今江克隆のルアーニュースクラブR「憧れのボートを試乗インプレ!伝統的アメリカンアルミバスボートの魅力に迫る!」の巻 第1114回
バストラッカーGRIZZLY(グリズリー)16.1フィート
琵琶湖に到着して最初に対面したのは16.1フィート50馬力の「GRIZZLY(グリズリー)」。
40年前とほとんど変わらない鏃(やじり)のような鋭いシルエットが、男心をくすぐるのは今も昔も変わらなかった。
だが、かなり驚いたのは、およそ16フィートとは思えない圧倒的な釣座の広さだ。
これホントに16フィート?と思うほど広い!3人乗りで釣りをしても全然苦にならないサイズ感だ。
この「グリズリー」の特徴は、不要な装飾を一切排除し、実に軽量で合理的な作りになっていること。
デッキは重量を増すカーペットを廃した全面滑り止め加工されており、雨が降っても滑ることはまずなさそうな独特の触感だ。
この特殊加工のおかげで想像以上のデッキの広さを確保している。
そして「バストラッカー」の特徴として、詳しくは理解していないが、リベットで複数のアルミ板を貼り合わせる従来のアルミボートではなく、アルミの一枚板を加工し、独特のフレーム溶接で仕上げていること。
まるでアメ車のように頑丈、堅牢な構造で作られているようだ。
ゆえに最初は「重そうだなぁ……」と思ったが、試乗しての印象は、50馬力を1人乗りで60km/h、2人乗りでも瞬時に立ち上がり55km/hに達した。
試乗艇は積載重量が少ないため、現実的には2人乗りタックル満載でMAX52〜53km/h程度だろう。
ちなみに自分が乗っている「イーグル155/60馬力」は2人乗り(パワーポール付)でMAX48km/hなので、50馬力でも相当早い方に入るボートだろう。
「グリズリー」の乗船インプレッション
乗り心地は、正直なところ、若干白波がたつ状態の琵琶湖では、喫水が浅く巨大なジョンボート構造の「グリズリー」は、波を切るというよりは叩くため、お世辞にも走破性が高いとはいえない。
霞ヶ浦本湖や琵琶湖南湖で乗るには風速3m以下の穏やかな日限定だろう。
だが、逆に琵琶湖ほど荒れない大型リザーバーやテトラや浅瀬が多いリバーバスフィッシングには陸上、湖上とも取り回しは軽快で、トレーラーでの運搬や駐艇も楽なので、快適な仕様といえるだろう。
バストラッカーCLASSIC(クラシック)16.8フィート
そして、もう一台試乗したのが「バストラッカーCLASSIC(クラシック)16.8ft 50馬力」。
まさに「クラシック」という名に相応しい、大昔から変わらない伝統のアメリカン仕様だ。
パッと見は「グリズリー」と長さも変わらないように見えるが、質の良いデッキカーペットが貼ってある分、いかにもアメリカンバスボート然としている。
だが、何よりの違いは「グリズリー」より前方に位置する運転席で、その7インチの違いが走破性にかなり大きな違いを生んでいた。
たまに波頭が白くなる程度のやや荒れ状態で南湖を走ってみたが、その走破性は「グリズリー」に比べると安定感、安心感は高い。
それでも琵琶湖の場合、風向きにもよるが風速4mを常時超える天候では出航を止めることが賢明だろう。
その点においては「クラシック16.8」も「グリズリー16.1」も、オーストラリア製の「ステーサー15フィート」や「ジャビル14フィート」も同じことである。
日本の釣り場に適しているのは?
今江的インプレで「クラシック」と「グリズリー」、ステーサー等の他社アルミボートを比較すると、最も日本のフィールド、スタイルに適しているのは「グリズリー16.1フィート」だと感じた。
その大きな理由は、まず16フィートなのに「牽引免許不要」であること。
清掃や維持管理が極めて楽で経年劣化しにくいデッキ仕様。
そして、何よりもアウトドア&レジャーとして、3人乗っても広々釣りができるデッキレイアウトが決め手だ。
ちなみに価格は、意外なことに「クラシック」(エレキ・エンジン・トレーラー・登録諸費用パッケージ)も「グリズリー」(エンジン・トレーラー・登録諸経費パッケージ)も、現在のレートで320~350万円と大きな差がない。
「ステーサー15フィート」50馬力より若干安いぐらいだろう。
ただ現在、世界的アルミ原料不足で生産輸入が全く見通せないオーストラリア製アルミバスボートに比べると、生産市場の大きいアメリカ製の「バストラッカー」は入手しやすい状況にある。
現在、大型バスボートが本当に必要な湖は、琵琶湖か霞ケ浦本湖に限られる。
今回、学生時代に憧れた「バストラッカー」との時代を超えた再会は、日本のバスフィッシングが日本独自のフィールド特性、地域性に適応した姿に戻ろうとしているような気さえ感じさせた。
今江的には「グリズリー」を1台、老後に備えて池原ダムに駐艇しておきたいなと、マジで思った今日この頃であります。