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釣竿のルーツを考える

連載:トモ清水「ガッ釣りソルト」
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WEB連載:トモ清水のガッ釣りソルト第188回
『釣竿のルーツを考える』

トモ清水(Shimizu Tomo) プロフィール

20年以上ロッド開発者として釣り具業界に携わるスーパーマルチアングラー。ロッド開発を手掛けたブランドは、国内、海外、自社、OEM問わず、20社にも及ぶ。現場主義、実績主義をモットーに全国各地、世界各地、釣りに飛び回るガッつり系。常に自然と魚をリスペクトし、次世代の楽しいものづくりに挑戦し続け、世界トップクラスのロッド開発者を目指す。1977年9月生まれ。本名は清水智一(しみず・ともかず)

こんにちは、トモ清水です。春分の日も過ぎて桜も開花し、場所によっては満開になりましたね。原稿を書いている現在の気温も23°と初夏すら感じさせられる春日和が続いています。

前回の記事で「釣り」は脳科学にも良いと証明されている、と言いながらも自分自身が釣りが行けていません(泣)。
自身のブランド立ち上げなどで目が回るほど忙しく、字のごとく「心を亡くしている」状態。事も有ろうに1カ月も釣りに行っていない非常事態。

でもそんな中、原稿を書いている今日、14年ぶり3度目のWBC制覇、侍JAPANがやってくれました!
いやぁ~凄すぎましたね!

https://twitter.com/PrimeVideo_JP/status/1638372235827134464

日本中を震えあがらせる、感動と勇気、そしてパワーをもらいました!本当にありがとう、と心から言いたい。幾度つまずいても立ち上がる魂抱いた侍JAPAN。
日本に留まらず世界に感動を与えた侍JAPAN、スポーツが持つ素晴らしさをあらためて感じました。

そして選手を信じ続けた栗山英樹監督。我慢強い采配の賜物にリスペクトです。
選手一丸となる素晴らしい最強のチームにまとめあげてくれました。
残念ながら今大会で退任することが決まりましたが、本当にお疲れ様でした。

そして3月は別れと新たな出会いを迎える季節。息子の琉亜(るあ)と琉叶(るか)も卒業と卒園を迎え、いち父親としては、涙腺が崩壊している3月です(笑)。
実はそういった意味でも春は感情がすごく揺さぶられる季節なので、あまり好きではなかったりします(笑)

さて前置きが感情が入り過ぎて長くなってしまい申し訳ないのですが、釣りのお話に戻しまして今回は釣竿の歴史に触れてみたいと思います。

釣竿のルーツ(起源)

細分化された釣竿、数多くある中で皆さんはどうのようにして自分の「相棒」となる釣竿を選んでいるでしょうか?

リールと違って、単純な機械ものではなく、硬さ、テーパー、軽さ、感度、グリップ長さ、形状、デザイン、所有感、ブランド、挙げれば切りがないほど感覚的な要素も多く、「自分にしっくりくる」という理想的な1本を求め続けているのではないでしょうか!?

わたくしトモ清水、20年間のロッド開発という仕事の中で数えきれないほどのロッドを設計、デザインしてきましたが、極論を言えば「十人十色」、アングラー一人ひとりにマッチしたロッドが必要、だということを感じます。

「これだっ!」って思うロッドに出会えて、相棒のように長くずっと愛用し使い込めているアングラーは本当にラッキーだと思います。
またその時々で釣竿に求める要素も変わってきます。ターゲット魚種や釣り方が変われば、またシチュエーションが変われば、当然「これだっ」という求める要素は変わりますし違いますよね。
ですから釣具店に行っても林のように釣竿が並んでいるのです。

釣竿のルーツ(起源)を知ることや、使われている素材や製造方法の知識があれば選ぶ基準となり、また釣りがさらに楽しく奥が深まる可能性が高く、今回は簡単にその歴史や釣竿の知識に関する内容をお届けしたいと思います。

釣竿の歴史をみていきましょう

まず素材を知る上で、釣竿の歴史をみていきましょう。

1940年代後半、第二次世界大戦後すぐに米国シェイクスピア社が中空グラスファイバーのロッド製造を開始しました。ピュア・フィッシンググループが所有しているブランドであるあの「シェイクスピア」です。
そのグラスファイバーロッドの販売により世界中に広がります。
そしてそれ以上に現代につながる決定的な発明が起きます。

世界初の炭素繊維素材を使用したカーボンロッドと言われているのがオリムピック釣具(のちのマミヤ・オーピー)が発売した「世紀あゆ」という釣竿

現代のロッドの主流となる炭素繊維素材を使用したカーボンロッドが登場します。

以前この連載にも書きましたが、世界初と言われているのがオリムピック釣具(のちのマミヤ・オーピー)が発売した「世紀あゆ」という釣竿です。

当時、グラスファイバーより圧倒的に軽くて強いカーボンの登場によって釣竿の素材革命が起きました。

当時のロッド開発者は、このカーボン素材をどう料理しようか、とワクワクしながらロッドを設計したのが容易に想像がつきます。

1980年代以降は、釣竿以外にも、テニスラケットやロケット、航空機などに次々と炭素繊維素材が使用されることに!

その後、1980年代以降に釣竿以外にも、テニスラケットやロケット、航空機などに次々と炭素繊維素材が使用される率が高まっていきます。

炭素繊維は強度と弾性率が非常に高いので、宇宙産業など高い信頼性を求められる産業分野から、身近なものではレジャー用品やスポーツの分野で幅広く使用されるのは必然。

その炭素繊維は、原料によってPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維の2種類に分類されます。

詳細は今回省略させて頂きますが、単繊維で構成された繊維束を「フィラメント」と呼び、そのフィラメントの束を「トウ」と呼びます。

その束のトウがロッドに使用されており、低密度、高比強度、高比弾性率という素材特性が活かされています。

炭素繊維メーカーとしては、東レ株式会社、日機装株式会社、帝人株式会社、日本グラファイトファイバー株式会社、三菱ケミカル株式会社などがあります。

カーボン素材で知られている名前は、東レ社のT400やT800、三菱レイヨン社のHR-1000、Hexcel社のIM6などが長く存在しています。

私がロッド設計者として、東レ社のトレカ素材を多用しており、東レさんとは新素材のための共同研究も行ってます。
その東レのトレカ素材ですが、ここでちょっとその変遷をみていきましょう。

TORAYCA®(東レのトレカ)の変遷

高強度糸

T300(1970年代~):第1世代

T700S(1980年代~):第2世代

T800S(1990年代~):第2世代

T1000G(1980年代~):第2世代

T1100G(2010年代~現在):第3世代

 高弾性率糸

M40(1970年代~):第1世代

M40J(1980年代~):第2世代

M40X(2010年代~現在):第3世代

やはりカーボン繊維も糸から進化し続けていることがお分かりになると思います。

時代は第3世代に突入しています。

共同研究によって第4世代が将来生まれるのか、これは私自身もいち設計者として非常に興味があるところです。

和竿について

グラスファイバー素材による釣り竿が世に出る前は、日本の和竿が世界的に見てもトップクラスの技術で出来た釣竿だった

日本では江戸和竿と呼ばれるように、世界に誇れる竹材を利用した和竿文化が築かれました。江戸時代後期1783年に初代「泰地屋 東作(たいちや とうさく)」が上野広徳寺前に釣り竿店を開業したことに始まりだ、と言われています。

当時、隅田川と多摩川が流れ込むことにより、江戸前に豊かな漁場がつくられ、多種多様の魚種がいたそうです。春にはフナ、アオギス、初夏には鮎、チヌ、秋のボラ、ハゼ、そして冬にはタナゴと、江戸の釣り人にとって春夏秋冬、魚種ごとに異なる材質や手法で製造される江戸和竿は人気の的だったようです。

このように既に述べたグラスファイバー素材による釣り竿が世に出る前は、日本の和竿が世界的に見てもトップクラスの技術で出来た釣竿だったのです。

実際に日本の竹が世界で注目され、明治14年のパリ万博でエジソンがフィラメント素材に竹を使用したのは万国博覧会で竹に出会ったことがキッカケだそうです。

大正時代に入り、イギリスの釣竿メーカーのハーディー社が日本の竹に注目

その後、大正時代に入り、イギリスの釣竿メーカーのハーディー社が日本の竹に注目します。

ちなみにフライリール、フライロッドで名高いブランド、ハーディー社もピュア・フィッシング・グループが買収しグループの傘下に入っています。

日本人の竹竿のイメージは断面が丸いノベ竿をイメージしますが、ハーディー社は竹を六角形のブランクに加工し、ロッドとして釣竿を作っていきました。

起源を探ると、ルアーは欧米からきた釣り文化ですが、逆に日本から海外に輸出された技術、文化もあるところが非常に興味深いところですね~

まず現代の釣竿はどうやって製造される?

グラスファイバーやカーボンの釣り竿はどのように作られているのでしょうか。簡潔に説明していきます。

カーボン竿(カーボンロッド)は、素材の段階では、「プリプレグ」という接着剤(レジン)を貼った紙に炭素繊維の糸を引き揃えてシート状にしたものになっています。

この接着剤は熱硬化性(熱をかけると固まる)のため、シートは冷蔵庫(冷凍保存も)で保管されます。プリプレグを釣竿にするには、シートから紙をはがしてマンドレルと呼ばれる芯金に巻き付け、釜に入れて熱をかけると中の接着剤が硬化します。そこで釜から出して芯金を抜くと(脱芯)、釣り竿の元である素管(ブランクス)ができるという仕組みです。

 

ルアーロッドのルーツ(起源)

ルアーロッドのルーツを辿る上で欠かせないのが、プラグの起源。ルアーロッドは、そのプラグをキャストし、使うための道具ですから当然、関係は深いことが歴史が語っています。

そんなプラグの起源も色々と調べていると、偶然にもピュア・フィッシング・ジャパンから面白い、ワクワクするようなルアーが届きました。

そのルアーというのは「ハイローHi-Lo」です。
サイズはビッグサイズ。このサイズが面白いですよね。ウオペンと比べてもこの通り。
これでバスやシーバス、青物が釣れたら最高だろうなって♪

でもね、実は釣れなくてもいいんですよ。投げているだけで楽しいルアーってね、やはり存在すべきなんです。
使っているだけでワクワクします♪それでさらに釣れたら最高なんです!

ハイローHi-Loは不思議で魅力あるルアーなのですが、リップの角度で潜行深度が変わるという画期的なルアーでもあります。パイク用ルアーとして勧められていました。

このようにリップの角度で潜行深度が変わるという画期的なシステム

やはりアンバサダーのクラシックリールには、こういったビンテージルアーが良く似合います。

アブガルシアは、ABU社とガルシア社の合併以降、主力製品が北米で人気のバスフィッシングのための用品となっていきますが、歴史を紐解くと元々本国スウェーデンを含む北欧でのサーモンやトラウト、パイクなどに対する道具をメインに作られてきたことを知ることが出来ます。

そう考えていくとプラグやルアーの歴史も知ることで、ルアーロッドの起源を垣間見ることが出来ます。

北欧ではそのサーモンやパイクを釣るために、トローリングスタイルから始まっているわけですが、キャスティングロッドは10ftと長いものでした。
前々回くらいのこの連載で「リールの歴史」についてちょっと触れましたが、スピニングリールよりベイトキャスティングリールの方が歴史はかなり深く、ロッドもベイトキャスティングリールに合わせたものがルアーロッドの始まり、ということが言えるのです。

プラグの起源は、ジェームス・へドン氏が最初に作ったカエルをイメージしたプラグと言われています

プラグの起源は、ジェームス・へドン氏が最初に作ったカエルをイメージしたプラグと言われています。1897年頃、作り出されたプロト・モデルが5年後に発売されるへドン社の第1号ルアー「スロープノーズ」。

私は物心ついた時からキス釣りやイイダコ釣りに父親に連れていかれて釣りを覚え、小学生からブラックバスのルアー釣りを始めました。ようやく初の50cmアップを釣ったのは大学1年の時。その時使ったプラグがへドン社の「ノイジー」というトッププラグでした。

ジェームス・へドン氏の残したコメントにこうあります。
「ルアーの外見を現存する生物に似せることによって得るものはない」と。

リアルカラーや綺麗な塗装が施されているルアーももちろん素敵ですが、この言葉から分かるようにルアー釣りは本来、動きや音を活用してフィッシュイーターにストライクを促す「遊び」だということを忘れてはいけません。釣りの本質はまさに「遊び」なのですから。その遊びから始まって、それが重なり文化、カルチャーとなっていくのです。

夕方の薄暗い中で、「カシャカシャ」「ピタ」と、水面を音と泡を立てて動く「ノイジー」。
プラグを止め水面も静けさを取り戻す。そして、その静寂を破ったのが、自身初となる50cmオーバーのブラックバス。今でも鮮明に覚えています。

一度、自分のこぶしをバスの口の中に入れてみたかったんですよね!笑

話はそれましたが、ミノーやトップウォータープラグの登場で、短いベイトキャスティングロッドがアメリカ中西部で生み出されていくことに繋がっていきます。

10ftのロングレングスが主流のキャスティングロッドから、アメリカでは6ftのルアーロッドが大流行に。今のルアーロッドの原型となる長さ、硬さはすでに100年以上前に構築されていました。

まだ記憶に新しいアブガルシアの100周年記念のキーホルダーにも、ハイローとトビーがシンボルとして使われましたね

「私は発想にいきづまると、海辺や川に糸を垂れに行く。
波や風や光からアイデアが釣れるからだ。」
トーマス・エジソン、発明家の名言(1847-1931)

あの偉人エジソンも釣りに行ってリフレッシュしていたのですね。

本格的な釣りシーズン到来!
そろそろ私も糸を垂らしに行こう(笑)

栗山監督は言いました。子供達に野球の楽しさを伝えていきたい、と。
私も釣りの歴史や魅力を後世に伝えていきたい、とあらためて思うのでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

トモ清水でした!
See you next time!

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