今江克隆のルアーニュースクラブR「ABU創業100周年!ABUと私、今江克隆のABU FOR LIFE」の巻 第1042回
憧れのABUスウェーデン本社へ!
私が経験した海外遠征の中でも、最も楽しく、最も快適で、米国とは全く異なる北欧の素晴らしさを満喫し、ABUの歴史を隅から隅まで実感できた価値ある旅だった。
最も感動したことは、「Ambassadeur4600C/RD&DDL/IMAE」が、本社ABU歴史ミュージアムに正規ラインナップとして展示されていたことだった。日本特注ではなく、ABUに自分の名前が正式に刻まれていることに感動を隠せなかった。
今や知らない人も多いかもしれないが、この本社訪問時、開発室の片隅に転がっていたスタッフが遊びで作ったオーロラ色のサンプルリールを自分が見つけ、気に入って自分のシグネチャーにしてほしいと直接頼みこむことに。
ABUのスタッフは、オーロラと思って色づけした訳ではなく、単なるイオンプレーティングの失敗作だったが、私にはそれが北欧のオーロラに思えたのだ(見たことはないが笑)。
ここから今に至る「レボ・オーロラ」が誕生したのである。
その後、ABUは2009年生産の「モラムZX」シリーズを最後に、世界市況から新規の丸型リールの開発生産をストップすることになる。
この時もABUは、私に「ZX1600C」の初回生産の左右1号機にイマカツのスローガンである「不可能を掴め」を刻印して、わざわざプレゼントしてくれた。
私たち昭和世代が憧れた丸型のABUの歴史は、ZXを最後に途絶えることになり、主流は米国市場をターゲットにしたロープロのREVOへと時代の流れに押されかわっていくことになる。トム・ベデル氏も勇退し、幾度かのM&Aをピュアフィッシングは受けることになるが、ABUスウェーデン本社は、今もビンテージモデルとしての丸型の生産を続けている。
そして、うれしいことに、ことあるごとに秘かにスウェーデン製ビンテージに私の名前を刻んで送ってくれている。
その中でもABUの代名詞でもある復刻「5000C」の生産ナンバー「No.5000」の刻印が入った「5000C/RECORD」と、結婚祝いの「5000C/VINTAGE」は、私の宝物である。
ABUの歴史は、米国市場中心となった現在、大きくその方針を変えてしまった。しかし、それでもABUの息吹はそこに息づいている。
ABU史上、REVO単機モデルとして最大販売数を記録した「LTZ」は、ZPIの手によって「LTZ930Pro/ik-combi」として、長年にわたってABUリールならではのレーシングチューンワールドを牽引し続けた名機である。
そして2020年、再びREVOシグネチャーモデルとして、「LTZ」の後継機種である「LX992Z」がデビューした。
コロナ禍の影響でデリバリーの供給不足が続いているが、「LX」もまた今度は元ZPIチーフチューナーである武本氏が立ち上げたREVIVEにて「LX992RS」として2021年3月末から受注が開始される。
そして、2021年JB・TOP50シリーズ再開を目の前にして、チューニングの本家本元「KTF」沢村氏から驚異的なLXチューニングスプールが送り込まれてきた。
確かに高性能精密機器としての機械的完成度において、ABUは今や国産最上機種に比べると「一般的仕様」のリール、決してプロユースな尖がったリールではないかもしれない。
しかし、名チューナーの手によって、それら国産最上位機種にも勝るポテンシャルを発揮する「余地」を含めたのも、またABUらしい釣り人の道具の楽しみ方なのかもしれない。
ABU100周年、今江克隆57周年、自分は何周年までバス釣りを続けることができるか分からないが、年老いて最後にロッド&リールを握る時、それがABUから最後に贈られた「Ambassadeur5600C」であって欲しいと願う。
ABU FOR LIFE、BASS FOR LIF.
今江 克隆