歴史と進化と必然の産物
このルアーには、歴史も自負も確信も結果も、いずれもとても高濃度に存在するのです。ナッゾジグはその構造において唯一無二であり、かつさまざまなフィールドでとても良く釣れるルアーだと…。
そんなナッゾジグの基本型が完成した折に、かつてスプーンやスピナーを発明したアングラーがきっと感じたであろう興奮と歓喜に似た感情を、図らずも僕も味わえた気になったほどです。ありていに言えば、「やった!」と狂喜したほどでした。

レオン 加来 匠(Kaku Takumi) プロフィール
プロダクトの核心
以前、こちらの記事で、ありがたいことに僕がイチから携わって世に送り出した「メタルマル」をブレードジギングブームの祖であると取り上げて頂きましたが、実はこのメタルマル開発の根っこに厳然と存在したのは、あくまで偉大な先人マンズ社の「リトルジョージ」でした。
リトルジョージはまさしくスピンテールジグの始祖、元祖的ルアーであり、現在も世界中で使われている長寿メタルルアーです。もちろんさらに、リトルジョージ発案の原点にあったのは回転ブレードと針だけで作られた「スピナー」であった事は容易に想像が付きますし、近代のルアーという物はこういう歴史の積み重なりとアイデアの連鎖反応の中で進化してきたと言えます。
さて、ナッゾジグの話に戻ります。ナッゾジグは自身が手掛けたメタルマルとはまた違う構造と、さらに違う場面でも釣れるギミックを持った別ジャンルのジグルアーを作りたいとずっと思い続けていた企画でした。
そして、約5年近くの試行錯誤の上ようやく陽の目を浴びた作品となったのですが、長らく掛かった理由としては「スピンテールジグ」という固定観念の縛りからなかなか脱出できなかったから。つまり「回転ブレードを使ったジグ」では、結局リトルジョージやメタルマルをアレンジしただけの単なる猿真似に近いものであって、そこには本来のオリジナリティも無ければジャンルの枠を超えることすらできないという、プロダクターとしてのプライドや矜持の問題でした…。
そんな思いを抱え、作ってはボツを繰り返す中でまず閃いたのが、日本の伝統漁具であるユミヅノの形状と素晴らしい釣獲力です。ここにもニューコンセプトジグに繋がる何らかのヒントがありそうだと。で、さっそくINXラボのデザイナーにイメージを伝えて3D CAD図面を起こして貰ったのですが、彼とさらなる練り込みを繰り返す中で副産物的に産まれたのが「ブレードはあえて回転させない」という発想です。
これが実にハマりました。プロルアーデザイナーの手によって物理計算もされて練り込まれ、複雑にエッジの効いたボディデザインはそれ単体を巻くだけで、スプーンでもジグでもユミヅノですらも無い、つまりフロントアイを中心にして左右に振れるだけでは無く、まさしくウッド製ミノープラグ“チック”なウォブンロールアクションを産み出すジグとなったのです。
そしてさらに、そのテール部へウイローリーフブレードをスプリットリングであえて固定する(回転させない)事によって、ナッゾジグはまさしく「ミノージグ」となりました。リングで接続されて回転できないウイローリーフブレードは必然的に左右にウォブンロールするボディとは逆方向に振れ、その動きを俯瞰で見ると驚くことにまさしくクネクネと泳ぐジョイントミノーを彷彿とさせるアクションが完成したのでした。

平たく反った背中側で水を受け流してボディを左右に揺らし…

船底形状とエッジ角でウォブンロールアクションを産み出す
これが冒頭で述べた歓喜の瞬間でした。メタルジグの飛距離とフォールスピードと高速巻きが可能なところに加え、ミノープラグが持つ集魚力と喰わせ能力をも併せもったルアーが産まれた瞬間だったのです。