今江克隆のルアーニュースクラブR「廃盤ルアーの活躍とZONEへのトリガー〜バサーオールスタークラシック2023参戦レポート〜」の巻 第1168回
バサーオールスタークラシック初日
そして、バサーオールスタークラシック初日。
今試合は勝てる可能性が十分あったにもかかわらず、朝からそれをブチ壊してしまったのは自分自身だった。
北浦随一のビッグフィッシュエリアの山田ワンドをメインエリアに選び、スタートと同時に40分の全開走行で一番乗りを果たしたが…。
自信があったからこそ、そして釣り方も魅力抜群だったこと、さらには今回も盛り上げようとの想いが先走り過ぎ、その力(りき)みからミスキャスト連発…。
ライブ中継で多くのファンに見られていると思うと、なおさらに力んでしまい、柄にもなくマジでテンパってしまい完全自爆。
素人以下のドヘボピッチングでほぼ全ての期待スポットを自分でつぶしていく最低最悪の展開から全く立ち直れなかった。
寒い夜明けに40分のロングランをして、ガチガチに体が冷え切っていた状態でいきなベストスポットに臨んだこと、前日にリールのグリス抜きと低フリクションオイルを注入しメンテしたことで、練習時のフィーリングより立ち上がりが鋭くなりすぎ「手前落ち」を多発させてしまったのも原因だった。
おそらく初日の中継では視聴者も、記者すらも「今江ってかなりキャスト下手だね…」と間違いなく思われただろう。
だが、最後の最後に絶対にノーフィッシュだけはしたくないという想いが帰着寸前ラスト15分、この日はじめて超本気モードを発動させた。
初日、自分がパーフェクトな集中力を発揮できた理由は、この土壇場ラスト15分に集約されていたと思う。
もう絶対絶命という窮地にとことん追い込まれてはじめて、オブザーバーが驚嘆するほどの無音神キャストが連発した。
そして後に値千金となる570gを守護神「リグラー5.5インチ」でキャッチ、連続でキロフィッシュと思われるバスを掛け逃したが、結果、そのバスは2日目ラストに「ブシドー4インチ」で完璧に獲り返す布石となった。
ZONEに入るトリガー
自分は、近年のTOP50でもラスト15分で九死に一生を得るビッグフィッシュを仕留めることが、プレス同船で驚くほど多い。
これは良くも悪くとことん追い詰められなければ真の集中力、ZONE状態に入れないのだろう。
若かりし最強時代には、このZONE状態を意識的に数時間以上持続できた気がする。
自ら意識的にZONEに入ることができなくなった今、本当の絶望という恐怖と引き換えにしか、そのトリガーを引けなくなったのだ。
自分が昔の圧倒的強さを取り戻すには、自分自身を強制的に最初から絶体絶命の窮地に追い込む逃れようのないメンタルプレッシャーこそが、一番必要なのだろう。
2日目
だが、あとがなくなった2日目、自分のとった行動は、それとは真逆だった。
「リグラー」を朝一から初日ラストの場所で使い、リスクの少ない北利根川を地味に釣り込むという情けない「とりあえず恥をかかないノーフィッシュ逃れ」だった。
そして、ノーバイトノーフィッシュのまま残り2時間、帰着時間を考えれば残り1時間15分程度になった時、「ホンマに俺は情けない…」、「最悪にカッコ悪い…」という耐えられない自責の念が津波のように襲ってきた。
そして、この感情が逃げようのない本物の恐怖となった時、はじめてまた超集中ZONEへのトリガーが引かれた。
「ブシドー4インチ」&「ブシドー3インチ」のスタビルリグが、自分の今回の最強の武器であることを信じ、最高最強の超集中力で攻めたラスト1時間半は、間違いなく最強時代の自分のそれだったと思う。
その1時間半の詳細、釣り方はバサーにて間近でそれを見たプレスアングラーの生の言葉で紹介されると思うので、何が起こったのかは来月のバサー誌を読んでみてほしい。
ただ一つ、間違いなくいえることは、オールスター戦の大観衆、何万というSNS視聴者の前で、過去にしのぎを削った最強ライバルたちの前で、今もTOP50現役プロの自分が情けない姿を、ファンの期待を裏切る姿を晒したくないと心底思う恐怖心こそが、神懸った土壇場の超集中力を取り戻させる最強トリガーになっているという事実だ。
Fortune favors the bold.
若かりし頃、「トーナメントで負けたら俺の人生終り」と毎試合本気で思っていた頃の恐怖心を思い出させてくれた「BasserAllstarClassic2023」。
自分にはまだ「火事場の馬鹿力」は間違いなく残っていた。
テクニックをはるかに超えるメンタルコントロール、その力を意識的に長時間発動することができるか否かが、今の自分の最大の課題だと分かった。
来期TOP50最多勝更新とAOYに向けて、そしてオールスター3度目の載冠に向けて、「Fortune favors the bold.」この言葉を胸に刻んで、その課題に今冬から挑戦していきたい。