今江克隆のルアーニュースクラブR「奇跡の千鳥の復権!? TOP50北浦水系戦・惨敗の中の光〜チャターベイトと吉川永遠プロ〜」の巻 第1110回
衝撃の事実
自分が頭をトンカチで殴られたような衝撃を受けた事実、それは今試合、吉川プロは自分とほぼ同じ「モグチャ」ただ一本で全てのバスを連日釣り、経験の少ない広大な霞水系で地元プロと互角の展開で僅差の3位入賞という結果を残していたことだ。
コレこそが、自分が最も求めて止まない「ルアーの力の証明」だった。
そして自分の詰めの甘さを痛感させられたのが、吉川プロが使っていたのは同じ「モグチャ」でも、最もクセの強い「暴れ千鳥」で知られる「スピンモグラチャター3.5g」だったことだ。
数ある「モグチャ」の中から自分が選んだのは、真逆の最大サイズである「モグチャモンスター3/8oz」だった。
その理由は、広大な水系、数が激減しバスのサイズが大型化したことで、ビッグベイトに代わる集魚力にリアクションバイトを獲れるルアーとして「モグチャモンスター」を選んでいたのだ。
今回、偶然、エバーグリーンの「バスエネミースティック5インチ」がフックのデカい「モグチャモンスター」にベストマッチするトレーラーであることに練習中気付き、エバーグリーンから大量に送ってもらったのだが、奇しくも吉川プロも同じ「エネミースティック」の4インチだったという、まさに大型化するか、フィネス化するか、の差で紙一重の差が白と黒にでる結果になった。
最大最強のキモ
そしてココからは私の想像だが、吉川プロは「スピンモグチャ」の奇跡の暴れ千鳥を自分と同じイメージで使っていたのではないか……と思う。
一つは、その「モグチャ」&「エネミー」のシルエットが、今回の季節的メインベイトであるテナガエビにもイナッコにも見えること。
そして二つめが「千鳥るチャターを千鳥らせないギリギリの速度で使っていた」のではないか……と予想する。
この一見矛盾したかに思える一文に実は「モグラチャター」にしかないといえる最大最強のキモが凝縮されている。
不自然を自然に操れた時にこそ、奇跡は発生するものなのだ。
三つめがあるとしたら、今はまだいいたくはないが、ヒントは「目を使う」というところだろう。
ルアー開発の最終目標
この「モグチャ」の真のコンセプトを最初に理解してくれたのは、TOP50旧吉野川戦で、わずか1個の「神モグチャ」を見出し、優勝した福島健プロだと思っている。
彼が、その一個を橋ゲタに当てて壊した瞬間「もう終わった……」と思ったとコメントした時、変な話だがめちゃくちゃうれしい気持ちになった。
そして今回、吉川プロがキモにはコメントで触れてはいないが、サポートメーカーでもない「イマカツ」の、最もキモをはらみながら最も理解されなった不遇の「スピンモグチャ」一本で最難関の北浦水系で表彰台に立ち、それを隠さずコメントしてくれたことに感動した。
自分は、自分が日本最高峰のトーナメントに最後まで生き残るためのルアーを開発するために「イマカツ」を初めた。
そして、そのルアーの威力を自ら勝つことで証明し続けてきた長い歴史がある。
だが、キャリア38年を経て60歳目前となり、自分の力量に限界を感じることがここ数年はあまりにも多く、自分が開発してきたルアー達の本当の力を自力でトーナメントの舞台で証明できないことに大きな失望を感じている。
自分の力量低下は認めざるを得ないが、自分の力のなさで自分の子(ルアー)に力がないと思われることは、何より辛いものだ。
今回、吉川永遠プロの表彰台でのコメントは、紙一重の差で失意失望のドン底にいた自分を本当に救ってくれたコメントだった。
吉川プロが徹底して釣ることを突き詰め、辿りついた、すでに絶版の「スピンモグチャ3.5g」に対し、モグチャの伝説を今の時代に証明したいがゆえのプロモーション優先でルアーを大型化させてしまった自分。その拭いきれない「コマーシャルアングラー」、「経営者」としての「欲」には反省することばかりである。
これで吉川プロはイマカツルアーで2戦連続表彰台、あとで菊さん(菊元俊文氏)に怒られないか、かなり心配になったのが本音だが……笑。