今江克隆のルアーニュースクラブR「『M40Xナノアロイ』をフル投入!最先端超高弾性高強度ロッド『ウォーガゼル』爆誕」の巻 第1124回
ようやくトーナメントがオフシーズンになって、年末までに山積した仕事の片付けに、すでに師走ムードの今日この頃。
今年はコロナ禍の影響もあって、世に出せた「カレイド」の新機種は「ジャイアントディアウルフ」の一機種だけ……。
バスロッド「カレイド」は、国産超高性能カーボンを可能な限りスパインフリーで製作するため国内生産にこだわっているが、ガイドやパーツ関連の入手が困難を極め、プロトタイプの完成はしているものの、製品化が著しく遅れてしまっている。
その影響で、このコロナ禍の3年間、今江的に最もロッド開発に注力してきた部分が「T1100Gナノアロイカーボン」を反発弾性力でゆうにしのぐ「トレカM40Xナノアロイカーボン」の適性の見極めと投入機種の選定である。
もはや高性能ハイエンドバスロッドの絶対定番になった高強度高弾性カーボン「T1100G」は、バス業界初投入以来「カレイド」シリーズのメインクロスとして熟成の域にある。
だが「T1100G」を弾性率ではるかにしのぐ「M40X」は、いわゆる「超高弾性」の部類に属する高性能カーボンの世界最先端素材だ。
かつて超高弾性カーボンは「カレイド」の前身である「テムジン」が、40トン、50トンといった超高弾性カーボンを時代に先駆けメインシャフトに投入し、「超軽量」、「圧倒的なキレ」、「超高感度」と評価される一方で、「硬い」、「もろい」、「折れやすい」、「使いにくい」と賛否両論の論戦を巻き起こした。
当時、超高弾性カーボンはブランクスの積層を分厚く重くすることなく、ごく軽量でも硬さと張り、腰の強さ、感度も出せるが、初~中級者には不向きで、使い手を選ぶとされたが、バスアングラーのレベルがここ十数年で劇的に上がったことで「超高弾性テムジン」の評価が再び高まってきたことは、紛れもない事実である。
「M40X」を投入すべきロッドは?
その十数年という時の流れの中で、従来の40トンカーボンは2度の大幅進化を果たし、約3年前、従来の40トンカーボンの弾性率を維持したまま、30%もの高強度を実現した「M40X」プロトタイプが登場した。
「T1100G(33トン)」ほどの圧倒的高強度には及ばないが、実質10数年前の30トンカーボンをはるかにしのぐ高強度と、「T1100G」をはるかに超える高弾性率(反発力と硬度)を実現した。
だが、では「M40X」を何にでも投入すれば優れたロッドができるか?といえば、それはNOである。
この最先端素材をどうバスロッドに活かせば、機能的にあきらかなメリットが出るか、それを検証するには、自分レベルの経験があってなお最低フルに1シーズン以上実戦やトーナメントをくぐらせなければ確信を持つことはできない。
「テムジン」時代からいっているが、超高弾性ほど「適材適所の見極め」が重要な素材はない。
ある意味「T1100G」より素材は高級だが、はるかに調理法が難しく、性急で下手な調理法は料理を不味くするだけなのが「M40X」、そして、登場がウワサされる「M55X」といった超高弾性カーボンなのだ。
現役最古のロッドが……
今江的にこの「M40X」のバスロッド投入を最初に考えたのが、やはり「テムジン」時代、超高弾性の40トンメインで50トンをスパイスに入れた「テムジンガゼル・グランドスラム」だ。
超軽量で極細身にもかかわらず、ティップセクションまで一貫したバリッとした張りを持ち、軽量ルアーから中量級ルアーまでを積極的に操作し、積極的に掛けていく釣りには絶対に不可欠なロッドだったからだ。
「テムジン・ガゼル・グランドスラム」は、発売すでに13年を超えるが、未だにTOP50最前線でやや強めのカバーでのベイトフィネス、7~10gのフットボールジグ、スラックを出しつつ積極的に動かしていくトップウォーターやサブサーフェイス系プラグに使っている現役最古のロッドでもあった。
ちなみに余談だが、「T1100G」を最初に投入しようと考えたのは、同じく「テムジン」史上最高に尖がった40トン&50トンの「エゴイスト70」であり、その結果生まれたのが、世界初のフル「T1100G」採用シャフト「グランドコブラ611」である。
「M40X」と「ガゼル」
結果的に今から3年前の2020年、この「M40X」の「ガゼル」への投入は完璧にハマった。
「テムジン」の「ガゼル」が、限界破断の怖さと背中合わせの不安を持っていたのに対し、「M40X」をバッドからティップまでメインシャフトにみっちり巻き込み、50トン(本音は「M55X」を投入したかったが……)をさらにバット補強に入れた肉厚極細の「ガゼル・プロト」は、驚異的な軽さと、見た目の細さからは想像もできないキレと圧倒的な操作スピード、タフさを発揮した。
最初は5gクラスの「スクリューネイル」を使ったかなり濃いめのカバーでのベイトフィネスや、かなりのフッキングパワーを必要とするオフセット式ベイトネコ(N・S・Sフック等)でテストを開始したが、このレンジではそこまで40トンの破断を心配するほどのことはなかった。
だが、この「M40X」が、その真価を鮮烈に発揮し始めたのがラットやフロッグ、無茶なカバーに3g程度のフィネスジグで吊るす等、オカッパリでの「PEラインベイトフィネス」に使ってみた時だった。
この「M40X」の真価を実戦で最も体感できたのが、まさにPEラインを使ったPEベイトフィネス、そして水面高速カバー攻めで、PEラインでの強烈なカウンターフルフッキングもものともしない強靭な「M40X」シャフトの強さと粘りを心底実感することになる。
正直なところ、40トン&50トンの細身ロッドで、PE1.5号~2号を使い、カバー越しにマウスやフロッグ、時には大型ペンシルベイトである「スラムドック」までを超高速操作し、カウンターフルフッキングするというムチャは当初はまず無理かな?と思っていたが、約2シーズン、1本の最終プロトをフルに実戦を潜らせてきて、全くの無傷で現在もなお現役投入できていることに驚きを隠せない。
3シーズンに渡るテストを経て
従来の40トン&50トンなら、PEラインで高速操作しながらのカウンターフルフッキングでは3分割に破断してもなんら不思議ではない。
ましてオカッパリからのPEでのビッグバスリフトなど、超高弾性では最も破損リスクの高いケースだ。
しかし「M40X」は、ボートはもちろん、オカッパリで無茶苦茶ともいえるほどハードに使ってなお、不安感を感じることはなかった。
このように「M40X」の実戦テスト期間は、異例の3年にも及んだ。
その理由は、40トンを超える「超高弾性」と呼ばれるカーボンは、メリットとデメリットのトレードオフが常識で、「T1100G」の33トンと40トンでは破断リスクの高さが、かなり違うからでもある。
補強程度、すなわちよくあるお飾り程度に「新素材M40Xを使っていますよ!」程度の採用であれば、別に何らテストなしで投入しても問題はないだろう。
ただ、それでは「M40X」の真価は絶対に体感はできないだろう。
「ガゼル」のプロトは、メインシャフトにバットからティップの先まで「M40X」を投入している。
それだけに「40トンでムチャしてホンマに大丈夫か?」という問いに確信持って答えるには、そして国産ロッドの矜持である20年使ってもヘタレないクオリティを検証するには、自分でも3シーズンの実戦経験が必要だった。
「ウォーガゼル63MHR」、2023早春リリース
当初、この「M40Xガゼル」は、「カレイド・インスピラーレ・ガゼル」で復活させる予定だったが、もはや草食動物で、ピューマやパンテラのエサになる脚だけ速い「ガゼル」というイメージはなく、時としてピューマやパンテラさえ喰ってしまう戦闘能力を持つガゼル、「WAR GAZELLE(ウォーガゼル63MHR)」として、2023年早春、「カレイド」新機種第一弾としてリリースが決まったことを、正式にここで公表しておこう。