ユニチカから2020年に登場した4つのラインがある。
「シルバースレッド バス トップウォーターPE」「シルバースレッド バス クランクベイト」「シルバースレッド バス ジャーキング」「シルバースレッド バス スピナーベイト」。
4つの異なる性質を持つ「Hiro’s Choice」と呼ばれるラインシリーズ。プロデュースはバスフィッシングのレジェンド“ヒロ内藤”氏。
シルバースレッド Hiro’s Choice
「汎用(バーサタイル)」に対して「専用」。
ナイロンライン、フロロカーボンライン、PEライン…と素材別にカテゴライズされてきたラインを、さらに“使用するルアーによって細分化”した「シルバースレッド Hiro’s Choice」。
長いバスフィッシングの歴史でもあまり類を見なかったコンセプトのラインシリーズを開発するにあたって、どんな想いや意図があったのか。ヒロ内藤さんご本人に直接お伺いできる機会があったので、イロイロ聞いてみました。
“プラグをキャストしてバス釣りを楽しむ”という近代的バスフィッシングは、1902年ジェームズ・ヘドンがプラグを作ったことで始まる。
そして、今回のシリーズ開発の意図を紐解くには、後に起こった釣り具の三大革命に話は遡るとヒロ内藤さん。
バスフィッシングに劇的な変化をもたらしたという“釣り具の三大革命”とは
・ベイトリールにクラッチが付いたこと
・ロッドにカーボン素材が使われたこと
・釣り糸にナイロン素材が使われたこと
バスフィッシングの創世記、特にトーナメントシーンでは道具の性能の差が勝敗をわけたという。例えば、同じクランクベイトを使っていたにも関わらず、長いロッドを使っていた選手はより深いレンジを探れて多くのバスを手にできたという事実。
おしなべて、クランクベイト用にギア比の低いリール、サーチベイト用にハイギアのリールというようにリールの細分化も進んできた。つまり、技術の進歩とともにリールもロッドも“細分化”されていった。
釣り糸にナイロン素材が使われるようになって久しい。その中で、ヒロ内藤さんはある疑問を抱くようになる。
ルアー用と謳われているラインは数多くあるがどのルアーに使うラインなのかということ。たとえば、スピナーベイトとトップウォーターに求めるラインの特性は違う。ところが世の中にあるラインを見ると”ルアー用”として一括りにされてしまっているという事実。曰く、ロッドやリールのようにラインも細分化できれば究極の釣りが組み立てられるのではないかと。
しかし、ラインの進歩には時間がかかった。それは細分化するまでにまず“耐摩耗性を上げる”という壁があったからだという。
こんな話がある。
かつて、「シルバースレッド」をバスフィッシング用としてアメリカで売り出すことなった際、バスフィッシング用のラインには何が必要かと聞かれたそうな。ヒロ内藤さんの回答は「バスはストラクチャーに付く魚であるため、とにかく耐摩耗性が必要だ」と。その上で既存ラインの10%、20%の耐摩耗性UPが限界と言われていた時代に、3倍の耐摩耗性の向上を要求。
実際に耐摩耗性は重要。他方で”本場アメリカでラインを売る”となったときに10%耐摩耗性がアップしたところで、違いがあまりわからない。つまり、3倍の耐摩耗性の向上というのは一種の営業戦略でもあったと言う。その回答をキッカケに開発陣は耐摩耗性の重要性に着目、2~3年後に開発されたラインは既存ラインの10倍もの耐摩耗性を持つ「シルバースレッド S.A.R.」のサンプルラインだった。
そのサンプルラインは繰り返しテストされ製品化。ヒロ内藤さんは満を持してこれをアメリカに輸入した。10倍という意味の「10X」という名前で売り出すと、アメリカのラインメーカーは「これを超えることはできない」と、広告から耐摩耗性についての表記がいっせいに無くなったのだという。
近年、技術はさらに進歩。「シルバースレッド S.A.R.」を超える耐摩耗性のラインの開発が可能になった。
長年使ってきたヒロ内藤さんの経験から「シルバースレッド S.A.R.」は十分強い。しかし、その「シルバースレッド S.A.R.」をも凌ぐ耐摩耗性を持つ「RX-1」「RX-2」という、これまでにない強さの素材が開発された。
バスフィッシングのラインに必用とされてきたことは耐摩耗性を上げること。その耐摩耗性は十分すぎるほど発揮できるまで技術は進歩した、その先にあったのが「細分化」だったという。