名作ミノー「パニッシュ」
ルアーフィッシング歴の長いベテランアングラーならば「パニッシュ」というミノープラグをご存知の人が多いだろう。1994年に発売されたロングセラーのトラウト用ミノーである。
当時はまだリアルカラーを施したABS製の量産ミノーというのは希少であり、さらに重心移動を搭載したものは数少なかった。当然の結果としてパニッシュは当時爆発的なセールスを記録する。トラウトアングラーからはもちろんのこと、バスアングラー、そしてシーバスアングラーからも高い支持を得ることとなった。
なぜSW仕様のパニッシュが今!?
パニッシュの発売から30年近くが経とうという今年、コンセプトも新たにソルトウォーター専用のパニッシュが発売された。何故今パニッシュのソルト版なのか?
新たに登場したパニッシュ120F-SW。今回はその開発担当者であるスミスの小笠原健太さんにそのコンセプトを詳しく聞いてみた。
小笠原健太(ちゅにてぃー) プロフィール
ソルト版のパニッシュが生まれた背景とは?
編集部:パニッシュはかなり昔から販売されている製品だと思うのですが、どうして今になって120mmのサイズアップ版が、それもソルトウォーター用モデルとして開発されることになったのでしょうか?
小笠原:まずですね、自分は1993年生まれなんです。なのでパニッシュとは1つしか年齢の違わない同世代なんです(笑)。パニッシュが発売された時にはまだ自分は0~1歳の赤ちゃんだったわけですから、当時のコンセプトというのを自分が直接知っているわけではないんです。
でも、昔から個人的にパニッシュは好きでエリアトラウトをメインに現在でもよく使っております! ニジマス以外のいわゆる「イロモノ狙い」の際にはパニッシュ独特のローリングの強い泳ぎも、トゥイッチさせた時の左右への飛び方も他のミノーにはあまりないものなので気に入っていました。
1990年代の話については社歴の長い先輩社員から聞くしかなかったんですが、パニッシュが発売されてから3年後に「サラナ」が発売されました。
元々パニッシュを使ってシーバスを釣っていた人がいたことから製品化されたもので、パニッシュのソルト版として進化させたものがサラナだと言って差し支えありません。確かにサラナはパニッシュのスイムアクションを継承しつつルアー自体のサイズアップを図ったものだと言えるんです。
パニッシュのジャーク性能に注目
小笠原:自分がパニッシュを使っていて感じるのはトゥイッチやジャークした時の独特の動きが他にはないもので、しかもそれが非常に効果があるということでした。
具体的に言うと、パニッシュをジャークさせると左右へのキレイなダートアクションをするのはもちろんなのですが、時折上下方向に抜けるような動きをするんです。この動きはオリジナルのトラウト用のモデルも同じで、重心移動のウエイトの遊びをわざと大きくしてダートアクション中にわざとバランスが崩れるようにしています。このアクションは軽くトゥイッチするだけでも上下左右に機敏にダートしてくれる。
この不規則なダートアクションがパニッシュの名前の由来にもなるのですが、Panicky&Shakyという動きの特徴を略したものなんです。ジャークをかけた時の動きというのが、まさにパニック状態のベイトフィッシュのように見えるという事です。
この動きは間違いなくシーバスや青物にも効くので、サイズアップを図ったソルトウォーターモデルとしてぜひ実現したいと思う部分でした。サラナがパニッシュの(タダ巻き時の)スイムアクションを重視して生まれたモデルとすれば、パニッシュ120F-SWはパニッシュのジャーク時の性能を重視したモデルと言っていいかもしれません。
実際のパニッシュ120F-SWのアクションは動画で確認してみて下さい!
基本性能もブラッシュアップ
編集部:なるほど、ジャーク時のアクションを重視してサイズアップモデルを開発したということなんですね。
小笠原:とはいえ30年近く前の製品ですからパニッシュ自体のルアー設計というのは現代に比べれば古いものです。例えば重心移動機構などは現在ではかなり進化している。パニッシュ120F-SWではタングステンウエイトの重心移動を採用したりして、現代のソルトウォーターミノーとして性能面で劣ることがないものを実現させています。
世の中の12cmミノーの中で一番飛ぶ!とまではいきませんけど、12cmのミノーの割りにイマイチ飛ばないなぁなんてことはないです。向かい風でも気持ちよく飛んで行ってくれますよ。
使用が想定されるシチュエーション
編集部:製品コンセプトはわかりました。実際にはシーバス用のミノーと考えていいですか?
小笠原:当初から想定していたのはシーバス(マルスズキ、ヒラスズキ)、青物、サワラ、ヒラメなどです。特定の魚種向けに特化させたものとはしていません。シチュエーションも磯、オフショア、サーフ、港湾部と幅広く使えることを念頭に置いています。
実際に製品サンプルは全国の複数名のテスターの方にお渡しして各々使ってみてもらいました。結果はすぐに出て、幅広い魚種、幅広いシチュエーションで有効なミノーだということが実証できました。特に磯からのヒラスズキでは好釣果が多く、とても扱いやすいとの報告を受けています。
幅広いシチュエーションをカバーすることもあって最大潜行深度はおおよそ100cmとしています。なのでシャローランナーが丁度いいような水深の浅い干潟や河口部などには向いていないです。その代わり足場の高い磯場や港湾部では足元までしっかり攻めやすく、お勧めできます。
新旧織り交ぜ?!のカラーラインナップ
編集部:カラーは全部で8色をラインナップされていますね。
小笠原:作りたいカラーはもっと多かったのですがとりあえず初回は8色でスタートさせます。後々、カラーラインナップはもっと充実させていこうと思ってます。
特にシーバスの市場を考えると、今はチャートリュース系が大人気なのでこれは絶対に外せないところですし、ベーシックな定番カラーも無いとあれこれ言われます(笑)。レッドヘッドは近年はラインナップするメーカーが少ないカラーなのですが、ベテランシーバサーの人達から要望があって組み入れたものです。「昔のレッドヘッドが良かったんだよ」なんて声もあったので、あえてシンプルなパールホワイトベースのレッドヘッドにしてみました。
ベテランアングラーにはどこか懐かしさを覚えてしまうパニッシュ120F-SWであるが、最新の設計が施されており性能面では最前線のソルトシーンに対応できるものとなっている。
このルアーを試投したベテランアングラーは1投した瞬間に「これがパニッシュ!?(こんなに飛ぶ?)」と思ったそうだが、リトリーブ&ジャークをした瞬間に「確かにパニッシュだ!」と感じられたのだそう。
そして小笠原さん曰く、パニッシュを知らない若い世代のアングラーにこそこの製品を使ってみて欲しいとのこと。パニッシュ独特のパニックダートアクションは知らない人が使ったらきっとびっくりしますよ、とのことだった。
温故知新、伝統と革新、そんな言葉が浮かぶ新たなパニッシュ。ぜひフィールドでいかなるものが感じて頂きたい。
パニッシュ120F-SW | ||||
サイズ | ウエイト | タイプ | 潜行レンジ | 標準小売価格 |
120mm | 20.5g | フローティング | 約100cm | ¥2,200+税 |
スミス公式「パニッシュ120F-SW」詳細ページはこちら