今江克隆のルアーニュースクラブR 第996回「高弾性ロッドの復権とバスロッド革命の兆し!」の巻
高弾性をめぐる2つの変化
しかし、超高弾性「テムジン」誕生から20年以上が過ぎ、2つの変化が起きているのもまた事実だ。一つは一般アングラーのレベルが格段に上がったこと。多くはまだ一般的なレベルだが、20年前と比べると一般アングラーの中に環境さえ揃えばプロレベルで十分通用すると思われるアングラーも多くなった。
それら玄人アングラーは高弾性の価値を十分に理解できるレベルまでに育っている。現に、今も「テムジン」を愛用する玄人アングラーは実に多い。「テムジン」ほど高弾性の特性が分かりやすいロッドは、今も他に存在しないからだろう。
2つめの変化は、航空機技術に最も多用されている高弾性カーボン素材のここ数年の劇的な進化である。
従来の高弾性の決定的弱点である「超軽量で薄く強いが脆い」と言う特性を劇的に改善した革命的高弾性カーボン「シート」が誕生した。それが「トレカT1100Gナノアロイ33トン」である。バスロッドとしてはインスピラーレ「グランドコブラ」の全身に世界初採用されたのは記憶に新しいと思う。
当時は従来の30トンの3倍ものコストが掛かるカーボンだったが、この粘る33トン「T1100G」の登場で高弾性カーボンの世界が激変したことは間違いない。エバーグリーンのWEB動画での「T1100G」と従来30トンとの破断比較テスト動画公開は衝撃的なものだった。今では各メーカーの最高峰ロッドのメインシャフトに当たり前に採用されるようになった事実を見ても、その真価は揺ぎないものになっている。
ただ、「T1100G」の素材自体は誰もが知るところとなったが、実際は「T1100G」もさることながら、そのカーボン繊維の接着剤とも言える「ナノアロイテクノロジー」と呼ばれるレジンコントロール技術が、ロッド製作のうえの経験値の見せドコロであることは、意外と知られていない。
同じ「T1100G」カーボンでも、マトリックス樹脂のレジンのコントロールで耐久性能に大きな差が出てくる。テムジン、カレイドは30年使用してもなお、今も現役で使える対劣化性能、そして最もクオリティ差が出る経時変化での「反り」の少なさがそれを証明している。
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