今江克隆のルアーニュースクラブR「唯一無二のド中層攻略スプーン!異次元の扉を開いたワカサギマジックスプーンを公開」の巻 第1023回
さて、先週はビッグスプーン開発に至るまでの歴史と道のりについて書いたが、今回はその核心のコンセプトについて話そう。
その核心とは「メタルジグの操作の分かりやすさと、スプーンならではトリッキーさを併せ持つビッグスプーン」である。
ぶっちゃけた話、「マグナムスプーン」や「セクシースプーン」を真似るだけなら極めて作るのは簡単なルアーである。だが、逆にその極めつけの単純さゆえに唯一無二の独自性を出そうとすればするほど難しくなるのがスプーンだと思う。
その独自性として自分が求めたのが、「グルグルX」のアクションを持つ「ホプキンス(ショーティ)」だった。
そしてその開発のヒントとして、少年時代に唯一スプーンで数多くの魚を釣った経験のある、スプーンとしては極めて細身のオールドルアー「ABU TOBY」に求めた。そこからデザインしたのが初代「ワカサギスプーン」である。
「ワカサギ“マジック”スプーン」の誕生まで…
「ホプキンス」に代表されるメタルジグは、水深8m以上でも瞬時にボトムを取れ、同時にボトム感知力に優れる。操作も極めて明快単純だ。
一方、スプーンは左右へのトリッキーなヒラヒラとしたフラッタリングアクションとスイミングが特徴で、その反面、フォールは遅く、水深8mともなると底取りはかったるく、ボトム感知能力はお世辞にも明確とは言いがたい。
しかし、間違いなく「グルグルX」で見たバスのスプーンへのバイトトリガー効果は、ハイピッチなハーフロールをしながら左右にジグザグと切り返す「逃走のパニックアクション」にあると感じていた。
だが、この両立は現実矛盾だらけで、長らく頓挫してしまうことになる。
初代「ワカサギスプーン」は、ハイピッチでのジグザグフラッタリングは素晴らしく、アクションは申し分ないと思ったのだが、水深6mを超えると底取り感がイッキに悪くなった。
それでも微妙に形状や素材を変え、様々なレイクでテストを何年も繰り返したが、ニゴイやハスはイレグイになったが、ナゼかバスには格別の効果があるとは言えない結果だった。
偶然が奇跡を生み出す…神アクションのスプーン
しかし、ルアーの開発とは不思議なもので、狙って結果が出ることより、偶然が生み出す奇跡が、時として神懸かり的な結果を残すことがある。それが「ワカサギ“マジック”スプーン」の誕生だった。
「“マジック”スプーン」は、今までのワカサギサイズ(90mm)にコダワっていた「ワカサギスプーン」を、大型ワカサギ相当の125mmにサイズアップ。厚みとRに変化を持たせ30〜40g数種類のプロトを試作してみた。
そして本当に思い付きだったのだが、なんとなく「ホプキンス」のハンマードフィニッシュが気になり、スプーンの「表」と「裏」に非対称の大きさのハンマードフィニッシュを施すことにした。よもや、このプロトの一つが偶然、「神アクション」の引き金になるとは全く予想だにしていなかった。
その秘密は、製品化できた折に明かそうと思うが、表裏非対称のハンマードホールと、まるでパン切りナイフのようになったエッジ、そしてそれを活かす「細身のR」とウェイトの黄金バランスにある。これが偶然に、「マジック」と言う言葉が思わず口に出た「神アクション」を引き出すことになった。
この「神アクション」とは、簡単に言えばスプーンの姿勢をラインテンションを軽く張ると、メタルジグ並みの素早いファーストフォールが可能になり、テンションを抜くと瞬時に姿勢がパラレル姿勢に変化、「グルグルX」を髣髴させる切れ味鋭いハイピッチなハーフロールでジグザグフォールする点にある。
この2つを組合せることで、任意の水深で狙ってフォールスピードを極端にシフトチェンジできる。この黄金バランスがプロトの中に存在したことに初めて気づいた時、「コイツは絶対に釣れる」と強く確信するものがあった。
ターンオーバー真っ盛りの青野ダムでテスト敢行!