〝スティル・スペシャル〟なロッド「アヴェルラ」ついに
マジックジャークの普及・発展と共により専門的なタックルを求める声が高まる中、ついにスティル(ミノーイング)スペシャルロッドがスミスから発売となった。
その名はトラウティンスピン・フィールドリームAVERLLA(アヴェルラ)。
今回は製品の開発を担当したスミスの礒野寛之さんに製品のコンセプトを聞いてみた。
スティル専用ロッドとして必要な要素とは?
出典:スミス公式
編集部:スティルに特化したロッド、それはつまりマジックジャークにスペシャルワンなロッドになることにもつながります。では、スティル(ミノーイング)スペシャルとしてロッドに求めた要素を教えて下さい。
礒野:まず、マジックジャークの基本は次の通りです。
ルアーをレンジに合わせて潜航させてからリーリングしつつジャークしてルアーを潜らせ、リーリング、ジャークを止め、ルアーを浮上させる。一連の動作の連続で魚を誘いルアーにHITさせる。ジャーク幅やリーリング距離や速度、浮かせスピードは魚の活性に合わせる。
上記の通り、魚の活性や、やる気に応じて誘いのリズムを変えていくのがこの釣りの大事な部分なのですが、その中でも「追い気の強い」または「興味を惹き立てるために機敏な誘いが必要」な場合は、短い距離でダイブ&フロートを繰り出せる“アクションレスポンスの良さ”が釣果を伸ばすために重要となってきます。
ジャーク時にはロッドが曲がるわけですが、今回のロッドは曲がりが瞬時に戻り切ってくれることを重要視しました。曲がりが残った状態では次のジャークを入れられない、その分誘いのリズムがスローになってしまうんです。もちろんキレのあるスピーディーな誘いを繰り返す場合には、ある程度の張りと硬さが必要なんです。
編集部:マイクロスプーンや小型クランクベイトを使うような一般的なエリアトラウトロッドとはまるっきり違うんですね。
礒野:曲がりが大きなロッドでマジックジャークをしようとすると、どうしてもスピード感を活かし切れなかったり、そこで無理に動かしてもラインスラックが出やすくなり、ミノーが真っ直ぐに潜航せず横に飛びやすくなってしまうんです。
5ft4inというレングス、その意味
編集部:5ft4inという長さは短いようにも思うのですが?
礒野:今回このロッドに求めたのは「魚の群れ(集合体)はもちろん、一匹一匹と対話をしながら誘いのリズムをアジャストしていきやすいものである事」なんです。例えば、ある1尾がミノーに興味を持ち、フックを咥えようとする。しかしその直前に逃がしてあげる事で魚はムキになってさらに追いかけてくる。そんな光景を見て周りの魚も関心を持ち始める…最終的には釣りやすい魚をしっかり目の前で育てることができるんですよ。それは釣り場の特性にもよるのですけれど。
そうなると遠方に探りを入れながらも、群れから抜けた段階(視界的にも良好となるタイミング)で一気に仕掛けに行くことはとても大切な要素となってきます。目の前まで追ってきて、そこから追わせきれずにルアーをゆっくり見せがちな距離でも複数回逃がしのアクションを入れていく。そして最後の浮上時で食わせる…フッキングする余裕がなくなる距離感でもカウンターで掛けやすい。そんな釣り方が必要で、それをしっかりサポートしてくれるロッドが欲しかったんです。
また、この釣りではロッドティップを水中に入れる事が多いんです。なぜなら、ティップから出たラインを水中につけたいから。水の中にあるラインはテンションをキープしやすく、水中でのラインメンディングもしやすくなります。よって、安定した操作へと繋げやすくなるんです。ラインテンションを張っておきやすくすることで、ルアー操作だけでなく、アタリもしっかりロッドへと伝えてくれるようになります。弛ませた状態でどんなにラインを揺らされても、ロッドにその衝撃が伝わるようにしないとフッキングへと繋がらないですからね。
だから、腕を伸ばせばロッドティップを水中に入れられる長さまで考えて、5ft4inという長さにしました。因みに渓流用のロッドと比べた場合は、グリップを長くしているので、有効長に関してはさらに短く感じる筈ですよ。
アヴェルラのベースとなったのはバスロッド!
編集部:元々、マジックジャークではどのようなロッドが多用されていたのでしょうか?
礒野:スミスのフィールドテスターの人達の間でも、マジックジャークに関してはエリアトラウトロッドではなくネイティブトラウト用の張りの強い機種をチョイスされる人が多かったですね。具体的に記すと、ヘビーシンキングミノーのトゥイッチングに特化した「トラウティンスピン ラグレスボロン」の49~59辺りを使う人が多かったです。
編集部:礒野さんもラグレスボロンを使っていたんですか?
礒野:もちろんラグレスも使っていましたが、他にも愛用していたロッドがあります。実は「ザ・ストラテジーツアラーSTS-HM63SS」というバスロッドを5ft台に改造したものなんです。元々これは故・本山博之さんが生み出したバスロッドで、細PEの使用を前提としたシャッドテールや虫系ワーム用のモデルでした。バスでもトラウトでも、魚がルアーを咥えればカウンターで掛かってしまいやすい、そんな特徴もありました。このロッドの強さと張りというのがまさしくマジックジャークにもピッタリだったというわけです。
その後アヴェルラの開発に着手することになりましたが、ベースとなったのはまさしくこのSTS-HM63SS。アヴェルラはエリアトラウトロッドを派生させたものというより、バスロッドから進化させたエリアトラウトロッドといえるでしょうね。
オールラウンダーではない、だからこそ唯一無二
今回は、礒野寛之さんに貴重なお話を聞くことができた。
アヴェルラの現物を手にしてみると、これまでのエリアトラウトロッドと較べて硬く(ミディアムライト)、張りが強いことに驚く人も多いことだろう。決してオールラウンドに使える機種というわけではないが、専用モデルならではのアドバンテージは計り知れない。
いよいよ本格的なシーズンに突入したエリアトラウト、このシーズンはマジックジャークを新たな武器として取り入れてみてはいかがだろう。
トラウティンスピンフィールドリームAVERLLA FLA-T54ML ”STILL” | |||||||
全長 | 自重 | 適合ルアー | 適合ライン | パワー | アクション | 仕舞寸法 | 標準小売価格 |
5’4” | 49g | 1~5g | エステル0.3~0.4号、PE0.2~0.4号 | ミディアムライト | レギュラーファースト | 95.5cm(変則2pcs) | ¥57,000+税 |
スミス公式「フィールドリームアヴェルラ」詳細ページはこちら