辻本ナツ雄さんプロデュースのハタ専用ワーム「グルーパーバグ」がスミスから発売となり、ルアーニュースRでも3回にわたりその詳細な説明を紹介してきた。
辻本 ナツ雄(Natsuo Tsujimoto) プロフィール
今回はその番外編。
グルーパーゲームのパイオニアである辻本さんがこれまでどんなワームを偏愛してきたのか?
その歴史を振り返ってみたい。改めてそれを知ることで、なぜグルーパーバグが生まれたのかも深く理解できるのではないだろうか。
なお、ここで紹介するワームに関しては既に廃盤品となっていて入手が困難な物もある点をご了承いただきたい。
辻本さんのグルーパー用ワーム遍歴
まだハタ釣りがここまで盛んでなかった時代にも、パイオニアの人達が試行錯誤を繰り返してきた時代がある。ここで、グルーパーゲームのパイオニアでもある辻本さんがこれまで愛用してきた歴代のグルーパー用ワームを振り返ってみよう。
以下は辻本さんから頂いたコメントとなる。
海外製品の流用時代
ボクは元々OFTさんにお世話になっていましたから、必然的にOFTさんで販売してきたワームでグルーパーゲームを楽しんできました。
OFTさんはプラドコやミスターツイスターといった海外製品の輸入販売を手掛けていましたから、最初はボクも海外製品の流用からスタートしました。もちろん当時はロックフィッシュ専用のワームなんて無くてバス用のワームを使っていたんですけど、その中にも結構良いと思えるものがあったんです。
YUM ウーリーホッグテール(廃盤品)
言うまでもなくアメリカ製のバス用ワームなのですが、深く高密度のリブがキジハタにもとても高い効果が得られるということを実感したワームでした。2インチと3インチの2サイズがあったんですが、ボクが使っていたのは3インチの方です。
ウーリーホッグはボクに初めての50upを釣らせてくれた思い入れのあるワームです。
そのバイトのほとんどが、ワームが海底に運ばれ、リブに付く気泡がアクション時に放出される、その瞬間バイトが起こる。
ウーリーホッグでないと味わう事のできないバイトパターンを知ったことで多くの大物と出会えました。
YUM ベビークローバグ(廃盤品)
ベビークローは瀬戸内でキジハタがまだまだ数が少なかった頃、某雑誌の企画で「年間アコウ(キジハタ)100本釣上げられるか?」に着手していた時、安定してバイトを取ることのできた信頼度の高いワームです。
その実績が教えてくれたことは、ボクが通うエリアの浅場に着岸した瀬戸内キジハタは甲殻類を偏食している事実でした。もちろん回遊ベイトがいる場合はそちらに意識が行くのですが、一旦回遊ベイトが姿を消すとお腹の中は甲殻類ばかりでした。
シルエットからバイトを量産するワケは偏食と言う事実に辿り着き、そのシーズンは企画が始まった春から晩秋にかけて多く見られました。
ミスターツイスター キラーシャッド(廃盤品)
これもアメリカ製のワームになるのですが、ロックフィッシュにとても良いと評判の高かったワームです。
当時はまだロックフィッシュと言えば東北方面がメジャーでしたが、キラーシャッドはソイ狙いでかなり人気が高かったワームです。ベイトフィッシュのシルエットとマッチしたんでしょうね。
OFTでオリジナルワームの開発がスタート!
海外製品については、せっかく日本でそれなりに認知されてきたにも関わらずいきなり廃盤になってしまうんです。
特注という形で生産してもらえないかと打診をしたら物凄い数を言われてしまって実現させることができませんでした。輸入代理店のOFTさんでもどうしようもできないことだったんです。
とはいえ、このままではボクが使うものが無くなってしまう。どうしたものかと困っていたんですが、OFTさんでオリジナルのワームを作ってもらえることになったんです。
この時に設計のベースとしたものは、あくまでこれまで自分が愛用してきたワームでした。部分的に改善したいという点を、この際だからと盛り込んでみたんです。
OFT ロッキンホッグ(廃盤品)
自分にとって欠かせなかったYUMのウーリーホッグテールが無くなってしまって、それをリファインするかたちで作ったのがこのロッキンホッグです。
リングリブボディがハタに有効だというのはウーリーホッグテールで確信していましたので、ロッキンホッグにもそれは採用して、アームやテールの形状は自分の使い方に合うように形状変更をしました。
特にリブは多くの気泡を海底に届けるために深く、薄くし、その数も数枚多くしました。また追加したのは、エビでよく見かける触覚とホッグアームはツメに見えるように切り込みを入れました。
狙いはポーズしている時、キジハタがロッキンホッグを何者なのか認識できるよう工夫しました。あのウーリーホッグがこうなればと言う思いで作り上げたワームはランカーキラーとして今でもボクの心の中で伝説となっています。
OFT スーパーベビークローバグ(廃盤品)
これもYUMのベビークローバグが無くなって困ってしまったので、OFTで作り直してもらうことにしたものです。
変更点は、本来のベビークローバグが持つ空洞より少し広くなるようにお願いをしました。そのおかげで着底時、海底でワームが立つ時間を稼ぐことができました。
また、アクションを加えるとより多くの気泡を放出することができ、そのお陰で集魚効果も上がりバイトも従来のベビークローバグより多く感じるようになりました。
特に感じたのはチューブ状になってるのでフッキング効率が良くバラシも少ない事です。
もう一つはスレを感じた時でもワームを加えている時間が長い事です。この現象で考えられる事は、ワームがキジハタの口内に入った時、気泡が少しでも放出されれば獲物を逃がすまいと言う本能が働き、しっかり口を締めて飲み込むタイミングを計る時間が与えられたからだとボクは考えています。
OFT キラーシャッドスリム(廃盤品)
甲殻類はハタ類が好んで食べるメインのタンパク源ですが、一旦回遊ベイトが彼らの住家に姿を見せるとハタ類だけでなく、周囲の魚の活性は一気にMAXに達します。その時に発揮してくれるのがシャッドワームです。
瀬戸内でもシャッドワームのスイミングは効果的で、特に活性の高い順に食ってくる習性があるのでシャッドワームは絶対に手放せません。
しかし、こんな時の回遊メインベイトはイワシやサヨリ。だからキラーシャッド形状だと、バイトを取ることが難しかったのです。そんな思いからスリム化を考えました。
また、蛇腹状のテールはスロースイミングでもしっかり水をかき回してくれるので低速でも確実に集魚効果を期待できます。
スミスへの移籍
これはボクにとっても非常にショックな出来事でしたが、2018年にOFTさんが事業を止めてしまった。
それに伴ってロッキンホッグやスーパーベビークローバグを始めとするOFTの製品も生産がそこで終わってしまいました。
それでも幸いだったのは、OFTさんで扱っていたPisizブランドやスクリューテールグラブなどをスミスさんで引き継いでもらえたこと。そしてボク自身もスミスさんでサポートしてもらえることになりました。
スミスさんではすでにロックフィッシュのブランド「オーシャンパフォーマー」を展開されていて、ボクもそのワームを分けてもらうことができたんです。
ヴィヴィッドライブ(廃盤品)
ボクがスミスのワームで一番初めに使わせてもらったのがコレです。泳ぎが強めのシャッドテールで、まさしくハタにドンピシャなんじゃないかと思いましたね。でもこれも廃盤になってしまいました。
根魚大将(ねざかなたいしょう)
バランスが良くまとまっていて物凄く考え込まれて作られているな~と、本当にそう思いました。このワームの中で、ブラウンシュリンプというカラーがあるんですが、半信半疑で使ってみたら本当に良く釣れる。それ以来このカラー、ボクの中では一軍なんですよ。
狂輪波(くるりんぱ)
狂輪波の中に、スキンピンクホロというクリアーに近い薄いピンク色があるんですよ。ボクはそれまで、こんな色はほとんど使ってこなかった。でも、騙されたと思って使ってみたらもうビックリですよ、しかもこれしか釣れない時があったりもしたんです。
艶魚(あでうお)
これはヴィヴィッドライブをロックフィッシュ用にアレンジした後継品らしいんですが、泳ぎやボリュームがヴィヴィッドライブよりもだいぶ弱いんです。だからボクは当初、ヴィヴィッドライブの方が良かったんじゃないかと感じていました。
でも実際に使い込んでみると、艶魚がドンピシャにハマる日が出て来るようになって、これは凄いと。キジハタには弱いテールの波動の方が効くと思えるようになったのも、艶魚の影響がありますね。
ボクはシマシマ君と呼んでいるんですが、艶魚の中にリュウグウハゼというカラーがあるんです。
東北方面にいる魚を模したカラーでもちろん瀬戸内にはいない魚なんですが、このシマシマ君がまた良く釣れるんです。ある時キジハタが吐き出した魚を見て納得しました。
グルーパーバグに繋がる布石
ボクはスミスに移籍した後は、あまり製品開発の要望というのは出さないようにしていたんですよ。
だってボクはスミスの中では新参者だと思っていましたから。そのまま数年経ったところで、スミスの担当者が「そろそろ辻本さんのオリジナルをやりませんか?」って言ってきてくれたんです。
その担当者はボクの事をメディアでよく見ていてくれたみたいで、これまで手掛けてきたOFTの製品の事も良く知っていました。その上でこう言われたんです。「何かをベースにして新しいものを考えるんじゃなくて、理想とするものをゼロから作っていって欲しい」って。それで考え抜いて作ったものが「グルーパーバグ」なんです。
• ウーリーホッグテールで学び、ロッキンホッグにも継承させたリングリブの重要性。
• スーパーベビークローバグで実証した、浮くワームの有効性。
• スミスのオーシャンパフォーマーから学んだ弱波動の効果と、これまで知らなかったカラーの有効性。
こうした要素をできる限り詰め込んで作ったのがグルーパーバグというわけなんです。
グルーパーバグはまさしく辻本ナツ雄さんの集大成とも言えるグルーパー専用ワームと言えるようだ。その実力がもう間もなく実感できることだろう。
グルーパーバグは辻本さんが手掛けるアイテムで構成される「SMOKY」というブランドでの展開になる。SMOKYもまたOFT時代から続くブランドだ。すでにSMOKYブランドでの新製品の開発も継続して進んでいるとのことで、今後はさらにグルーパーゲームやライトゲームで使えるアイテムが拡充してくるハズだ。
グルーパーバグのストーリーもチェック