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【レオン北米釣り紀行/1996年〜1999年カリフォルニア】Vol1:そして旅人はサンディエゴで逮捕された

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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What’s happend!

多少急ぎ足でポイントへ戻り、再度キャストする。

すると間髪いれずにヒット!どうやら浮いているようだ。先程より小型だ。リリースする…。そしてこの後も次から次にヒットする。ほとんどが30cm前後!おもしろくって仕方が無い。夢中になってその一帯を2時間ほど釣り、何匹釣ったのかも覚えていないほど興奮して釣りまくったが、全て同じ魚種だった。

さすがに満足して次なる場所を開拓する為に移動を懸ける。今度は湾の入り口付近を攻めてみたくなった。

「フラットフィッシュ(ヒラメ)のキープサイズが出るかもしれない」と期待を掛込めて、入江の外側を車で探索していると小さな川の流れ込みがある場所が見つかった。

ここだ、ここ!こう言うところはベイトが群れる。ソレを狙ってイーターも来るはず!と読んでルーミスのベイトタックルにビーフリーズを結びキャストを開始する。

20分ほど一帯を探るが音なし。また車で移動を掛ける。

程なくして今度は外海と半ば隔離されているようなプール状の入江にぶつかった。

外海との境目の細くくびれたところへ橋が架かっている。上から覗くと案の定、潮が出たり入ったりしていて、水深もそこそこにある。早速降りて見ると先客がいた。白人がハードルアーをキャストしている。

なるほど!睨んだとおりココは何か大物が釣れるな!?と、ほくそえんでタックルを提げて、まずは情報収集とばかりに彼へ近づき戦況を聞く。

「どう?」

と問うと、肩をすくめて

「ノー!ノーフィッシュ」

と言う。狙いを聞くとやはりヒラメ狙いだった。彼は「ハリバット」と呼んでいたが…。

多分、アラスカ辺りのハリバット(オヒョウ)とは違う「日本のヒラメ」に近い種類と思われるが、彼らの魚種名はいいかげんで、ロックフィッシュはどれでも「コッド」と言うし、平たければ何でもハリバットと呼んでいるのだろう。

事のついでに先ほど俺が釣った魚を説明し、魚種を問うと、即座に「それはキャリコバスだ」と言う答えが帰ってきた。レギュレーションを聞くとやはり50cmくらいが制限だった。「30cmくらいのをさっき死なせちまったので、クーラーへキープしてある」と言うと、「見つかったら面倒だから車から出すな」と親切に教えてくれ、色々とポイントも教えてくれた。

彼がキャストしている場所は小場所で、二人は無理だからもっと先に大場所があるのでソコでやるように指示され、郷に入らばと言う事でその場所へ向かう。

悲劇はココで起こった…

素晴らしいロケーションのいかにもヒラメポイントと呼べるようなところだった。

今日は結構満足した事だし、この場所でとことん大物を粘ってみる事にし、20ポンドラインを巻いてあるリールに取り替えて再開した。ところが十数投もした頃、沖合いから一艇のボートが近づいてくるのが見え、俺はなんで?といぶかしんだ。なぜなら桟橋も何も無い場所で、船が来る理由が見当たらないからだ。

ボートは真っ直ぐ近づいてきて目の前までくると操船していた人物が立ち上がり、「ライセンスは持っているか?」と詰問してきた。

当然、全カリフォルニア州の海水淡水全域で通用する、1年間のライセンスを購入していたので、「あるぜ!」と答えると「見せろ!」と言うから首にぶら下げたライセンスを掲げると、彼は「チョッと待て!」と私に指示し、船を安全なサーフ側にのし上げてこちらへ向かって来る。

なんとチエックが厳しいなと待っていると、近くで見るその人物は明らかな警官の制服(San DiegoPOLICE)を着用していた…。

ライセンスを首から外し彼に手渡す。彼は俺がどこに住んでいるかを問う。住所やアパートメントを告げる。

すると「旅行者なのか?」と聞く。いいや、仕事できているんだと答えると、パスポートを見せろと言う。

素直にパスポートを見せると「住所は日本だろう?」と聞く。当然そうだよと言うと「このライセンスは使えない」と言い始めた。

なぜ?と聞くとライセンスの一部分を指差し「resident 」と書いてある部分を示す。英語が苦手なさすがの俺でも「レジデント」が居住に関する単語だと言うのはわかるが、ソレの何がいけないのかが理解ができなかった。

早口で何かを言い始めたが、俺にはかなり難しい英語でよく聞き取れない。

時折「フェイク」と言う言葉が聞き取れ、あわてて「いや、偽物じゃあないよ!ちゃんとロスのキングピアと言う桟橋にある、フィッシングセンターで購入したのだから!」と説明するが、いいや、コレは偽物だといって聞いてくれず、違反だから!と言ってなにやら反則切符のようなものを取り出して書き始める。

俺の英語力じゃあ埒があかないので、現地のスタッフに助けを求めるべく携帯電話であちこち電話するが、こう言うときに限って誰も出てくれない…。

警官はさっさとチケットを切り終え、説明を始める。必死に聞いていると「裁判するから来週サンディエゴの裁判所へ出頭するように」と冷たく言い放つではないか!ガ~ン!などというものではない!頭はほぼ真っ白である。訳がわからない。

警官はフィッシングライセンスを没収し、俺の写真を撮り、パスポートナンバーを控え、身分証明書(運転免許証)も控え、ついでに「何か釣れたか?」と聞く。

ココは即座に「釣ろうと思ってたところへあんたが来たのだから釣れる訳が無い」と答えたが、先ほどたくさん釣れたキャリコバスを全部入れたクーラーボックスなぞ傍においていたら、いったいどうなっていたのだろうか。不覚にも死なせてしまったキャリコバス一匹を除いて全てリリースしておいて良かったし、締めた一匹をクーラーの飲み物の下へ入れておいた事が功を奏した。

なぜなら彼は「車を見せろ!」と車までついて来て車内を色々とチェックし、助手席においてあるクーラーの中まで覗いたからだ。

幸いなことに警官は飲み物の下まではチェックしなかった。魚種レギュレーションの確認もせずにキープするとは、我ながら愚かな所行で冷や汗ものだったが、幸いなことになんとか救われた…。

もう釣りどころではない。トーランスへすっ飛んで帰り、現地スタッフ(わが社の秘書)の家へ駆け込み、一部始終を告げる。秘書氏はサンディエゴの管轄署へすぐ電話をし、件の警官へたどり着き、電話にて説明を求めてくれた。

内容はこうだった…。

まず、警官は俺をメキシカンだと思ったらしい。メキシカンはよくノーライセンスで密漁をするのだそうな。そして偽物ライセンスも横行するのだそうな。

考えてみれば俺は釣り焼けで手も顔も真っ黒な上に元々バタ臭い顔をしているし、おまけに日焼け防止用に土産物屋で買ったストローハット(現地風)をかぶっていて、どう見ても普通の日本人には見えない…。

さらに問題は、フィッシングライセンスには「居住者Resident」と「非居住者UnResident」の2種類があり、俺が持っていたのは居住者用のライセンスだった。つまり旅行や商用で来ている程度では当然「非居住者」になる。どこかで間違っている…。

「パスポートで日本人と解り、運転免許証も本物だったが、やはりなにやら怪しい。」

…と。

ひどい話である。 ライセンスを購入する際に語学力不足で間違って購入していたのだ。ショップの若者に「俺の現住所は広島だ。知ってる?ほらアトミックボンブ!原爆!HIROSHIMA!」とまで話して説明したのに…、あの小僧め!(笑)

結局、その日の内に正規のライセンスを再購入し、コピーをファックスする事で裁判所へ行くこと無く決着したのだが、秘書の話によると、コレくらいで勘弁してもらえたのは不幸中の幸いだったそうな…。

朝早く出掛けたのと陽が長いせいで、警官に呼び止められたのはまだ午前中であったし、一件落着した時間はまだ日暮れ前だった。太平洋が一望できる「パロスバーデス」という小高い丘にある閑静な住宅地にある秘書の家で、コーヒーをよばれながらホッと一息ついて空を見上げると、何時の間にかすっかり晴れ渡っていつものカリフォルニアンブルーに戻っている。

ばかばかしいくらい、広くてすっきりと冴えた空である。

太平洋にもうすぐ沈むであろう太陽が空を焦がして水平線近くを茜色にしている。一方の空の端は訪れる夜を反映させて濃紺になりかけ、見事なグラディエーションを見せていた。

明日は日曜日だ。くじけてなるか。またあの場所へ行ってやる。

~第二話へ続く~

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