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【レオン北米釣り紀行/1996年〜1999年カリフォルニア】Vol2:パシフィックベイビーと黒人ギャングと

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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再びサンディエゴへ

翌日早朝、準備は万端である。 リグは十分に仕込んだ。 フックもキンキンに研いである。 ガソリンも満タン、ライセンスも持った。 この間の二の舞はゴメンだ!(※第一話参照)

今日は前回よりサイズアップを果たしたい。狙いはキャリコバス&サンドバス である。前回は初めてのサンディエゴだったので市街地や観光地のそばで釣り をしたが、今日は竿抜けポイントを求めて少し冒険をしてみるつもりだ。町外れの半島状に突き出たエリアが潮当りもよさそうだ。

マップでルートを確認し、要所要所のインターチエンジを頭に叩き込む。さあ、地元の洗車場で5ドルで買った70年代ロックのカセットをデッキに叩き込み出発だ!

懐かしいメロディーが流れ出す。半端に思い出す歌詞を口ずさみながら、朝焼けのフリーウエイへと車を走らせる。気分は非常に良いのだが、少々胃が重い。

それもそのはず、昨夜はチャイニーズタウンまで買い物に出かけ、どこぞのファミリー金融のCMに出てくる、あの爪のでっかい「オマールエビ」を、つい勢いで4ポンドクラスの大物を頼んでしまい(それにしても安かった。約3千円だった)ソレをアパートに持ち帰り夕食にしたのだが、一人ではさすがに大きすぎた。何せ爪一つが人の手のひらほどもある大きさなのである。さらによせばいいのに、朝食の際にまた片方の爪をソテーにして食ったのだ。 とても美味かったが、朝からバターたっぷりのソテーはやはりちょいとね (笑)

胴体の方は白ワインで蒸して半割りにしてあるので、尾の身を半分ほど使い、レタスとトマトではさんでタルタルソース(もちろん手作りだぞ!)を掛け、 スライスしたバゲットではさんだサンドウイッチをランチ用にクーラーボックスへ仕込んである。

先日のメックスバーガーの不味さは二度と体験したくなかったのでね。

先回の「フェイクライセンス事件」を思い出しながら、改めて憤慨したり、ニ ヤニヤと自嘲したり、好きだった曲が掛かると、おっ!と、必死に歌詞をトレースしてみたりしていると、あっという間に時間は過ぎ、最初の叉路へ差し 掛かる。

よし、コレを右だな!とサイドボードに置いたマップを横目で見ながらフリーウエイを降りる。ひとしきり高層物の全く無い市街地を走る。 いや、ほんとに一歩ロスの中心部を出ると二階建て以上の建造物を見る事は難 しいほど見事に無い。何せ土地が広いのだ。ばかばかしいほどね…。

やっと住宅街を抜けると、海岸線に出る前に必ずといって良いくらいある「丘陵地帯」が見えてきた。

西海岸は太平洋プレートが隆起してシワのように海岸線に大きな丘を形成して いる。砂漠のような荒地が多いカリフォルニアも、この丘陵地帯はなぜか水が多いのか、緑なす美しい風景になっているところが多いのだ。道路が頂上付近に差し掛かり、見る間に目の前に素晴らしい景観が広がる。雲ひとつ無く、浅い色の大海原がドッと視野いっぱいに広がる。

しかし、この太平洋の景色はいつ見ても物凄い。高知県などから見る太平洋より、はるかに広いような印象を受けるのはなぜなのだろうか。陸地側に建物が少ないと、こう見えるのか?俺だけではなく、この景色を始めて見た日本人は皆同じ感想を持つようだ。

眼下の海岸線をチエックすると面白いものが見えた。なにやら埋立地のように見える。左右の海岸線より海側に張り出すように、空っぽの平坦な土地が真四角に造成 してあるようだ。しかも半島の先端少し手前である。こんな美味しそうなところを見逃すわけにはいかない。

はやる心をいつものようになだめながら、急いで丘を駆け下りる。

近くまで行って見ると思いのほか大きい造成地だった。幅は1キロ近く、奥行きも水きわまで500メートルはありそうだ。そのまま直角に海まで一目散にアクセルを踏む。 だだっ広い埋め立てのど真ん中を猛然と砂埃を上げながらフルスロットルで進む。

なぜこんなに急ぐのか。笑いながら意味の無い自問自答をするまもなく水際へ到着。 水際は普通にコンクリートとアスファルトで護岸がしてあった。覗いてみると…。

しめた!あるじゃあないか、捨石!日本のようにみっちりと敷き詰めた捨石ではなく、結構あいまいにごろごろと積んである感じでコレがまたそそる。その捨石は1メートルほど冠水しており、2メートルほどの幅で敷設されて、 底へと落ち込んでいる。

ボトムは深くて透明度が高い割りに全く見えないが、藻が十分な密度でみっしりと生えている。水深は思ったとおり、海岸線より突き出た埋め立てならではで、十分ありそう な深い水色をしている。コレはもうロックフィッシュマニアには垂涎のシチュエーションである。

早速タックルを取り出す。 Gルーミスのミディアムハード6.8フィートのバスロッドに、12ポンドフロロライン。

リグは少し考えてから、底が完全なロックエリアと判断し、根掛りを考慮して ヘビーキャロライナリグにする事にした。ワームはMサイズグラブのプロブルーをチョイス。 北海道でアイナメ釣りに水爆的に効いたワームだ。当然オフセットで挑む。

とりあえず底の状態を把握しようとフルキャストする。シンカーが2分の1オンスなので到達は早かったが、10メートル以上ある感じだった。

リグが底を切るスピードで引いてみると案の定ところどころで岩にごつごつとコンタクトする。ムウっと言う感じで藻にも当たる。コレで釣れないわけが無い。とほくそえみながらブレイク肩付近をズリ上げていると、来た!いきなり来た!ゴンッ!と明確なバイトだ。

合わせる!グンッと命の躍動を伝えてルーミスがブチ曲がる。 ドラグがずるずると出て行く。ドラグを少し締めて対応する。

やった!この感触はキーパーだ!絶対そうだ!カッと頭に血が上り、体中の毛穴からアドレナリンが噴出するような妄想を得た。

奴もかなりの頑張りを見せる。 焦れるような2分ほどの攻防の末、観念して浮き始めた。もうこちらのものである。 グゥワバッっと水面で暴れ、もう一度潜ろうとするがロッドの反発で思うようには潜れず何度か最後の突込みを試みて浮いてきた。

浮かせたまま、一段低くなっている下の出っ張りへ飛び降り、何とか手が届い たのでそのままハンドランディングし、グローブをした手であごをつかんで、そのまま上へ放り上げる。

横たわった「奴」を観察してみる。キャリコバスだ。見事なプロポーションだった。サイズは50センチを少し切る辺りか。幅広の立派な体高と体の厚み、淡いオレンジ色の下地に茶色の斑紋。タフな白人女性を彷彿とさせる魚だ。

まさに「パシフィックベイビー」と呼ぶにふさわしい、明るく派手な印象の魚 だった。

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