖で出来ていた。到着した際に、スロープから見える景色がWEBで調べた時より妙に狭い湖だと思っていたが、「本湖」はこの上にあり十倍以上の広さらしい。だからUpperでLowなのか…。それにしても…、何だか話が…、違って…、来たような…。10分程のエレキ競争の結果、ボブのボートは宣言どおりぶっちぎりの速さで他船を圧倒してトップに立った。いったい何ポンドの馬力があるんだこのエレキは…。

程なくして岸際がサーフ気味のなだらかなエリアに差し掛かりボブはボートをソコへ止めた。

「ヘイ、トム!そこの後ろのデッキにあるアンカーを投げ込んでくれ」と言う指図。

あ、アンカー?と思いながらも指図に従う。ボブは船をスルスルと前へ進め、前のデッキの先端からもう一つアンカーを取り出して放り込み、俺にリアのアンカーロープを引っ張るように指示を出す。要するに「二点掛けの掛り釣り」の形だ…。

ま、いいや、なんせマエストロだからな。10ポンドを釣らせてくれる大聖だからな。色々考えがあるのだろう。郷に入らば郷ひろみだぜ。と訳がわからないギャグを頭の中で飛ばしながら次の指示を待つ。

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