イワシを食っているサワラを狙う
次にブレードジギングが成立する条件。
基本的にサワラは北海道の南部辺りから本州・四国・九州の沿岸、また朝鮮半島沿岸、東シナ海に及ぶ東アジア全域に広く分布する魚であり、生息している以上どこでも釣れる可能性がある魚。
そして、その生態は自然界に生息する獰猛なフィッシュイーターであり、生息する海域で比較的安全に、かつ効率よく口にできるベイトを主に口にしている。それは、タチウオパターンのジギングや様々なベイトパターンの釣りで青物に混ざって釣れたり、サワラの胃から出てくる様々なベイトを見ても明らかである。
そんな中で、サワラだけを選んで釣りやすい条件=ブレードジギングが成立し得る条件がある。それは「イワシに付いているサワラを狙う」こと。それも、10cm以下の小型のイワシに付いているサワラがブレードジギングでは一番狙いやすいと言う。
小野氏いわく「一般的なジギング船では、あまりブレードジギングでは釣れない」。
そこだけを切り取るとやや語弊はあるが、要はタチウオパターンやあまりに小さいマイクロベイトパターンなど小型のイワシ以外のベイトを食っている状況では、マッチザベイトの観点から考えても他の釣りが有利。魚は釣れるが、サワラだけを選ぶことは難しい。
小型のイワシに青物やサワラが付いて水中で追い込んでいる状況、そんな状況こそが「ブレードジギング」の特性を活かして、本来選んで釣ることが難しいサワラだけを選んで釣ることができると。
実際、岩国沖などのブレードジギングをメインにする遊漁船は、必ず魚探に出るイワシの反応を追う。それもサワラが付いているイワシの群れ特有の“上から下方向に押さえ込む”ようなイワシの反応を追う。目当ての反応が見つかるまで、数時間走ることもある。
本来選んで釣ることが難しいサワラだからこそ、サワラを選べる条件に当てはめて狙いに行く。それがブレードジギングの根本的な考え方といえる。
大阪湾でブレードジギングが成立する理由
前置きが長くなったが、ここからが本題。
なぜ大阪湾でブレードジギングが成立するのか。…それには水質が多いに関係していると小野氏は言う。
前述の通り、小型のイワシの群れが多いことがブレードジギングが成立する条件。その小型のイワシが多い海域とはどんな海域なのか。…ズバリ、小型のイワシのエサとなるプランクトンが豊富な海域。つまり抽象的な表現ではあるが、海に栄養がある海域こそがプランクトンを育み、それをエサとするイワシを育む。結果、ブレードジギングが成立する海域となる。
現在、ブレードジギングが盛んな海域を見ても、瀬戸内海の岩国沖や伊勢湾、東京湾など…いずれもプランクトンが豊富な海域であることは明白。
「牡蠣の養殖をしているような海ならブレードジギングが成立すると思いますよ」小野氏のその言葉の真意は、牡蠣の養殖に必要な栄養素が豊富な海域にはプランクトンが多く、それをエサにする小型のイワシが多い…そんな意味を含んでいる。
…で、大阪湾である。海の栄養素で言えば、淀川や大和川などの一級河川が流れ込む大阪湾は沿岸の富栄養化がこれまで問題になってきたほどで、エリアごとに見れば栄養価の多い少ないはあれど、相対的にブレードジギングが盛んな海域とも引けは取らないはず…と。実際、大阪湾にはイワシは多く、大阪湾で獲れたイワシは「金太郎イワシ」などと名付けられ、ブランド魚としてデパートなどに出回るほど。もちろんサワラに関してもオフショア・ショア問わずこれまでに実績は十分。
つまり、条件は整っており、その条件にさえ当てはめれば大阪湾でもブレードジギングは成立し、十分に楽しむことができる。それが小野氏の答え。
ゲームは成立する…が
大阪湾でもブレードジギングは成立する。それは、後述するが実際に取材を通してサワラを手にした姿を見ても明らかである。
ただし、ブレードジギングができる遊漁船がまだほとんどない…と小野氏は言う。実際、氏の大阪湾ブレードジギングの釣行は、これまでシーバス船をチャーターして船長に相談して開拓してきた。
一般的なジギングとは、そもそもの漁場が違うブレードジギング。
“早巻き”するだけで、サワラが選んで釣れる手軽さ、おもしろさ。そしてジグをはじめ、ロッドなど様々な専用タックルの登場…。その勢いはかつて、巻くだけで手軽にマダイが釣れる!と全国的に「タイラバ」が流行し出したときのそれを思わせると言う。
こんなにおもしろい釣りがいろんな地域でこんなに盛り上がってるんです。大阪湾でもできる…となれば、おもしろくないわけがないんですね。サワラが狙える条件は十分揃っていて実際に良いサワラが釣れていますし。今後もっと遊漁船が増えていけば、「大阪湾ブレードジギング」もっと盛り上がるんじゃないですかね。盛り上がるだけのおもしろさがこの釣りにはあるので。もっと手軽にみんなが楽しめるようになってほしいですね。
…そう語る、口調の力強さがとりわけ印象深かった。