このところ「編集部の小噺」なんて題して、以下のようなお話をお届けしています。
刺さってしまった針をどうするか。
恐怖のススメバチ対策。
釣り人に起こりうるど定番の危険「アニサキス」について。
いずれも普段の記事とはちょっと違う!? 箸休め的であり実用的な部分もある小噺。
裏テーマは「編集部員の九死に一生」ということでお届けしているものです。
取材、その時の九死に一生
さて、そんなわけでワタクシの九死に一生を。
ちょっと趣向を変えて、「痛い」とか「ツラい」ではないけれど、確かに「九死に一生」だった仕事上でのお話です。
ちなみに、これまでのような役立つ情報はありません。悪しからず(笑)。
編集部員の主な仕事のひとつに「取材」があります(当たり前ですが)。そこで起きた九死に一生。
おそらく7、8年近く前のできごと。イカメタルの取材をしたのです。
取材を「した」なんて、おこがましい。実は自分から行きたくて仕方なかった取材。
当時は「鉛スッテ」とか「ひとつスッテ」なんて呼んでいた気がしますが、関東在住の私にとっては、「西側」の釣りだったイカメタル。ところが徐々にその影響は東へ、情報を集めてみると、コレが実に楽しそう。
この釣りは関東でも火がつきそうだ、そう思って比較的関東近郊といえるフィールドで取材を企画したのです。そりゃあ行きたい取材なのは当然。
某・しゃちょ~に協力して頂いた!
ここで登場するのが、某・ジークラックの某・青木邦充さん(笑)。しゃちょ~さんなのです。
そんなこんなで企画を進めていく中で、青木さんが協力してくれると。めちゃくちゃウレしかったんですよね。
ジークラックには、「泥棒スッテ」という唐草模様が個性を際立たせるメタルスッテをはじめ、現代にいたるまで「イカメタルにマジメ」なメーカーだったので。
ちなみにジークラックの最新イカメタルアイテムとしては、イカメタル専用のリアルな〝海老ドロッパー〟である海老助なんてイカにも釣れそうなイヤらし~いブツもあって注目を集めています。
ほか「ヨコドリスッテ」シリーズ、「こそ泥スッテ」シリーズ、ロッドでは「泥棒竿」シリーズなど、多彩なイカメタル愛に溢れるラインナップがそろいます。
さて、実釣には、ほかのアングラーさんとともに青木さんご本人も来られるとのこと。
それは取材日が「初対面」となることを意味し、嬉しさ・緊張を抱えて当日を迎えるのでした。
そうして迎えた当日、初めてお会いしてごあいさつ。とても気さくに話しかけてくれたのを覚えています。
ナイトゲームになるので、出船前に各種アイテムの特徴を聞きながら「なるほど」と思うことも多数あり、なんか距離が縮まった気がする。
勝手に予感するんですよね、「コレ、取材うまくいきそう」なんて。
しかし、好事魔多し。なかったのです…アレが。
アレが!!! …ないっ!!
出船からポイントまでの航程が多少あり、青木さんたちもキャビンへ。
こんな時は撮影側としてはチャンスで、船上でルアー各種の「置き写真」を撮影しようとします。
が、……ない。
撮影対象はあっても撮影機材がないのだ。
カメラ、忘れた。
正確にいうと、カメラは当然持ってきたのだけれど、船に積むのを忘れたのだ。
冷や汗が出るっていうでしょ? あれ、実際に出ます。額に、脇に。今でもあのジト~ッとしているのに乾いた冷たさは思い出せます。
九死に一笑
ウキウキで企画。
ありがたいことにご協力していただいた、「しゃちょ~」さん。
乗合船、ほかのお客さんもいるため港には戻れない現実。
グルグル頭が回る。ころころタナが変わるイカメタルのごとく。
タナが重要なんていわれるイカメタルだけれど、もう精神のタナはベタ底。むしろブラジルに届くんじゃないかくらい沈んでいました。
言うしかない。
イカメタルのシェイクよろしく、震える手と震える声で言いました。
「すみませんっっ!カメラ忘れました」
そう青木さんに伝えた。
そのタイミング、ちょうど集魚灯が逆光で青木さんに当たり、青木さんのシルエットは真っ黒(に見えただけかもだけど)。
もう青木さんじゃなくて黒木さん。
あぁもう黒木さん、いやブラッキーさん、ボコボコにしてください…。覚悟を決めたのです。
ところが青木さん。
「マジで~~っっ!!! カメラ忘れるとか俺初めてだよっ!!! マジでオモシロすぎるだろ~」
と言いながら大爆笑。不謹慎ながらメチャクチャいい笑顔でした。
「まぁ、まず絶対やっちゃダメなやつだけど、俺だからラッキーだと思って一緒に釣りしようよ。ないもんはないんだし(笑)」
そう言ってくださったのです。
もちろん、その時は気力がなく、一緒に釣りなどできるはずもなかったのですが、ホンッッットに救われたのです(あとで会社からはしこたま怒られたのは当然)。
というわけで、人の笑顔に救われた、私の九死に「一笑」というお話でした。