ヘビーシンキングミノーはトラウトアングラーの必需品だが…
渓流域のトラウトアングラーで知らない人はいないであろうスミスのD-シリーズ。通称「Dコン」と呼ばれるD-コンタクトがその筆頭と言える存在だが、より小型のD-コンパクトも小渓流を攻略するアングラーには高い人気を誇る。
これらはヘビーシンキングというタイプのミノーで、通常のシンキングミノーよりも自重が重く、激しくトゥイッチしても飛び出すことなく一定の深いレンジで誘いを入れ続けることが可能なのだ。
ヘビーシンキングの台頭で浅場が竿抜け状態に
ヘビーシンキングミノーが台頭したことにより、それまでのシンキングミノーよりもさらに数10cm下層を攻略することが可能となった。その違いは大きな釣果の差になって現れたからこそ、ヘビーシンキングミノーは多くのアングラーに支持されることとなった。
ヘビーシンキングミノーの代名詞であるD-コンタクトの発売から20年が過ぎ、今ではトラウトアングラーの所有しているシンキングミノーはほぼヘビーシンキングに取って代わったと言ってよいだろう。
だが決してヘビーシンキングミノーは万能というわけではない。
急流や水深のある場所を攻めるのが得意な反面、浅い流れや渇水時などの攻略は不得手だ。少しでも気を抜くとボトムを引き摺ってしまったりスタックしてしまったりもする。だから着水後は間を置かずに素早いトゥイッチを止めずに繰り返さなくてはならない。かなり慌ただしい操作を強いられてしまう。
もちろん、そうした浅場は無視して水深のあるポイントだけを攻めて行っても別に構わないのだが、遡行の際に瀬の中を走り抜ける魚影の姿を確認するとそうもいかなくなるのがアングラーの性というものだろう。
そもそもドライフライを流すフライマンの人は浅場で良型の渓魚を仕留めている。ヘビーシンキングミノーの台頭がアングラーに好釣果をもたらしたのは間違いないところだが、逆にヘビーシンキングで攻めづらい浅場が竿抜けになってしまう結果となってしまったことも否めない。
浅い流れに潜む渓魚を釣るために
シリーズの生みの親である平本仁氏は浅場を攻略するために試行錯誤を繰り返した。その手始めとしてスタートさせたのがD-シリーズのライトウェイトチューンだった。
D-コンタクト、D-コンパクトに内蔵されているのはタングステンウェイトだが、これをスチール、鉛、真鍮といった様々なウェイトに入れ替えたものを多種テストした結果、D-コンパクト45にスチール球を組み込んだものが最良の結果を得られたのだという。リップが薄く、サイズの割に水を噛む力があるD-コンパクト45は、軽いウェイトにチューンされても高いレスポンスや水面から飛び出さない安定性の高さを実現したのだそうだ。
D-コンパクトFES
こうした試行錯誤の末に生み出されたのがD-コンパクトFES。サスペンドに近いレベルの沈下速度のものだった。
ちなみにフローティングでは駄目なのかと疑問に思うかもしれないが、ダウンクロスでの攻略などでは良いのだが、アップクロスでトゥイッチをかけ続けた際に飛び出さずにきっちり誘い続けられるという点でシンキングの方が優れているのだそうだ。水平姿勢で羽根のように軽くゆっくりと沈んでいく、このシンキングを平本氏はフェザーシンキングと名付けた(FES=フェザーシンキング)。
また浅場での使用を考慮してシングルフック(VANFOOK PLB-49♯10)を標準装備としている。これによりボトムを擦ってしまいそうな際どい攻略でもスタックを軽減できる。
平本氏はベイトタックルで使用
通常のD-コンパクト45(ヘビーシンキング)の自重が3.5gなのに対し、D-コンパクトFESの自重は2.0g。一昔前であればスピニングタックルでの使用に限られたであろう自重ではあるが、平本氏はこれをベイトタックルで使用している。近年のベイトフィネス用リールは2.0gのミノーでもキャストは可能だ。平本氏曰く、飛距離はD-コンパクト45の2/3程度というイメージだそうだが、自重の割には飛ばしやすいという印象を持っているそうだ。
もちろんスピニングタックルで使っていただいても構わないが、ダウンドリフト(下流に向かってルアーを流し込む)で使う際にはベイトタックルの方が断然扱いやすいそうだ。
D-コンパクト45FES・スペック
カラーラインナップ、スペックは以下の通り。
全長 | 自重 | タイプ | 標準小売価格 |
45mm | 2.0g | フェザーシンキング | ¥1,700+税 |
フェザーシンキングという新た一手、今だからこそ注目したい
現在は渓流も禁漁期間となってしまっているが、オフシーズン期間中に来シーズンに向けて手持ちのトラウトルアーの見直しを図ってみるのもいいだろう。ヘビーシンキングのフォローとして「フェザーシンキング」という新たな一手はかなり有効な手段となり得るはずだ。
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