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【壱岐島のヒラマサ×大川漁志】高難度のショアヒラマサ、獲るために必要な要素とは

寄稿:大川 漁志
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ジギング特集2020

玄界灘に浮かぶ壱岐島、その現実

長崎県、壱岐島に居を構える大川にとって青物は身近なターゲットといえる。それも特大サイズが。

「本州の人からすれば、壱岐は青物天国でいつでもどこでも釣れるように思っているかもしれませんが、そんなに甘くはありません」

「壱岐」と聞けば釣れると思いがちだが、そう甘くはないという

壱岐のシーズン

まず、季節が秋から春に限定される。

「だいたいお盆過ぎくらいから、ぽろっと釣れるような感じになりますが、本格化するのは10月以降。10月、11月、12月がハイシーズンで、近年は水温が高く1月も釣れます」

2月は低水温で一度落ち込み3月、4月は春ヒラマサのハイシーズンとなる。4月末の連休前までは釣れ続く。

「超大型の重量級狙いなら春ヒラマサですね。産卵前のメス狙い。20kg、30kgの可能性があるのはこのタイミングです」

そんな大川の自己記録はヒラマサ16kg、ブリ12kg。10kgクラスはかなりの数を仕留めている。他に120cmのサワラや10kgを超えるシイラの実績もある。

ヒラマサ、何を優先すべきか

だが、大川にとって最大のターゲットはやはりヒラマサ。

シーズンや付き場が決まっていて、狙って掛けるアプローチができゲーム性が高い。かつ、引きが強く、何よりも魚体が大きい。

青物を狙う場合、季節のほかに何を優先したらいいのだろう。潮周りだろうか?

「潮周りは確かに大事です。それよりもベイトの有無を気にする事が多いですね。もっとも潮周りが大きければ、必然的にベイトも回遊しやすいです。ベイトのほかにもうひとつ、天候も重視します」

ベタ凪ではなかなか反応が出ない。磯に立てないほどの荒れ狂う時化は論外だが、適度に波っ気があった方がいい。

「低気圧が寄っている場合はチャンスですね。ヒラスズキならサラシがあった方がいいですが、青物の場合、荒れていると掛けたとしても取り込むのが難しい。そういう時は風裏のポイントに入りますね」

ヒラスズキであれば、サラシはあった方がよい

ベイトフィッシュは、20cm級のアジ、カタクチイワシ、25cmのサバ、40~50cmのシイラ、20cm程度の小さなスマガツオ、サンマ、ダツ、スルメイカと多彩。

ダツやシイラ、サンマはヒラマサを連想させるベイトに違いない。

「同じアジでも、5~10cmの小さなマメアジは青物が付いていても小さいですね。一方、群れの密度の関係か、カタクチイワシが寄ると爆発力があって数がでます。まぁ、大型の青物はなかなか出づらいですが」

捕食するベイトは多彩。カタクチイワシは大型こそ狙いにくいものの爆発力があるベイトフィッシュの代表格

壱岐周辺は、ほかの地域に比べるとヒラマサの魚影が濃い。

「ヒラマサとブリはその年周りで群れの密度は違うことがあります。よってポイントやタイミングによって比率はまちまちです。根が多い磯ならヒラマサの割合が多くなる傾向があり、ブリは回遊性が強いので防波堤や磯などでも釣れますが、ベイトと共にすぐに居なくなることも多いです」

ジェットブルとショアゴリラ

10kgオーバーのモンスターが狙えるなら迷わず本格的なジギングロッド・ジェットブルを使う。

ヒラマサ・ブリ狙いならXH。XXHはGT、イソマグロ、キハダ、ヒラマサの10~30kgクラスを攻略する場合に選択する。

「実はショアゴリラという、もうひとつの機種をテストしている真っ最中でして、これは本格的なショアビッグゲームモデルです。そういう意味ではジェットブルとどちらを使うか悩みますね。贅沢な悩みです(笑)」

ジェットブルは硬めの印象でパンッと張りがあり、ショアジギングロッドとしては軽さが際立つものの10kgのドラグテンションにも耐えうる強度がある。

「軽さとシャープさからくる操作性が武器ですね。技術や体力がある人には最高のロッドです」

一方のショアゴリラ。

「曲がる特性がある。魚を掛けて、曲がる、ためる、ができるロッドです。ためていると魚が浮いてくる。人にやさしく、魚に厳しいロッドですね。旧モデルに比べ、軽量さがあり、それでいてパワーも上がっている。個人的な好みでいえば、ショアゴリラのような曲がるテイストが好きです」

日常的にショアジギングをできる環境にあり、10kgクラスを何本も仕留めている大川だが、ジェットブルもショアゴリラもいまのところ破損は一度もないという。

「長さに関しては、諸説あるとは思いますが、僕がやってみた感じでは10フィートが使いやすい。プラグの場合ですね。ただし、ハードなジャークを繰り返すジグのジャークの場合には9.3フィートの短いロッドがいいです」

「ミドルショア」という位置づけのコヨーテ

10kgは望めず、3~5kgの群れが入っている。あるいはそれ以下の青物やイサキ、マダイ、根魚などを狙う場合にはコヨーテを使う。

タックルセッティングはメインラインがPE1.5号にリーダーはフロロカーボンの7号を1m。

「コヨーテ100のⅯ、MH、Hの3本があると、かなりの状況をカバーできます。青物ではこれ以上の長さは特殊な状況の時以外に僕は出番はないです。最近のルアーは飛距離が出るので、多少、ロッドが短くても飛ぶんですよ」

11フィートになると荒れた海域で狙うヒラスズキ用というのが大川の位置づけ。

「正直、コヨーテはライトショアジギロッドというかミドルショアゲームロッドという位置づけ。ヒラマサも5kgまでは余裕で獲れます。ブリなら大型でも十分獲れるパワーがあります」

ただし、相手がヒラマサとなるとそうはいかない。

「ヒラマサが走った時に、躊躇なくロッドをフルベンドできる人なら、取り込めるでしょうね。折れるかもしれないとビビってしまうと取れない。止められない」

ヒラマサは怒らせない・走らせないで取り込むようにする。だが、すべての獲物をコントロールするのは難しい。走られてしまうこともままある。

「走られたときにメインラインがズリズリとこすれる感触が伝わったら、すぐにドラグをゆるめてズルズル作戦に変更です」

メインラインが細いので障害物接触時に強く張ってしまえばすぐに切れてしまう。こすれるにしても、緩いテンションで触れているだけにすれば何とか切れない。そうやってごまかしながらゆっくり取り込むのも技のひとつ。

「ただし、これをやるとメインラインが何十メートルもボロボロになって、その日の釣りができなくなる。だから、できればやりたくない」

青物のポイントといえば岬。地図上でとがった場所は、険しく潮流も複雑で速い。

「先端は確かに釣れます。ただ、人気ポイントですよね。そういう流れでも青物は平気ですが、ベイトとなる小魚は速い流れが得意ではない。ベイトは岬回りのワンド、つまり岬の付け根にたまっています。こういうポイントは一見、流れが緩く青物に向かないと思うかもしれませんが、ベイトがいてプレッシャーが少ないので実は一級ポイントです」

岬回りのワンドはベイトフィッシュの居心地がよく、実は青物の一級ポイントとなることも多い

最大のチャンスはやはり朝マヅメ。デカいのを捕りたいならキャストするのはダイビングペンシル20~25cm。

「気配がある場合ですよね。青物の気配がなければ、粘るのではなく移動します」

ベイトはいるが青物がまだ入っていなければ青物が回ってくるのを待つ。だいたい潮止まりの前後で青物の動きがある。

「朝マヅメに潮止まりが重なってしまっている場合には、そのまま時合いを待ちます。潮止まりの前後1時間がチャンスです」

気配はあるがトップの反応がなければ、レンジを下げる。まずはシンキングペンシル。それでもダメならジグの出番。

ダイビングペンシルのアクションといわれて想像するのは、水面下に長く潜らせ泳がせる引き方。ヒラマサには長く引くアクションが効く。

「そのアクションはショアの青物では必ずしも有効ではありません。海面が静かな場合には、そういったアクションは速すぎます」

そんな大川のアクションはショートでスロー。弱っている魚を演出し、ジャポン、ジャポン、ジャポンとストップを入れながらショートに誘う。スローすぎると見切られるのではないかと心配する人もいるかもしれないが、問題なく大型のヒラマサが食ってくる。

「海面が荒れているようなときはアクションはアングラーの好きなアクションでいいです。活性が高いですから反応を見てアクションを変えてみてください」

チェイスがあり、コンコンという小さなバイトがあってもアワせない。

ドスンと重みがロッドに乗ってからしっかりアワせる。仮に10kgクラスだったとしても、アングラーがいる方へ向かってくるケースもあり、特にヒラマサは油断大敵。

「10kgまでなら強気でゴリ巻きでいけます。それ以上の大きさになると無駄に激しいポンピングをせず、なるべく怒らせないように、気づいたら足元まで寄っているようにプレッシャーをかけながら連れてくる方がいいです」

あるいは、釣り場に立ってヒラマサが走りやすい場所をあらかじめ判断しておき、ヒラマサが走りそうになったら先回りして防ぐようにする。もっともこれはなかなか難易度が高い。

「いきなり走られて切られる、というのは、アングラー側が油断している証拠です。もし、走られそうになったら、ドラグを緩めたり、ベールを返すことで本気の走りを防ぐことができる」

ショアジギタックルで大川の使用するメインラインはPE5~6号。

「10kgのヒラマサが掛かってジリッと少しラインが出るくらいなので、だいたいドラグ8kgくらいに設定してあります」

デカいヒラマサが掛かって取り込めないのは、アングラーが、興奮してあわてすぎているケースが多い。掛かってからランディングまでのイメージを大事にしたい。

「すぐに寄せようと不必要なポンピングをするから、ヒラマサを怒らせて、走られて切られる。無理やり力づくでロッドをあおるのはやめた方がいい」

ロッドパワーで常にプレッシャーを与えつつ、魚の動きを読みながら巻けるときに巻けるだけ早く巻く。緩急をつけた落ち着いたファイトが大事。

自己記録級の青物こそ、冷静に対処できるかどうかが勝敗を分けることになる。

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大川 漁志(Ryoji Okawa) プロフィール

九州の北、玄界灘に浮かぶ壱岐島、在住。ショアジギングを中心にライトショアジギングやヒラスズキのキャスティングゲームが得意。メインターゲットはヒラマサ。ほかにブリやヒラスズキも狙う。10kgクラスの実績多数。ラグゼプロスタッフ。みなとやゲストハウス経営。

GAMAKATSU(がまかつ)

1955年創業。大阪府大阪市に本社を置き、シンガポールに本店を置く。釣り竿、釣り針、ウェアなどをメインに製品を開発・製造・販売を行っており、ルアー部門では「ラグゼ シリーズ」が有名である。
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